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最新パーツ性能チェック 第331回

GeForce RTX 3060速報レビュー!VRAM 12GB&Resizable BAR対応のメインストリームGPUを検証

2021年02月25日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

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メモリーバス192bitで12GB搭載&Resizable BAR対応

 まずはRTX 3060のスペックをおさらいしておこう。2020年末に発売したRTX 3060 Tiは、GA104コアをベースにCUDAコアを減らしたものなのに対し、今回のRTX 3060はメモリーコントローラー数の少ないGA106コアを利用したものとなる。SM数は28基であるため、フルスペックGA106よりもSM2基分が無効化されている(おそらくフルスペックはQuadro向けだろう)。RTX 3080や3070はTuring世代の同格GPUに比べ、CUDAコアが2倍以上に増えていたが、RTX 3060はRTX 2060に対し1.86倍とやや控えめなCUDAコア増にとどまっている。

 メモリーバス幅192bitはRTX 2060やGTX 1660、GTX 1060と同じだが、RTX 3060はメモリー搭載量が12GBに増えている。この12GB搭載の理由についてはRX 6700 XTへの対抗説が考えられるが、ライバルAMD陣営が多量にキャンセルしたGDDR6Xを引き取った結果という説もある。もちろん真実はNVIDIAの中の人しか知らないことではあるが、昨今の大作系ゲームではフルHDですら6GB以上確保しようとするものもあるため、12GB搭載という決断は多いに歓迎すべきだろう。

RTX 3060とその近傍、さらに旧世代60番台GeForceとのスペック比較

「GPU-Z」で評価用カードの情報を拾ってみた。ファクトリーOCモデルなのでブーストクロックは1807MHzにOCされている。メモリーバス幅192bitだが、搭載量が12GBと大きいのがRTX 3060の特徴

評価用カードのTGP(Total Graphics Power)はリファレンス仕様準拠の170Wで、OCツールを利用することで最大187Wまで引き上げられる

GA106フルスペックからSM2基分を無効化したものがRTX 3060となる(この手の図を出すのは久しぶりだ)

 RTX 3060の存在が発表された直後は上位モデル(RTX 3060 Tiなど)よりもVRAMが多いことが話題になった。だが、上位GPUに比べCUDAコア数もメモリーバス幅も抑えられているため、VRAM 12GBのRTX 3060の方がパフォーマンスが良いのではと考えるのはやや早計だ。12GBが力を発揮しやすいのは4K(3840×2160ドット)以上の解像度だが、4KではCUDAコアの方が飽和するため、結局は上位GPUの方が性能は上になるだろう。ただし、メモリーのデータレートが15Gbpsと高いので、メモリーバス幅が効きにくいフルHD(1920×1080ドット)では、RTX 3060が上位GPUを食う可能性は十分に考えられる。

 ゆえに、VRAM 12GBというスペックは特別にVRAMを消費するような状況(Mod盛りまくりなど)でない限りは、ゲームでの劇的な効果は期待しない方が良いだろう。ただ、CGレンダリングや動画編集など、VRAMを使いまくる系の用途にはRTX 3060は極めて有効であると考えられる。NVIDIAは8K(7680×4320ドット)動画編集などの用途向けにRTX 3090を出しているが、さすがにビデオカードに25万円(昨年よりも値上がりしている)は出せないという人には、RTX 3060は注目すべきGPUといえるだろう。

 RTX 3060の設計・機能については既存のRTX 30シリーズと共通だが、RTX 3060ではPCI Expressの「Resizable BAR」に対応した点に注目しておきたい。この機能はAMDがRadeon RX 6800シリーズで導入した「Smart Access Memory」と同じものであり、VRAMへ巨大なデータを転送する際のボトルネックを解消してくれる可能性を秘めている。既存のRTX 30シリーズも、3月以降にvBIOS更新という形で対応するとのことだが、RTX 3060は最初からResizable BAR対応のvBIOSで出荷される。

