このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

VDIソリューションへの問い合わせが倍増、この動きを「DX成功への道のり」につなげるために

「コロナ以後の“スマートノーマル”実現を」レノボES・ロボトム社長

2020年06月15日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 「今年上半期のVDI(仮想デスクトップ)ソリューションに関する問い合わせ件数を見ると、昨年同期比で130%の伸び、つまり2倍以上に増えている」

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES)社長のジョン・ロボトム氏はこう語る。新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、幅広い業界でこれまでにない大規模なテレワーク/在宅勤務の実施が必要になった結果、これまでVDI導入を検討してこなかった業界/企業規模/職種でも検討が始まり、問い合わせが急増しているという。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES) 社長のジョン・ロボトム氏

 もっとも、あらゆるケースで常にVDI導入が最適解というわけではないと、ロボトム氏は強調する。顧客企業におけるIT戦略の全体像を理解し、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」というより大きなミッションを支援する視点に立ち、ソリューションを提案しているという。

 「今回の事態を、日本がステップフォワード(一歩前進)するきっかけにしたい。ニューノーマル、レノボで言う“スマートノーマル”を実現する大きなチャンスが来ている」。そう語るロボトム氏と、LESでソリューション・アライアンス本部長を務める早川哲郎氏に、詳しく話を聞いた。

VDIソリューションへの問い合わせ増加、幅広い業種/職種への適用検討が背景に

 前述したとおり、VDIソリューションに関するLESへの問い合わせは急増している。それと同様に、従来から開催してきたVDI関連のオンラインセミナーも参加申し込みが増え、顧客企業における関心の高さが感じられるという。

VDIソリューションに関する2020年上半期の問い合わせ件数は、昨年同期比で2倍以上に増加した

 ロボトム氏は、これまでも「働き方改革」施策としてテレワーク/在宅勤務の導入/検討を進めてきた企業は少なくないが、そうした企業でも全従業員が対象となり、しかもそれが数カ月以上に及ぶレベルでは想定していなかったと語る。

 「今回は急遽、ほとんど“強制的”に在宅勤務をしなければならなくなった。しかも、想定されていたレベルを超える規模での在宅勤務となったので、VDIについて『あらためて詳しく話を聞きたい、検討したい』という企業の問い合わせ、セミナー参加が増えた」(ロボトム氏)

 早川氏によると、実際に導入の前倒しや検討のスピードアップとなったVDI案件が多いという。たとえば、メガバンクと比べて遅れていた地銀でのVDI導入が加速したり、感染症対応のためにリモートでも仕事のできる環境を整えたい医療機関/病院で採用されたりしたケースがある。また長期的、段階的に導入を進めてきた製造業で、ロードマップを前倒しし進めたケースも見られる。これまでVDIと言えば“大企業向け”のイメージがあったが、今回は中堅以下の規模でも導入検討の動きが広がっているという。

 もうひとつ、これまでは在宅勤務を検討する際も事務職が想定の中心だったが、たとえば設計やエンジニアリング、デザインといった職種にも対象が拡大した。これも今回の特徴だ。ロボトム氏は、「これまでのVDI導入におけるドライバー(VDI導入を促す要因)とは少し違っているので、問い合わせの内容もさまざまだ」と説明する。

 「われわれ自身にも、VDIと言えば“大手企業、金融業界、高いセキュリティを求める企業”というイメージがあった。現在は、あまり『VDIとはこういうもの』と決めつけないようにして、適用先をより柔軟にとらえるべきだと考えている。そういう意味で、幅広い顧客から問い合わせがあるのはうれしいことだし、現在の状況や課題にVDIがどうフィットするのか、顧客とディスカッションすることでわれわれ自身も学びが多い」(ロボトム氏)

テレワークの自社実践経験と、PCデバイスからHCIまでの包括的な提案力

 LESおよびレノボグループでは数年前から、自社での“無制限テレワーク”実践とともに、顧客へのテレワーク導入提案やVDIソリューション拡充に注力してきた。

 ロボトム氏によると、LESでは3月初旬から従業員への在宅勤務の推奨を開始しており、その時点で本社オフィスの出勤率は数%になったという。顧客企業やパートナーから、どのように在宅勤務を進めているのか質問されることも多いため、自社実践に基づく「テレワークスタートガイド」「テレワーク環境ガイド」を作成し、無償公開している。

 「レノボでは数年前からテレワークを全面推進してきたため、技術的な面だけでなく(人事、労務など)制度面の話、さらに会社の文化として定着させるための取り組みなどについても、きちんと話ができる経験値がある」(早川氏)

 さらにロボトム氏は、レノボグループとしてPCデバイスからバックエンドまで、テレワーク環境全体をエンドトゥエンドで提案できる点も強みだと説明した。「グローバルのPC市場でNo.1シェア、さらにテレワークスタートガイドなどを提供していることもあって、テレワーク全般に関する“相談窓口”としてお問い合わせいただくケースも多い」と語る。

 VDIシステム面では、「CAD on VDIソリューション」など多様な業種/用途向けのソリューションポートフォリオを備え、実績を積み重ねてきている。これに加えて早川氏は、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)ソリューションにおいてもNutanix、VMwareなど幅広いポートフォリオを持つことを強調する。

 「いきなり全社員ではなく100人ずつ導入していくなど、VDI導入は段階的に進めるのが一般的。そのため、インフラハードウェアも段階的にスケールしていけるものが適しており、HCIの親和性は高い」(早川氏)

VMware、Citrix、Nutanix、NVIDIAといったコンポーネントを組み合わせた多様なVDIソリューションを提案している

 ちなみに、CADを使う製造業の設計業務など、これまでVDI導入が難しく在宅勤務の対象外と考えられてきた職種についても、「今回、大手企業が全社的に(VDIが)入ったので、その動きが中堅以下の企業にも波及していくのではないか」と早川氏は語る。ロボトム氏も、新型コロナの業務影響がいつまで続くか見えないため、企業がそうした重要業務の事業継続性を担保する対策として導入を進めていると述べた。

3D CADやCG制作に対応する、GPU仮想化技術を用いた「CAD on VDIソリューション」でも実績を持つ

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード