1月10日、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」運営元の米Valveが、生成AI技術を使ったゲームを認める形で方針を変更しました。今回の変更では「AI技術を使用するゲームの大半がリリース可能」になるとしており、これまで事実上の禁止と受け止められていた状況からすると大きな方針転換です。ゲーム業界では生成AIの導入が進みつつありますが、生成AIに反対するユーザー、開発者自身の懸念などをはらみつつ進んでいます。すでにSteamでは159ものタイトルが登録済みと急激に増加しつつあります。
Steamのレギュレーションでは、AI生成を「事前生成」と「ライブ生成」の2つに分けています。
「事前生成」では、ゲーム開発会社は生成AIに関する開示セクションが追加され、どのように生成AIを利用しているのかをタイトルの販売申請時に記入する必要があります。
アート、コード、サウンドなどを使用して作成されたコンテンツが、「違法なコンテンツや権利を侵害するコンテンツが含まれないこと」などを約束することが求められ、他のコンテンツと同じように審査されるとしています。
一方の「ライブ生成」では、ゲームの実行中に作成されるコンテンツが違法なコンテンツを「生成しないためにどのような対策を講じているか」を記入する必要があります。
これら入力情報の多くは、ユーザーが理解できるように「ゲームのSteamストアページにも掲載されます」としています。そしてライブ生成AIコンテンツの場合、違法コンテンツが含まれているとプレイヤーが思った場合、報告できる仕組みを整えるとしています。
Valveは2023年6月時点で、ゲーム会社が「アセットを作成するためにAIを訓練したデータセットで使用されたすべてのIP」に対する権利を所有していると確認できない限りはゲームを配信不可としていました。これは事実上の禁止に近い状態と受け止められていましたが、今回の変更で、生成AIの利用についてクリアになった形です(「ゲーム業界、生成AIで激変の兆し 圧倒的王者Steamに挑むEpic Games」参照)。
Steamは、年間約2兆円とも言われる巨大なサービスにも関わらず、それほど複雑なレビュー体制も、チェックのための人員体制も持っていないと言われています。審査体制は明らかにされていませんが、毎日数十本の新作ゲームがリリースされている中、審査はせいぜいウィルス検出ソフトなどで自動的にチェックする程度で、かなり自由であることはゲーム開発者の間では知られています。
「様式が適切にそろっていれば配信される」「問題があった場合は後から修正をする」というアメリカのIT企業の一般的な方針を取っているわけですが、生成AI技術を使ったゲームについても同じ運用がなされる可能性が高まりました。
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