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ドローン免許制とは? ドローンの産業活用を広める国の取り組み

2021年05月14日 20時00分更新

文● ASCII

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写真はソニーがCESで発表した空撮用のドローン

 日本では2022年度の運用開始を目指して、ドローン免許の導入が検討されている。国家資格としてドローンの免許制が導入されると何が変わるのだろうか。

 ドローンとは、遠隔操作/自動操縦で飛行する無人航空機を意味する。形態はよくイメージされる“マルチコプター”だけでなく、固定翼機や回転翼機(ヘリコプター)なども含まれる。また、ホビーや空撮では機体の位置や状態を目視しながら操縦するタイプが中心だが、農薬散布や生育調査などでは、機体が位置や周囲の環境を把握し、組み込んだソフト(プログラム)に沿って自律飛行するタイプもある。今後、離島など遠隔地にものを届ける用途を検討した場合、自律飛行に加えて目視外での飛行も求められるだろう。

ホビーや産業利用などドローンの活用が広がっている

 ドローンは、ここ10年で一気に導入が進んだ分野で、いままでにないカテゴリーの機器と言える。無人航空機をどうとらえるかが課題になっている。

 過去には首相官邸への落下事件があり、ドローンの認知度が一般に広がるとともに、取り締まりが強まった経緯もある。しかしながら、機器自体の高性能化が進んでおり、産業分野では広く応用が進んでいる。例えば、農業散布、プラント点検/警備、高層ビルや橋梁の老朽化確認など人の目が届きにくい場所での活用だ。とはいえ、山火事の際に野次馬ドローンが消火活動を妨げた事案や、カメラが高性能化すればするほど、プライバシーへの配慮が重要になるといった側面もある。何を規制して、何を許すのかの整理が必要な状況だ。

 そこで国は、ドローン利用に対する環境整備と技術開発を進めている。環境整備とはドローンを登録制とし、所有者を把握できるようにすること、認証された安全な機体の使用や定期点検を促すこと、操縦ライセンス制度を採り入れ技能の習得に加えて飛行リスクに対する知識や法令順守意識の向上を図ること、運行管理の仕組みを作って衝突防止や事故発生時の報告方法を定めたり、飛行計画の共有をしたりするようにすることなどだ。

 また、技術面では、自動車のナンバーに相当する「リモートID」を導入し、使用者/製造番号を識別したり、タグと通信をつかった運行管理をしたりして、様々な機器の飛行状態を把握できるようにする。

 現状ではドローンの飛行に対して、航空法や小型無人機等飛行禁止法などを適用している。例えば、200g以上の重量を持つドローンは、航空法が適用される対象となる。飛ばす際には、空港周辺、150m以上の上空、人家の密集地域など飛ばしてはいけない場所があり、日中・目視内・建物や自動車から30m以上の距離を取るといった制限がある。また、それ以下のドローンでも、小型無人機等飛行禁止法によって、国会議事堂・首相官邸・原発など重要施設の上空での飛行が禁止されている。

 また、資格についても曖昧な部分があった。現状、民間資格があり、これを取得すれば、ドローン操縦に対して一定のスキルを持つという証明にはなる。しかし、この資格がなければ、仕事でドローンを飛ばせないというわけではない。自動車の免許のように、資格を持つことで、できること(許されること)に違いが出るわけではない。

免許を取れば、許可を取らずに飛ばせる範囲が増える?

 免許制度は、こうした国のドローンの取り組みの一環だ。ドローン飛行に対する規制が強まる印象を持つ人が増えると感じる人もいるだろうが、条件を満たせば、手間なくできることが増えるという面もある。

 ドローンは目視内での操縦(機体を目で見ながらの操縦)かどうか、手動操作か自動/自立操縦かどうか、補助者が付くかどうかなどで、飛行形態のレベルが決められている。目視外の飛行とは、機体自体を目で見ず、アプリなどで位置や動作状況を確認しながら操作する方法だ。現在の法律では、無人地帯であれば、補助者がなくても目視外の飛行が可能となっている(レベル3)が、これが補助者なし/目視外でも有人地帯で飛行できるようになる(レベル4)と、例えばドローンを使って市街地で宅配をする、ドローン配送なども可能になるだろう。

 また、操作が目視内か目視外かで大きく等級を分ける。さらに、レベル4以外の操縦については、手続き不要でドローンを飛ばせる範囲を広げる。資格は全国に1000程度あるドローンスクールなどを民間試験期間に選び、資格取得ができる方法も検討するが、認定のレベルにかなり差があるため、スクールによっては一等、二等の区分に満たない内容の場合があるため、準備期間を設けながら対応していく考えだ。

 一方でレベル4での運用などを想定して、航空法の適用対象を従来の200g以上から100g以上に引き下げるといった方針も提示されている。ほかにもドローンが荷物配送の際に、道路・河川・国立/国定公園・国有林野・港湾などの上空を、単に通過する場合は手続きを原則不要とするガイドラインを示したり、私有地の上をドローンが飛んだ際に土地の所有権を侵害することになるかを議論し、住民とどのように理解し合うかなど、ドローンの産業活用について検討している。

 国土交通省の資料によると、レベル4未満の飛行に関しては、(1)人口密集地域上空、空港周辺、高度150m以上、(2)夜間飛行・人/物件から30m未満の飛行機体認証(二種以上)・操縦ライセンス(二種以上)、操縦ライセンス(二種以上)、共通運航ルールなどの条件を満たしたうえで飛行ごとの許可・承認なしで飛行できるようにする方針になっている。従来も飛行ごとの許可・承認を取り、機体の安全性、操縦技能の個別審査、共通運航ルールなどの条件が揃えば飛行できたが、その範囲が広がることになる。

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