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独自技術とソリューション強化で先行するLEDプリンタ事業が好調

グループの中核的存在として事業構造改革を牽引するOKIデータに聞く

2008年03月21日 16時08分更新

文● 富永恭子(ロビンソン)

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杉本晴重氏

沖データ 代表取締役兼CEOの杉本晴重氏

杉本晴重氏
(株)沖データ 代表取締役兼CEO
1970年沖電気工業入社。2000年に執行役員就任後、研究開発本部長、中国ビジネス推進本部長、常務取締役CTOを歴任し、OKIグループ内でさまざまな海外ビジネスに携わる。今年1月に現職に就任。


 LEDプリンタを大きく進化させる要素技術である「エピフィルムボンディング」により、カラーページプリンタを大きく進化させているOKIデータ。そのOKIデータを率いる杉本晴重氏に、同社の事業や今後の展開を聞いた。




■ソリューション・ビジネスの拡大で売上2000億円を達成


―― まずOKIデータの現在の状況についてお聞かせください。

杉本氏 「2003年に中期経営計画『Stride21成長』を策定して以降、当社は5年連続で増収を継続し、すでにこの計画の第一目標である売上2000億円の達成にも目処がつきました。当社はLED方式のページプリンタが主力製品で、近年広まりつつあるカラーページプリンタ市場でのワールドワイド・シェアは現在第3位グループです。実は1年ほど前まで、HPさんに次いで2位でした。この背景には、当社の戦略として、価格競争が激しいローエンド中心のアメリカLFRチャネルを絞り、いわゆるSMBの分野にシフトしたため、販売台数が幾分減少したことがあります。もちろんローエンドの領域でもラインナップを揃えている必要がありますが、当社はSMBを中心にしつつ、それよりも上の領域を狙っていく。得意なこの領域で、当社ならではの品揃えとソリューションで再度シェア拡大を図りたいと考えています」

―― OKIデータはなぜSMBの領域にこだわるのでしょうか。

杉本氏 「このマーケットは価格競争に巻き込まれる危険が少ないだけでなく、プリントボリュームが大きいことが挙げられます。いわゆる“プロフィタブル・グロース”という考え方。つまり、ただ規模だけ追うのではなく、お客様にとって付加価値の高いビジネスを展開し、お客様とともにプロフィットを伴った成長を目指していきたいという考えがその根底にはあります」

―― 国内の状況はいかがですか。

杉本氏 「国内での販売は、OKIデータブランド商品とOEMの両方合わせて、2008年度中にトップ集団入りを果たす見込みです」

―― 好調の国内販売ですが、その背景にはどういった要因があるのでしょうか。

杉本氏 「カラーページプリンタ市場において、これまで当社が強みを発揮してきたのはバーチカル市場、いわゆるDTPやポップなどの分野でした。これに対してかねてより、続く第3、第4のソリューション・ビジネスの展開を模索してきましたが、今かなりの手ごたえを感じているのが、オフィス市場分野です。この分野での大手ディストリビューター様とのコラボレーションが、この2年ほどで急速に加速したことも増収更新の原動力となりました」
 「現在、国内でのソリューションによる販売額は売り上げ全体の14%弱ですが、これを3年以内に20%まで押し上げたいと考えています。新たにセキュリティーや素材系のソリューションにも注力していく予定で、各ソリューションのビジネスモデル構築から販売展開までの責任を持ったソリューションマネージャー制を導入するなど、さらなるシェア拡大のための体制強化を進めているところです」



■可能性を広げる「エピフィルムボンディング技術」


―― 新技術である「エピフィルムボンディング技術」も話題となっていますね。

杉本氏 「エピフィルムボンディングは、当社が長年LEDプリンタの開発に取り組んできた大きな成果であり、プリンタ用LEDヘッドの高密度化と低価格化を実現する新技術として現在、各方面からの注目を集めています。いまやLEDプリンタは市場で大きく普及しつつあり、参入するメーカーも増えてきました。しかし、当社の技術は他社より5年は進んでいると自負しており、これをさらに進化させ、最適なアプリケーションの開発にも注力していく予定です」
 「また、エピフィルムボンディング技術は、それ自体がすでにナノテク技術です。もともと半導体技術として生まれましたが、その基本機能である『異種材料を分子間力結合により接合する技術』自体は金属やガラスといった素材にも適応します。その意味でプリンタだけでなく、さらに広範な領域での応用が考えられ技術でもあるのです」
 「この技術に対する評価は高く、またこの技術でなければ実現しないことも多くあります。それが次第に明確になるにつれて、当社のポジションも上がってきているといっていいでしょう」
 「問題は、この技術をベースにした応用化をどの分野から着手すべきかです。来年度には、具体的な動きが出てくるはずですが、今は知財関係も含めて市場戦略、競争力などを考慮しつつ、技術の可能性を検証してその方向性を模索しているところです。そのためにも各分野でのパートナー企業との協業はもちろん、組織レベルでのリソース供給も含めたOKIグループ内での協働も重要な課題となっています」



■執念をもって継続してきた事業が結実


―― プリンタ事業は今後どのように発展させたいとお考えでしょうか。

杉本氏 「OKIグループが事業戦略として掲げている『NGNをベースにしたユビキタスサービスの提供』において、コアとなるハードウェア技術のひとつにATMがあります。ATMには今後、電子決済などネット上で行なわれる動きにあわせて、バーチャルとリアルを統合する製品技術が求められます。そのとき、もうひとつの鍵となるハードウェアがプリンタです」
 「これまで『箱』として売られていたプリンタは、いまや完全にネットワークに組み込まれる時代になりました。NGNの核になるものとして、プリンタの存在は今以上に重要になっていくでしょう。さらに半導体の機能モジュールと組み合わせることによって、ハードウェアを中心とした当社の強みを生かした領域でのソリューションやサービスを新たに展開できるのではないかと考えています」

―― OKIグループ内でのOKIデータの存在感が増しているように思えます。

杉本氏 「3年前は『情報、通信、半導体』の3つが注力事業の柱でしたが、いまは『情報通信、半導体、プリンタ』へと変化し、その中でプリンタ事業が最も大きく成長しています。グローバルビジネスにグループ内で最も早くから参戦していることも当社の成長の大きな要因となっていますが、OKIグループとしての長い歴史と技術の蓄積が結実したものともいえるでしょう」
 「それはある意味で執念をもって継続してきた事業であり、1994年の分社独立を経て、当社とその事業はグループの中核的存在として、事業構造改革を牽引する大きな要となりました。それだけに私は、当社の事業の発展への責任の重さも感じています。当社にとって、かなり追い風が吹いている今こそ、そのポジションを強固にし、確実に次の事業につなげていきたいと考えています」

―― 本日はありがとうございました。

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