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渡辺由美子の突撃!隣のクラスタ界隈 第3回

【前編】新潟国際アニメーション映画祭プログラムディレクター数土直志氏インタビュー

「映画祭」だと日本アニメの存在感が途端に薄くなる理由

2024年03月13日 18時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●ASCII/村山剛史

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3月15日から開催される新潟国際アニメーション映画祭のプログラムディレクター数土直志氏に映画祭のイロハ、そして新潟ならではの特長をうかがった

後編はこちら → 新潟で「日本基準」のアニメ映画祭が始まった!

私たちは「映画祭」がわからない

 「アニメーションの映画祭」と言われても、万人になじみがあるとは言いがたい。映画祭に通う人は玄人で、ファンから少し遠いところにいる、そんな印象もある。そして何より、鬼滅の刃やワンピースの劇場版は人気なのに、映画祭で大きく取り上げられるという話は聞いたことがない。なぜだろう?

 そこで、2024年3月15日から20日にかけて開催される「第2回 新潟国際アニメーション映画祭」でプログラムディレクターを務める数土直志氏に、「そもそも『映画祭』とは何か?」をじっくり教えてもらった。

―― まず、新潟国際アニメーション映画祭に関わるようになった経緯についてお聞かせ下さい。

数土 もともと「アニメーションの映画祭」に興味をもっていて、日本から情報発信する必要性を感じていました。

 そんな折、ユーロスペースの堀越謙三氏と、ジェンコの真木太郎氏から「新潟で国際アニメーション映画祭をやりたいのだけれど」と相談されたのがきっかけです。結果的に堀越さんが実行委員長、真木さんはジェネラル・プロデューサー、僕がプログラムディレクターを務める形で始まりました。昨年の2023年が初開催で、今年が2回目になります。

新潟国際アニメーション映画祭を創った2人

■堀越謙三氏……アート系映画を上映するミニシアターの草分け的な劇場「ユーロスペース」を創設。映画の製作・配給も。1997年には「映画美学校」を設立。東京藝術大学名誉教授。新潟県の開志専門職大学 アニメ・マンガ学部 学部長/教授。新潟国際アニメーション映画祭では実行委員会委員長を務める。

■真木太郎氏……アニメプロデューサー。アニメ企画会社である株式会社ジェンコ代表取締役。クラウドファンディングをきっかけに映画『この世界の片隅に』(2016年)を成功に導いたことでも知られる。新潟国際アニメーション映画祭ではジェネラルプロデューサーを務める。

―― 映画祭のイメージは「監督やスタッフが賞を獲る場所」という程度の認識です。実は私も知らないことが多いんです。数土さんはどうして興味を持ったのですか?

数土 きっかけは、フランスで開催されている「アヌシー国際アニメーション映画祭」ですね。昔、とある日本のアニメ作品がアヌシーのコンペティション(入賞候補作品)に入り、監督が招待されたので取材に行ったんです。

 すると、映画祭では僕らが思うような「海外での日本アニメ人気」とはまったく別の世界が繰り広げられていたんです。

―― まったく別の世界?

数土 普通、僕たちが「海外で日本アニメが人気」というと、パリの「Japan EXPO」やロサンゼルスの「Anime Expo」のにぎわいを思い浮かべますよね。監督がステージに上がるとファンから熱狂的な声援が起こるとか、コスプレイヤーさんがたくさん集まるとか。

 でも、アヌシーの映画祭には、そういうファンの賑わいとはまったく別の世界があったんです。上映される作品の多くがヨーロッパのアニメーションが中心で、日本のアニメは少ない。

―― えっ、アニメーションの祭典なのに、日本のアニメが少ない?

基準は「アート」

数土 映画祭には世界中のアニメーション作家が応募してくる。けれども、上映される作品も、賞で選ばれる作品もヨーロッパが中心。評価される基準もまったく日本やアメリカとは異なっていました。

―― 日本と違う評価基準、それは言葉にするとどんなものでしょうか?

数土 スタンダードなコースとしては、美術大学のアニメーション専攻を卒業した作家が、1人ないし数人でコツコツとアニメーションを作って映画祭で発表する。そして「アート」という軸で評価・評論されていくことになります。

 僕もアヌシーに初めて行ったときは、日本とはまったく別の世界を見て、『一体これは何が起こっているのか? 日本のアニメと関係があるのかないのか?』と。そこから「映画祭」に興味を持ったのですが、それから数年経った頃から、日本のアニメ作品も徐々に海外の映画祭で受賞するようになりました。

2023年には田口智久監督の『夏へのトンネル、さよならの出口』がアヌシーのポール・グリモー賞を受賞している

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