正当な進化を果たしたClassic
iPod touchが真打ちで、iPod nanoが目玉製品、iPod shuffleもなかなかいいとなると、「ハズレはiPod Classic?」と思う人もいるかもしれないが、それはとんでもない誤解だ。
iPod Classicこそ本物のiPodだろう。
iPodに音楽を転送するiTunesは、iPodに先駆けて2001年の1月に登場した。それからMacユーザーはみんなコツコツとCDをリッピングして、同じ年の秋ごろまでに1000曲くらいをHDDに取り込んでいた人もいた。
そんな2001年の秋に、タイミングを見計らって登場したのが初代iPodだ。1000曲すべて、自分が持っている音楽のすべてをポケットの中に入れて持ち歩くという画期的なコンセプトの元に誕生した。
初代iPodで、全音楽ライブラリーを持ち歩く素晴らしさを認識した人は、その後、さらに多くの音楽をHDDに取り込んでいく。
すると、それに追いつくようにiPodの最上位モデルも倍々のペースでHDD容量を増やしてきた。同時に、下位モデルでは同じ容量でより薄く、よりバッテリー駆動時間を延ばす方向で進化してきたのだ。
iPodの最上位モデルは、こうしたヘビー級の音楽愛好家達と共に成長してきたのだ。
久々にHDD容量が倍増
ところが、最近のアップルはといえば、カラー路線や写真機能、ビデオ機能、Podcastとちょっと横道にそれた開発に力を入れ、容量アップに努めてこなかった(というより、実際はより容量の大きなHDDそのものがなかったのだが)。
そんな中、iPod Classicは、久しぶりにHDD容量の倍増と薄型化、そしてバッテリー動作の長時間化という“正当な進化”を果たしてくれた。
まさらに“Classic”という名にふさわしい製品なのだ。
実際、筆者も今の音楽ライブラリーは、もはやMacBookの内蔵HDDにも収まりきらず、外付けHDDを半分近く埋め尽くしつつある。160GBのiPod Classicは、そんな筆者にとっても待望の製品だったのだ。
このように今回、発表されたiPodは、どれも個性が際立っている。
その日の気分で身に付けるiPod shuffle、そしてすべての音楽ライブラリーを持ち歩くことを重視したiPod Classicがいるおかげで、その中間の手ぶら、気軽る、カジュアル(あるいはスポーティーに)音楽を楽しみたい人のためのiPod nanoの存在も際立ってくる。
そういう意味では、今回のiPod touchも、非常に素晴らしい個性を持った製品だ。
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林信行
フリーランスITジャーナリスト。ITビジネス動向から工業デザイン、インタラクションデザインなど多彩な分野の記事を執筆。『MACPOWER』『MacPeople』のアドバイザーを経て、現在、日本および海外の媒体にて記事を執筆中。マイクロソフト(株)の公式サイトで執筆中の連載“Apple's Eye”で有名。自身のブログ“nobilog2”も更新中。オーウェン・リンツメイヤーとの共著で(株)アスペクト刊の『アップルコンフィデンシャル(上)(下)』も発売中。