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最新パーツ性能チェック 第397回

ゲーム7本でワットパフォーマンスを徹底検証!

799ドルのRX 7900 XTキラー!? GeForce RTX 4070 Tiレビュー【前編】

2023年01月04日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

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 2023年1月4日午前1時、NVIDIAはYouTubeの公式チャンネルでAda Lovelace世代の新GPU「GeForce RTX 4070 Ti」(以下、RTX 4070 Ti)を発表した。グローバルでの販売解禁は1月5日23時〜だが、国内では週末に合わせ1月6日解禁となる模様だ。

 このRTX 4070 Tiは、当初「GeForce RTX 4080 12GB」として発表されていた製品が名前を変えて再出発したものである。当初RTX 4080を冠していたものの、NVIDIA自ら「2つのGPUにRTX 4080の名を付けるのは混乱を招く」と声明を出し、昨年10月にRTX 4080 12GBはラインアップから消えた。

 だが、GeForce RTX 40シリーズキラーとして投入されたAMD「Radeon RX 7900シリーズ」の投入を確認した今、RTX 4080 12GBはRTX 4070 Tiとなって戻ってきたわけだ。

 再投入に伴い価格も改訂された。北米予想価格はRTX 4080 12GB時代は899ドルとアナウンスされていたが、RTX 4070 Tiは799ドルへ、100ドル下げられた。

 これは899ドルのRadeon RX 7900 XT(以下、RX 7900 XT)を強く意識した値下げとも捉えられる。NVIDIAによる国内予想価格は14万9800円〜となっているが、AICパートナーによるカードのボリュームゾーンは16万円〜18万円あたりではないかと筆者は予想している。RX 7900 XTが16万円前後で販売されているので、一応最安は下周りつつも、付加価値の高いモデルはRX 7900 XTのやや上の層に布陣している格好だ。

 RX 7900 XTのほうが実売価格が安い割にVRAM搭載量が多い(GDDR6 20GB)が、RTX 4070 Ti(GDDR6X 12GB)は「DLSS Frame Generation」(以下、DLSS FG)対応などの機能的なアドバンテージが残されている。ここが評価の分かれどころとなるだろう。

RTX 4070 Tiの予想価格は「14万9800円より」とNVIDIAからアナウンスされたが、この値段で出るのはごく一部と考えられる

 今回筆者は幸運にも、ZOTAC製ファクトリーOCモデル「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC」をテストする機会に恵まれた。価格的に競合しそうなRX 7900 XTや既存のGeForce RTX 30シリーズに比べ、どの程度優れているのだろうか? 今回も時間の関係で前後編の2部構成となるが、この前編では技術的解説のほか、レイトレーシングやDLSSを使わないゲームを中心に検証を試みる。

RTX 4070 TiにはFounders Editionが存在しないとのことで、レビュアー向けには ZOTAC製「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC」が貸与された。予想国内価格は税込み14万9800円となっている

トリプルファン仕様であるためカード全長は306mmと長めだが、ファンが約90mm程度と小さいためか、全高は120mm弱に抑えられている

基板自体はクーラー全長の2/3程度で終わっており、後ろ1/3はファンの風が吹き抜けるデザインとなる

初手から“ほぼフルスペック”なAD104で勝負に出た

 RTX 4070 Tiの技術的なハイライトは特にない。RTコアやTensorコアがそれぞれ1世代新しくなり強化されたほか、シェーダーに送る処理の順番を動的に変えて効率化を図る「Shader Execution Reordering(SER)」、RTX 40シリーズで初搭載されたDLSS 3に含まれるDLSS FGに必要不可欠な「オプティカルフローアクセラレーター」、AV1エンコードに対応したNVEnc、そして巨大なL2キャッシュなど、GeForce RTX 4090や4080が持つ要素はすべて継承されている。

 その一方で、RTX 4070 TiはVRAM搭載量が12GB、メモリーバス幅が192bitに絞られている。VRAM 12GB&メモリーバス幅192bitといえばGeForce RTX 30シリーズでは3060で見られた仕様だ。ビデオカードに17万円出す覚悟と知識のあるユーザーにとっては、このスペックに引っ掛かりを覚えることだろう。

 ただ、RTX 4070 Tiのメモリー帯域は504GB/secなのに対し、RTX 3060は360GB/secなので1.4倍と、性能は相応に上がっている(12GbpsのGDDR6と21GbpsのGDDR6Xなのだから当然だが)。この192bitの足回りでInfinity Cacheを備えたRadeon RX 7000シリーズと満足に戦えるのかと思うところだが、Ada Lovelace世代はAmpere世代に比べL2キャッシュが激増している点を忘れてはいけない。

 RTX 4070 Tiの場合48MBだが、これはRTX 3080の9.6倍(5MB)、RX 7900 XTの8倍(6MB。ただしInfinity Cacheは80MB)にあたる。メモリーバス幅の狭さをL2キャッシュで緩和できているかが検証のポイントとなるだろう。

RTX 4070 Tiと、その近傍の製品との比較

「GPU-Z」による情報。メモリーバス幅192bit、7680基のCUDAコアを備える

ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OCのTotal Graphics Power(以下、TGP)は285W、OCツールで最大314Wまで引き上げることが可能だ

 RTX 4070 Tiのプロダクトデザインでひとつ興味深い点がある。RTX 4070 Tiは「AD104」コアを使って製造されているのだが、RTX 4070 TiはAD104のほぼフルスペックと言ってよい構成なのだ。

 上位GPUほど新コアが出たら若干CUDAコアの少ないバージョンをGeForceに、フルスペックはQuadroにと使い分けるのがNVIDIAのいつものムーブだが、RTX 4070 Tiに限っては最初からフルスペック(筆者がど忘れしているだけで初手フルスペックコアなGeForceがあるかもしれないので、その時は素直に謝罪したい)。AD104のフルスペックと唯一違う部分は、NVDecが1基か4基かの違いだけとなる。

AD104のブロック図。フルスペックAD104では、NVDecが4基搭載されている。これはビデオ解析やAIの学習/推論向けの装備となる

RTX 4070 Tiのブロック図:描画性能の要となるSM/TPC/GPCの数はAD104と同じ。ただNVDecが1基しか搭載されていない。メモリーコントローラーは1基あたり32bit幅なので、合計192bit幅となる

 最後に気になる電源周りの仕様だが、RTX 4070 TiのTGPは定格で285Wと、RTX 4080の9割程度の値になっている。補助電源はRTX 3090 Tiから採用された12VHPWRだが、テスト用に受領したZOTAC製ファクトリーOCモデルには8ピン3本を12VHPWRに変換するケーブルが同梱されていた。

 公式スペックでは「PCI Express 8ピン×2、または300W以上のPCI Express Gen5ケーブル」となっている。8ピン3本だと最大450Wなので過剰となるが、8ピン2本だけ繋いでも動作する。

補助電源コネクターはPCI Express Gen5世代の12VHPWRを採用。このクラスなら別に8ピン×2でも問題ないのだが……

変換ケーブルは、8ピンケーブル3系統から12VHPWRへ変換するものが同梱されていた。3系統のうち2系統繋ぐだけでも動作する。また、このケーブルは内部の端子が非常にタイトに作られており、RTX 4090の発火問題を受けて対策していることが窺える。なお、なぜかこのケーブルにはNVIDIAのロゴがないのだが、これについては謎だ

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