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宇宙で1Gbpsのスループット 世界各国の衛星つなぐ光通信実現目指す

宇宙空間で大容量通信可能なネットワークを構築 ワープスペース

連載
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2000年代以降、衛星データを使ったビジネスが活性化

 宇宙空間における現行の電波通信の支障が明確であるだけに、衛星間光通信のニーズは世界中に存在する。日本でも実用化に向け動き出している会社もある。日本のスタートアップ企業であるワープスペースに勝算はあるのだろうか。衛星など宇宙を介したビジネスは、日本は遅れをとっていると言われる。宇宙関連の学術イベントやシンポジウムなどでは、「欧州や米国が中心で、日本は後手に回っている感がある」という声もある。宇宙での光通信を日本発で事業化することができるのだろうか?

画像提供:ワープスペース

「実は2005年、日本は世界に先駆け宇宙空間における衛星間光通信を成功させています。しかし、この時の実験は商用というよりもアカデミックな目的で行なわれたものでした。産業化することは想定していなかったと思います。技術自体は20年前に確立していたものの、当時はニーズがなく、実用化は進みませんでした。それが2010年代から状況が大きく変わったのです」(東氏)

 日本で光通信の実験が行なわれた2005年頃は、衛星を打ち上げるためにかかるコストは膨大なもので、数十億円、百億円規模だった。利用できるセンサーも今ほど高精細ではなく、宇宙からのデータ利用もまだまだ用途が限定されていた。そのため、実現できることは実証されたものの、実用化はされないままとなっていた。

 ところがそれから時間が経過し、2010年代に入ると小型の衛星打ち上げも可能となり、数千万円で独自の衛星を打ち上げることが可能となった。搭載するセンサーは高性能化し、取得できるデータの精度も高まった。

「衛星打ち上げにかかるコストが数千万円台となり、衛星打ち上げは難しくないことが明らかになったことが宇宙産業におけるインパクトの第一段階だったのだと思います。さらに、さまざまな衛星が打ち上がり、衛星から撮影した画像データがビジネスに活用され、衛星写真の単価も下がっていきました。そこからさまざまなビジネスシーンで衛星写真が活用される産業ループが生まれたのです」

 多数の衛星が打ち上げられるようになると、通信による電波の干渉が大きくなっていった。増えた衛星で取得できるデータを活かすために、電波ではない、安定した大容量通信ネットワークが必要となり、光通信が脚光を浴びるようになったのである。

「衛星を使ったデータ活用では、例えば米国ではミサイルの脅威に対抗することができるのではないか、もっと迅速に、高精細衛星写真データを利用できる仕組みが欲しいなどのニーズがあがりはじめた。それらを実現できるのは光通信を使った、データ中継サービスではないかと光通信のニーズが高まり、関連システムや機器の開発企業などに対して巨額の投資が米国政府主導で行なわれたのです。これが衛星間光通信ビジネス化の黎明期だったのだと思います」

 まず国が安全保障などを目的に開発に乗り出した光通信が、民間のビジネスなどに利用されるニーズが産まれた。2005年時点では技術を実証するだけで意味があった宇宙での光通信だが、2020年以降は民間企業も利用できるような現実的な通信インフラの構築が求められるようになっていった。

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