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帆船ドローンが自由に海上を行き来する持続可能な社会を目指して

次世代の省エネルギー輸送手段に挑戦するエバーブルーテクノロジーズ

連載
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海の再生可能エネルギーの中でも風に着目し、帆船に自動航行技術を組み合わせることで、海上ドローンとして帆船を現代に再定義するエバーブルーテクノロジーズ株式会社。帆船型ドローン開発のノウハウをもとに、高機動型水上ドローンや陸上ドローンの開発にも取り組んでいる。目指すのは、ドローンを活用した再生可能エネルギー100%の海上移動・輸送の実現だ。

 エバーブルーテクノロジーズは2018年に設立された、ドローンの開発を行うハードウェアスタートアップだ。代表取締役CEOの野間恒毅氏は、SDGsの観点から持続可能な社会を実現しようと考え、海上ドローンをつくるべく起業した。

 同社が注目なのは、海の再生可能エネルギーの中でも風に着目して、帆船に自動航行技術を組み合わせることで海上ドローンを開発し、新たな海上移動・輸送手段に活用しようと取り組んでいることだ。プロダクトを開発した経緯と現在位置、そして今後の展望について、野間氏に伺った。

帆船型ドローン「AST-231」を用いた、山形県酒田市沖での実証実験の様子(画像提供:エバーブルーテクノロジーズ )

 エバーブルーテクノロジーズはもともと、海上ドローンをつくろうとして設立したわけではないという。持続可能な社会を実現するためにさまざまなテクノロジーを検討している中で、再生可能エネルギーに目を付けた。陸上はEVシフトで電動化が進んでいたが、海上はほとんど進んでいなかった。

「海には洋上風力や波力、潮力などたくさんの再生可能エネルギーがありますが、まだまだ活用されていません。船でいえば帆船ですね。産業革命以前、人類は帆船で地球を自由に行き来していました。最初に考えたのは、海洋上の再生可能エネルギーを電気にして、それを水素に変換して運搬するというもの。輸送も動力船を使うのではなくて、帆船を使えば、100%再生可能エネルギーで回るのではないか、という仮説を立てました。それで、まず自動航行する帆船をつくろうということでエバーブルーテクノロジーズを設立したのです」と野間氏は語る。

 すでに4モデルの海上ドローンを開発しており、実証実験も行っている。2022年には、山形県酒田市の沖合で、帆船型ドローンの自動航行テストを実施。連続9時間、合計19kmの無人自動航行に成功した。帆船なので、動力に使用したエネルギーはほぼゼロ。4G LTE通信に少し電力を使うため車用バッテリーを載せたが、それでも約10日間は連続航行できることがわかった。計算上、距離でいえば570kmもの航行が可能になるところまできている。

「長距離を小型船で移動しようとすると燃料が尽きてしまうので、選択肢はヨット(帆船)しかありません。100%再生可能エネルギーの風力をダイレクトに推進力に変えられるからこそです。ただし、通常のヨットの場合は、人間がずっと状況を見ながら操船しなければいけません。でも、ドローン技術を使うことで、そういうことを考えなくても、位置はGPSで正確に計測し、自動で風向きを読んで最適な帆の角度に調整することができるようになっています」

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