音楽配信サービス“mora win”の記者発表が28日に行われた(関連記事)。
米アップル社のスティーブ・ジョブス氏が“DRM廃止論”を唱えて以来(関連記事)、「DRMは不要である」という考えが一部で起きている。先日も米国の“Amazon.com”が、「DRMなしの楽曲配信サービスを年内に開始する」と発表したばかりだ。「mora winは、DRMに対してどのようなスタンスを取るのか?」筆者の質問に、レーベルゲート(株)代表取締役社長の今野敏博氏は次のように答えた。
DRMは必要だが、改善の余地もある
「DRMはわずらわしいものと考えられがちだが、実際に音楽配信がDRMなしの方向に進んでいくと、音楽を作る人がいなくなってしまう。著作権を保護していくことは、音楽を作る人へのリスペクトであり、必要なことだ」
「DRMは著作権を保護するために必要だ」という姿勢を改めて示した形になる。ただし、DRMには改善すべき点もあると近野氏は話す。
「テクノロジーというものは、“見えている”時点ではまだ最上のものとは言えない。一般の人がDRMの存在を感じているということは、技術としてまだまだ改善の余地があるということだ。音楽配信におけるDRMも意識せず使えるよう進化させて行く必要があるだろう」
ユーザーにとっては、難しいことを考えずにダウンロードで音楽を買えるようになるのが一番良いことだろう。今野氏自身、moraからたくさんの曲をダウンロード購入しており、デジタル配信ならではの楽しみや便利さを味わっているという。
「弊社で一番買ってるのはたぶん私ですよ。気に入った音楽を、その場でパッと買えるのは本当に便利です。本当だったら、iTunes Storeにも出店したいくらいです。閉鎖感なんてないほうがいいですからね。」
確かに、どこでも好きな曲が買えるという状況は望ましいが、現状ではまだ難しい。レーベルゲートは(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントが中核になった会社なので、ソニー系列の楽曲はmoraだけにしか提供されていないし、アップルもiTunes Storeで販売する曲は、DRMなしの一部楽曲を除き、基本的にiPodでしか再生できない仕様にしている。各社それぞれの戦略があり、複雑化しているのが音楽配信ビジネスの現状なのだ。
今野氏のことばは“いち音楽ファン”としての気持ちの表れだったのかもしれないが、音楽配信を今よりユーザーにとって便利にしてくれるよう期待したい。