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製造業におけるDX推進のための共通プラットフォーム+サービス提供、参加企業の独自サービス販売も

富士通、ファナック、NTT Comが製造業DXの新会社「DUCNET」設立へ

2020年10月08日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 富士通、ファナック、NTTコミュニケ―ションズ(NTT Com)の3社は2020年10月7日、新会社「DUCNET(ディーユーシーネット)」を2020年11月上旬に設立すると発表した。クラウドサービス「デジタルユーティリティクラウド(DUC)」の提供を通じて、工作機械業界をはじめとした製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)と新たなデジタルビジネスを支援する“場”を構築する狙い。中堅中小企業を対象として、2021年4月から国内で、2021年度中に欧州、北米、アジアで順次サービス展開を図る。

新会社DUCNETの狙い。クラウドサービス「DUC」を通じて製造業のDXとデジタルビジネス推進を支援

(左から)記者発表会に出席したNTTコミュニケーションズ 取締役の西川英孝氏、富士通 COLMINA事業本部戦略企画統括部 シニアディレクターの田中隆之氏、ファナック 取締役副社長執行役員兼CISOの齊藤裕氏、富士通 理事の藤原克己氏

 新会社の資本金は2億5000万円で、富士通が40%、ファナックが30%、NTT Comが30%をそれぞれ出資する。社長には富士通 COLMINA事業本部戦略企画統括部 シニアディレクターの田中隆之氏が就任。本社は東京都大田区に置き、社員数は7人でスタートする。

メーカー、商社、ユーザーも参加する「製造業の標準プラットフォーム」目指す

 田中氏は、DUCは機械メーカーや商社、機械ユーザー、ITベンダーが参加できる「製造業における業界標準のプラットフォームを目指す」ものだと説明する。「安心、安全なプラットフォームを提供する事業」「DXを支えるシェアードサービス事業」「提供者と利用者のマッチングを促すeコマース事業」の3つが、DUCNETの事業の柱だ。

 「これまで、各社が同じような領域に対して同じような投資をしていたものを(競合差別化にはつながらない)『協調領域』ととらえ、(DUCから)共有サービスとして提供する。これにより、顧客企業はビジネスを発展させる領域に投資を集中できる」(田中氏)

事業の3本柱。DUCというプラットフォームの提供と同時に、DUC上での共有サービス提供、利用者間のマッチング(ECサイト)提供も行う

 また富士通 理事の藤原克己氏は、DUCNETの最大の特徴は「公共性の高いエコシステムを目指していること」だと説明した。工作機械やロボットで高いシェアを持つファナックがDUCのファーストユーザーとなり、その成果に基づいて協調領域のサービスを製造業に広く届けることが狙いであり、「1社による囲い込みではなく、業界全体の視点に立ってユーティリティサービスを企画、開発する」と述べた。

 モノづくりに関する各種情報をつなげる富士通のデジタルプレイス「COLMINA(コルミナ)」をベースに開発されたDUCは、基本機能としてコミュニケーションツール(SNS)、ストレージ、オンラインストア機能を、さらにユーティリティーツールとして、AI検索ツール、IoT管理ツール、保守業務ツールなどを提供する。

 参加企業は、DUCNETから提供されるサービス群を購入し、自社テナント内でそれらを活用して社内DXを推進する。さらに、自社テナント上で新たなサービスを構築したり、既存サービスと連携させたりすることも可能で、ECストアを通じて独自のサービスを別の参加企業に販売することも可能だ。

 「(参加企業が開発した)サービスは、ECストアの機能を利用して顧客に提供できる。さらに、動画撮影した保守マニュアルなどの各種コンテンツやソフトウェアの販売、物販も可能になる。今までの業務にプラスαの価値を付けて、デジタルビジネスを促進できる。“モノ売りからコト売りへの転換”を支援する」(田中氏)

DUCのサービス概要。参加企業はDUCNETが提供する共有サービス(基本機能やユーティリティツール)を購入して自社DXを促進すると同時に、自社向けに構築したサービスを他社に販売することもできる

 DUCNETでは、テナントの基本使用料やストアの販売手数料で収益を得る考えだ。約10人の参加企業での利用において、月額数万円程度のテナント使用料を想定しているという。設立後3年以内に300社のDUC参加を目指し、その後はグローバルへの展開を含めて1000社以上に広げる目標だ。「3年後には年間20~25億円の売上げを目指す」としている。

 まずはメーカー、販社を含めて全世界におよそ1300社ある工作機械業界を対象とするが、その後は組み立て機械業の20~25万社もターゲットにしていく戦略だ。

3社それぞれの強みを持ち寄り「製造業DXの Lighthouse Companyを目指す」

 3社は2018年夏から協業を開始し、2019年9月には今回のDUCNETにつながるJV構想を発表している。この協業において、富士通はCOLMINAの開発知見を生かしてアプリケーションレイヤーを担当。ファナックは工作機械業界の立場に立ち、DUCに必要となる機能を企画するとともに、製造現場のエッジレイヤーを担う「FIELD system」の開発知見を生かしてエッジレイヤー機能の提供を担当する。NTT Comでは、セキュリティやインフラのサービス知見を生かし、安心安全なデータ活用を実現するためのICT基盤やセキュリティ機能を担当する。

DUCNETでは、富士通、ファナック、NTT Comそれぞれの知見を生かす

 富士通の藤原氏は、「3社の強みを持ち寄って、製造業全体の持続可能性に貢献したい。製造業DXの Lighthouse(灯台) Companyを目指す」と抱負を述べた。

 「製造現場におけるDXの遅れは世界規模で喫緊の課題だが、製造業が厳しい環境にあるなか、個社単位での対策やシステム投資には限界がある。ニューノーマル時代にこうしたプラットフォーム(DUC)が登場することは必然であり、業界全体で共通化を促進できる」(藤原氏)

 また、これまで1万社以上にモノづくりソリューションを導入してきた富士通にとっても、これは大きな変革であり、DUCNETを最大限に利用して「これまでの個社対応モデルから、サブスクリプションモデルによるチャネル変革、グローバルへの再チャレンジなどに取り組む」とした。

 ファナック 取締役副社長執行役員兼CISOの齊藤裕氏は、ファナックの今後の成長を考えるうえではデジタルを活用したサービスビジネスへの進出が必要であり、DUCを通じてそうした新ビジネスを展開できると述べた。ファーストユーザーとしてDUCを活用し、社内のDXを実現するとともに、工作機械業界に対してもサービスとして提供していく。

 「これは単独では難しかった取り組みであり、新会社(DUCNET)が工作機械業界の発展に寄与することを期待している」(齊藤氏)

 NTTコミュニケーションズ 取締役の西川英孝氏は、「ネットワーク、インフラ基盤の提供に加えて、工場から生まれるデータを安心、安全に流通させることを支援する。データと所有者をひもづけ、トレースするという点で、DUCNETを通じた貢献ができる」とした。

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