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特別企画@プログラミング+ 第42回

AIの社会実装はどこまで進んでいるのか? 第1回 (『AI白書2020』より)

今利用されているAI技術は、ディープラーニングだけじゃない!

2020年04月15日 09時00分更新

文● ASCII

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 人工知能(AI)というと、まっ先にディープラーニングが連想されます。実際、多くの領域において、ディープラーニングの研究開発、実証実験、社会実装が進んでいます。

 しかし、AIの実態としては、第三次AIブーム以前のルールベースや探索アルゴリズム、またディープラーニング以外の機械学習によるデータ分析手法やツールなども、広く使用されています。

 株式会社角川アスキー総合研究所が2020年3月に発売した新刊『AI白書2020』(編:独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会)では、AI技術を次のように分類しています。

AI技術におけるおおまかな区分(『AI白書2020』図3-2-1より)

 ここでは『AI白書2020』をもとに、それぞれの概要と実装例を紹介します。

ディープラーニング

 ディープラーニングとは、脳の神経回路の働き(ニューロン)をモデル化したもので、画像や音声を入力し、正解となる出力との差を小さくすることを繰り返して判断の精度を高めていく仕組みです。従来の機械学習では、分類や予測などの機能を実行するために必要な特徴を人間が与えていたのに対し、ディープラーニングでは、大量のデータを用いて特徴を自力で抽出することを可能にしました。

 ディープラーニングの登場により、画像認識や音声認識の分野で従来の精度を凌駕するなど様々な成果が得られています。

 具体的な例としては、AIによる自動撮影や編集機能を備えた円柱状の無人撮影カメラを開発しているPixellot(イスラエル)や、物流センターに音声認識を活用した仕分けシステムを導入している銀座コージーコーナー(日本)などが挙げられます。

 Pixellotは、ディープラーニングとコンピュータービジョンアルゴリズムがスポーツごとの違いを微調整して最適化。AIが自動でカメラワークを行い、動画内や動画と動画の合間に広告を自動挿入することも可能となっています。実際の動画のクオリティは下記の通りです。記録用や試合後の分析用の動画としては、これで十分ではないかと思わせるほどです。



高校スポーツにPixellotを活用した動画

ディープラーニング以外の機械学習

 ディープラーニング以外の機械学習は、ディープラーニング普及以前から利活用が進められている歴史のある技術です。決定木、サポートベクトルマシン(SVM)、ランダムフォレスト、回帰分析など様々な手法があります。ディープラーニングが、特徴量(分析に関係がある情報)を自動的に抽出するのに対し、これらは、主として人が特徴量を選択し、コンピューターに教えるという点が異なります。確立された統計的手法がベースになっており、予測結果に対して理論的な根拠を得やすいとされます。

 具体的な例としては、機械学習アルゴリズムを活用することで、いつどこで犯罪が発生するか予測するソリューションを提供しているPredpol(アメリカ)や、顧客の個別の取引を、機械学習を活用して評価、スコアリング・学習し、クレジットカードの通常取引と不正取引を適切に見分ける手法を導入しているMasterCard(アメリカ)などが挙げられます。

そのほかのAI技術

 第三次AIブーム以前のルールベースや探索アルゴリズムなど、機械学習以外の様々なAI技術も広く実用化されています。具体的には知識処理技術やプランニング技術、マッチング技術などです。

 知識処理技術は古くからあるAI技術です。セマンティックWebやLOD(Linked Open Data)といった活動を通じてボトムアップに知識が整備されつつあります。

 宅配業者の配送ルート計画や、ロボットの複雑な動作の実行では、プランニング技術が活用されています。

 マッチング技術は、複数の集合間で互いの要素を組み合わせる問題で、制限事項や優先度といった制約を満たす組み合わせを候補として洗い出し、ここから満足度などの評価関数を最大にする組み合わせを選択する意思決定処理です。婚活や人材のマッチング、ネットコマースでの商品やサービスの推薦するシステムとして普及しています。

 なお、機械学習の学習手法にはいろいろありますが、AI白書では次のように紹介しています。

学習の手法の関係(『AI白書2020』図2-2-9より)

AIビジネスの現状と今後を知る上で、マストな1冊

 『AI白書2020』は、人工知能(AI)の導入・ビジネス化に必要な情報をまとめた本格的な白書として、ベストセラーとなった『AI白書』シリーズの最新版です。中島秀之氏(札幌市立大学理事長・学長)、松尾豊氏(東京大学大学院工学系研究科教授)ら、AIを代表する第一線の研究者らが編集・執筆しており、この1冊でディープラーニングをはじめとするAI関連技術、利用動向、国内外の関連施策、最新トピックスをほぼすべて把握することができます。

 また、一般社団法人日本ディープラーニング協会推薦図書として、G検定にも最適です。AIはDX(デジタルトランスフォーメーション)のための重要な技術とされています。「2025年の崖」の克服が課題となる今、ぜひお手にとっていただきたい1冊です。

【書籍概要】

タイトル:『AI白書2020』
発売日:2020 年3月2 日
編:独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会
発行:株式会社角川アスキー総合研究所
発売:株式会社KADOKAWA
ISBN:978-4-04-911034-0
定価:本体 3,800円+税
版型:A4判 536ページ 2色刷(冒頭のみ4色)
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