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ドリル北村の「エモいPCパーツ、エグいPCパーツ」 第3回

自作ユーザーすら買わなくなってきたDSP版Windows 今どきDVDはないでしょ

2023年07月24日 08時00分更新

文● ドリル北村

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 WindowsはPCパーツショップで販売していますが、通常のパッケージ版とは別にDSP版というものがあります。ところが、本来安く買えるはずのDSP版がパッケージ版より高いという逆転現象が起きています。

DSP版Windows 11 Home

DVDのDSP版よりUSBメモリーのパッケージ版のほうが安い!

 DSP版とは、WindowsをPCのパーツと併せて購入する場合に適用される販売形態、およびライセンス形態のことで、簡単に言えば、特定のPCパーツと一緒に買うことで、Windowsが安く買えるのです。

 古参の自作PCユーザーであれば、DSP版Windowsを買うために、格安インターフェースカードやFDDを購入した思い出があるはずです。

Windows 7以前は、約1000円程度のインターフェースカードやFDDなどがDSP版Windowsにバンドルされるかたちで販売されていました

 OSに限らずソフトウェア全般の販売形態が光学メディアだった頃は、DSP版Windowsを重宝したのですが、データはインターネットからダウンロードする時代になりました。するとDSP版Windowsのメリットが吹き飛び、逆にわずらわしさを感じるようになりました。

 まずメディアがDVDというのがネックです。今どき光学ドライブを搭載するなんてことはほぼありませんし、そもそも5インチベイが存在しないPCケースがほとんどです。それにもかかわらずDSP版WindowsはいまだにDVDでのみ供給されています。

DVDでのみ供給されるDSP版Windows。今どきDVDって……。仮にDVDドライブがあったとしても、読み込みが遅くてUSBメモリーの数倍インストールに時間がかかります

 光学ドライブがなくても、USBメモリーがあればWindowsはインストールできるのですが、そのためにはWindowsインストール用のUSBメモリーを作成する手間が発生します(もちろんUSBメモリーを持っていなければ8GB以上のものを別途用意する必要があります)。

 USBメモリーを用意することと、マイクロソフトのウェブサイトからWindowsインストール用のデータをダウンロードしてUSBメモリーにコピーすることを考えたら、最初からUSBメモリーで供給されるパッケージ版Windowsを買ったほうが手っ取り早いです。

 しかもDSP版Windowsは同時に購入したPCパーツと一緒に使うことが条件なため、一緒に買ったPCパーツが壊れた場合は使用条件を満たさなくなります。実際には、DSP版Windowsがどのパーツと結びついているのか記録していないので、同時に購入したPCパーツ以外で使おうと思えば使えてしまうのですが、これは大きな声では言えません。

 対してパッケージ版Windowsは、インストールデータが入ったUSBメモリーで提供されますので、パッケージを開けてUSBメモリーをPCに挿せば、すぐにWindowsをインストールできます。しかもPCを買い替えてもOSを新たに買い直す必要がありません(古いPCをそのまま使い続ける場合は、新しいPC用のWindowsを購入する必要があります)。

パッケージ版Windows 10/11はUSBメモリーで提供されます

 このように、Windows 11 Homeのパッケージ版とDSP版には大きな違いがあるのにも関わらず、価格差がないどころか、パッケージ版のほうが安いショップもあるのです。もはや「PCを自作するならDSP版Windowsを買うべき」という時代ではなくなりました。

Windows 11 Home 64bit 日本語版 平均実売価格(7月21日調べ)
DSP版 18,980円
パッケージ版 17,980円

 ちなみに、Windows 11 Proの場合は、パッケージ版とDSP版の価格差が約5000円ありますので、HomeではなくProの購入を考えているならば、DSP版を買うメリットは現在もあります。

窓辺ファミリーの存在が大きすぎた

 また、DSP版Windowsのマーケティング戦略にもこの10年近くで大きな変化がありました。DSP版が売れに売れた要因の1つが「自作パソコン応援キャラクター」の存在です。Windows 7の窓辺ななみに始まり、Windows 8は窓辺ゆうと窓辺あいの姉妹、Windows 10は窓辺とおこというキャラクターがいました。とくに窓辺ななみの声は、当時人気絶頂の水樹奈々さんを起用したこともあり、グッズ欲しさにDSP版Windowsを複数枚購入する人がいたくらいです。

DSP版Windowsの販売促進に大きく貢献した窓辺ファミリー。ちなみにHomeを買ってもグッズは付属しなかったので、必然的にProやUltimeteを買わざるを得なかったあたり、マーケティング手法も神がかっていました

DSP版Windows 7を購入すると窓辺ななみデザインの特製キーボードがもらえる太っ腹キャンペーンも展開されました

 この窓辺ファミリーもWindows 10の窓辺とおこが最後で、Windows 11にはキャラクターが存在しません。DSP版の販売に大きく貢献した窓辺ファミリーがいなくなったことも、DSP版、しいては自作ユーザーに対するハシゴを外された感が否めません。

 もはやDSP版WindowsはBTOパソコンやショップブランドPC向けと言ってもいいでしょう。そもそもDSP版がDVDでなければならない理由はありません。次期Windowsからは、時代に合わせてDSP版もUSBメモリーにしていただきたいものです。あるいはパッケージ版との価格差が3000円程度はないとDSP版の意味がありません。

 深夜販売といい、自作PC業界に新風を巻き起こしてきたのはいつもWindowsでした。窓辺ファミリーに変わる新しい販売促進戦略にも期待したいところです。Windowsプリインストール済みストレージなどがあると便利なんですけどね。

筆者紹介───ドリル北村

 電動ドリルが大好きな自作PC担当兼アキバ担当。高校生の頃にパソコン通信に興味を持ち独学でPCを自作。ネットの普及とともにMMO RPGに夢中になるもビデオカードが出すファンの騒音に閉口。爆音ビデオカードを投げ捨て静音に傾倒するようになる。NUCに出会ってから小型PCの魅力に取りつかれ今に至る。「ファンレス」「小型」「静音」という言葉に弱い。

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