 ちなみに、Resizable BARを利用するにはマザーのBIOSをResizable BAR対応のものに更新しておき、さらにBIOS設定で有効化&CSMモジュールを無効化してUEFIブートというハードルがあるため、どんな環境でも利用可能、という訳にはいかない。AMDプラットフォームならX570/B550マザー、インテルプラットフォームならZ490マザー(まだ現物を手にできていないがZ590マザー等も対応すると思われる)が必要だ。

Resizable BAR対応BIOSを導入した後で「Above 4G Decoding」と「Resizable BAR Support」をEnabledに、「CSM Support」をDisabledにする必要がある

Resizable BARの設定を済ませた環境にRTX 3060を追加すると、デバイスマネージャーのリソースタブに「大容量メモリの範囲」という項目が出現する。同時にNVIDIAコントロールパネルの「システム情報」でも「Resizable BAR」が“Yes”になっていることを確認できるはずだ

Resizable BARを未設定の環境、もしくはResizable BARが使えない環境では「Resizable BAR」が“No”と表示される

仮想通貨マイナーと決別

 RTX 3060を語る上で、仮想通貨マイニングの話題は避けて通ることができないだろう。昨今のビデオカード不足&価格上昇の原因の一端は、仮想通貨マイナーによる買い占めが担っているからだ。

 だがNVIDIAはこれを良しとしていない。GeForceはあくまでゲーマーのためのものであると表明し、RTX 3060には仮想通貨マイニングの効率を落とす機能が実装されているというのだ。

 この機能は、Ethereumマイニング時に使われるアルゴリズムが引き起こす独特なVRAMアクセスパターンをドライバーが検知すると、ハッシュレートを自動的に引き下げるというもの。NVIDIAによれば、今回Ethereumを名指ししているのは、現在GPUマイニングが可能な仮想通貨の中で最も収益が期待されるため、Ethereumのハッシュレートを引き下げることでGPU買い占めを抑制しようという狙いがあるという。

 これは同時に、Ethereumマイニングとは違うアルゴリズムを使う仮想通貨マイニングに対しては対策していないことを示唆しているが、他の仮想通貨のアルゴリズムは今のGPU需要に大きく影響していないため、現時点ではEthereumのみに絞った対策にとどめているようだ。Ethereumマイニング時の特異なVRAMアクセスパターンを検出するので、ゲームや一般的なGPGPU用途には影響しないという点も憶えておきたい。

 今回RTX 3060に導入されたハッシュレート制限機能は、ドライバー上で実装されているので無効化されそうな気がするが、実際は相当に難しいようだ。NVIDIAによればRTX 3060のシリコンとvBIOS、そしてGPUドライバーの間にはセキュアハンドシェイクが実装されており、この仕組みを破らない限りはドライバーを改変してハッシュレート制限を取り払うことはできないという。

 いつかはこの仕組みが破られるかもしれないが、それまでは仮想通貨マイナーにとってRTX 3060は“収益性の良くないGPU”になるだろう。既存のRTX 30シリーズに対しこの機能を実装することはない(まず確実に訴訟で負けるだろう)が、今後NVIDIAが“SUPER”や“V2”のような新SKUを出して上位GPUにも同じ機能を提供することは十分考えられる(幸運にも市場にモノがないのでSKU移行は簡単だ)。

 なおNVIDIAでは、RTX 3060のハッシュレート制限をかけた一方で、マイニング向けの新GPU「CMP HX」シリーズを先日発表するなど、仮想通貨マイナーのための施策も新たに用意している。いわばアメとムチのような異なる施策を用意することで、GeForceの買い占めを防ぐ考えのようだ。

↑RTX 3060のハッシュレート制限機能がムチとするならば、アメに相当するのが先日発表された新GPU「CMP HX」シリーズだ。グラフィック出力を持たず、マイニング向けに電力効率を重視した製品となる

CMP HXシリーズは4種類が予定されているが、どの製品も現行GPUに比べるとハッシュレートが低めの製品になる

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