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山谷剛史の「アジアIT小話」 第187回

中国でブームの気配を見せて、すぐ沈静化した「スマートミラー」 短命だった理由は?

2022年12月24日 12時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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 中国では、縦長の大画面ディスプレーが局所的に盛り上がっていた。日本で超縦長のディスプレーというと、「ツイ廃」向けなどと言われた、NewBridgeの「8.8インチ ウルトラロングモバイルモニター」が話題になったが、中国ではフィットネスミラーとライブストリーム向けで製品が続々と発売された。このうちフィットネスミラーについて取り上げる。

中国ではさまざまなスマートミラーが売られている

専業メーカーから、シャオミ、ファーウェイ、バイドゥまで
大規模な資本調達もあって、ブームが起きた「スマートミラー」

 日本ではかなりのガジェット好きでもあまり知られていないが、中国で人気があった「スマートミラー」とは、スタンドミラーのように自身の全身を映しつつ、中にはディスプレーがあるというもので、レッスン動画を表示してユーザーの姿勢をAIで判定し、的確な指示を受けながらトレーニングレッスンができるといった製品だ。日本でも商品化されて、ジムなどには導入されているので、その存在を知っている、あるいは使ったことのある読者もいるかもしれない。

いろいろなフィットネスプログラムが利用できる

 こうしたスマートミラー製品が、中国では最大手のFITUREやIMBODYといった専業企業をはじめ、シャオミ(小米)やファーウェイ(華為)、バイドゥ(百度)といった大手IT企業、さらには無名の企業までさまざまなメーカーからリリースされている。

 深センや東莞などのディスプレー生産企業がハードウェアの供給元で、それにレッスンコンテンツとAIレッスン機能を付加されたものが販売されており、スマートフォンやワイヤレスイヤフォンなどのように、中国ではしばしば見かけるハード戦争が起きているわけだ。値段は2000元台(1元=約19円)から購入できる。

 スマートミラーの専業企業が続々と登場する背景には、テンセントやセコイアといった大企業から資本調達を受けることで、スタートアップでも開発・量産・販売体制が整うという背景がある。2021年には、スマートミラーメーカーの資本調達のニュースをよく見たもので、たとえば先ほど紹介したFITUREは、3億ドル(約400億円)もの資本調達を受けて、評価額は15億ドル(約2000億円)に達した。

後発組は資本のモノを言わせて、コスパで勝負
ところがこれが売れなかった

 そのニュースを受けて、バイドゥやシャオミもスマートミラーに参入。スマートスピーカーもそうだったが、市場を取りに行くためにコストパフォーマンスが高い安価な製品をリリースした。中国のシェア系ビジネスがそうだったように、作れば作るほど赤字になろうとも資本にものを言わせてチキンレースで生き残った者が市場を取る、泥沼の戦いが起きるのではないかと考えられていた。いびつな産業構造にも思えるが、それ自体は中国ではよくあることで、いよいよスマートミラー業界は旬だと報じられた。

 ところがである。このスマートミラー、ユーザーの評価がよくなく、商品が売れないのだ。ECサイトの天猫(Tmall)の公式ショップで月に100個も売れる人気製品は数少なく、一方、オンラインの中古市場で大量にスマートミラーを見るようになった。どうも縦長の製品ゆえか、動作の範囲によって制限され横の動きが把握できず、正確なはずのAI指導もプライベートジムよりもずっと粗いという。また、「持っていても自慢できるようなステータスシンボルではない(中国人の面子を満たす製品ではない)」「グループで運動できる雰囲気がない」「システムがときどきフリーズする」といった声も。カラオケなどの機能を増やすことで製品の魅力を増やそうとしているがどうもいまいちだ。

カラオケ機能追加も魅力にはなりにくかったようだ

ダンスゲームを追加した製品も

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