振動対策に加え、徹底した試聴による音質改良を施す
内部に関しては、振動対策も従来から強化された部分だ。HD60GD9では、音質に悪影響を及ぼすHDDの振動を吸収するために、ゲルを用いたインシュレーターを使用している。
「これ以外にも聴感テストを繰り返しながら最適な回路設計を追及し、音質向上を図った」(福山氏)という。
音質面での評価が高かった従来機種だが、難点として「残留ノイズ」(無音部分で聞こえるサーっという音)の大きさが指摘されることが多かった。この点に関しても改良が加えられたが、「複数の部品を組み合わせる以上、常に付きまとう問題であり、完全に解消することは難しい」とのことだ。音質面に関しては後で詳しく述べるが、残念ながら本機でも、高能率なヘッドホンとの組み合わせで「かすかなノイズ」が感じられた。
本体のデザインは変えないほうがいい
もう1点、担当者に確認したかったことに本体のデザインがある。Media Kegシリーズは初代のHD20GA7以来、(モデルによってカラーは異なるが)一貫して共通の金型が使用されている。ファッション性も求められるこの種の製品として、それはデメリットになるのではないかと思ったからだ。
これに対して福山氏は「(時代やニーズに合わせて)デザインを変えるに越したことはないが、優先順位としては音質やソフトウェアの使い勝手を向上させることが先にある」と答えた。デザインを変えないのは単なるコストダウンととらえられがちだが、細かな調整をしらみつぶしで行なっていく必要がある「音作り」の作業の中で、筐体を変えないことのメリットはきわめて大きいのだという。
同席した同事業部の宮森正昭氏は「過去の製品では、プラスチック製の本体を金属に変えたとたんに音が悪くなった例もあった」と説明する。これは筐体の材質や形状を変えると、回路から発生する電波の反射などに影響が出るためだ。宮森氏はさらに「筐体を固定して中の回路をブラッシュアップしていったほうが、製品の完成度を上げやすい」と話したが、HD20GA7の発売から2年強の蓄積がHD60GD9に反映されている例として非常に印象深いコメントに感じた。