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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第547回

会社を2つに分離する英断をしたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2020年01月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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コンシューマー向けと
エンタープライズ向けで分社化

 その打って出る戦略が、2014年10月6日に発表されたHPの分割である。一口で言ってしまえば、既存のIPG(Image and Printing Group)とPSG(Personal Systems Group)はそのまま残し、EG(Enterprise Group)とES(Enterprise Services)は新会社であるHPE(Hewlett-Packard Enterprise)に移動した形だ。

 もちろんこれはあくまでも方針の発表であり、実際の分社化は翌2015年11月になった(日本ではこれに先駆け、2015年8月に分社化が行われた)。この分社化の目的は、意思決定の迅速化を図るためのものというのがWhitman氏の説明である。

 これまでも繰り返されてきた話だが、会社規模が大きくなると、どうしても複数の階層にまたがって多くの人間が介在することになるから、意思決定に時間を要することになる。

 また、エンタープライズ向けとコンシューマー向けではまったくデマンドもニーズも異なるから、これを同一の尺度で判断するのも難しい。であれば、分割して別々の会社にした方がより迅速に意思決定もできるし、会社全体としてもフォーカスを絞りやすくなる、ということだ。

 もっともこの発表直後の反応は、あまりかぐわしくないものだった。というのは、直接の競合でもあるDellは、ストレージメーカーであるEMCとの協業の度合いを深めており、どこかのタイミングで合併すると見込まれていた(実際には2016年9月に買収が完了する)。

 一般論的にはワンストップですべてのソリューションが提供される、と言う方が聞こえが良いわけで、HPとHPEを分離したらむしろワンストップでソリューションが提供できなくなるのでは? という見方をされたわけだ。

 また、これまでHP Labsという形でまとめて運営されてきた研究開発を今後はどうするのか? HPとして残るPCあるいはプリンター部門は引き続き競争力を保っていけるのか? といった疑問も呈された。

 ただ市場はおおむね好意的であった。グラフは2014年10月~2016年12月までの株価(株式分割と配当の分を加味した、調整済の終値)を書き出したものであるが、細かい変動はあるものの、株式分割を発表した直後はむしろ上がり基調になっていることがわかる。

2014年10月~2016年12月までの株価

 そこから緩やかに株価が下がっていくのは業績を反映して、という面もあるだろう。ただ2016年に入ると順調に株価が上がって行っており、おおむねこの会社分割は正解だったと判断された。

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