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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第541回

AlphaからIntegrityサーバーへ移行したHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年12月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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OpenVMSの初ブートに成功
Integrityサーバーへの移行が完了

 この後も数多の艱難辛苦を乗り越えつつ、2003年1月31日にHP i2000上でOpenVMSの初ブートに成功する。

HP i2000上でのOpenVMSの初ブートのシーン。VMSと書かれたブーツが乗ってるのは、Bootstrapに引っ掛けた洒落だと思う。左のノート上ではターミナルエミュレーターが動作しており、HP i2000のコンソールとして稼働していた模様だ

 この段階はまだ最低限というかOSの基本的な部分が稼働したに過ぎないが、それでも基本的な部分の移植に無事成功したということでもある。

 2003年に6月には評価版リリースの1つ目であるOpenVMS V8.0が完成。同年12月には評価版リリース2つ目のOpenVMS V8.1がリリースされ、2004年2月には1台のSuperdomeの上で4つ(HP-UX、Linux、Windows、OpenVMS V8.2)が同時に稼働するというデモも行われている。

 この時のV8.2はまだ完成版ではなく、これは最終的に2005年1月に完成。1月末に正式リリースされ、これでOpenVMSのIntegrityへの移行が完了した形になる。もちろんこれに並行してHPはAlphaServerも引き続き販売していた。

 AlphaServerの新規販売が終了したのは2007年4月のことで、2005年のOpenVMS V8.2のリリースから2年あまりが移行期間として充てられた。

 この後の話もまとめて書くと、2006年9月にVersion 8.3、2010年6月にVersion 8.4がリリースされるが、その後2014年にHPはVMSに関わる一切の資産をVSI(VMS Software, Inc.)に移転する。

 これは2013年末にHPが「2020年まででOpenVMSのビジネスを終了する」と発表したことに起因する。これをうけて、もともとDECでVMSの開発に携わり、その後COMPAQを経てHPにいた開発者が独立してVSIを設立。ここがVMSに関わるビジネス一式を引き取った。

 2015年にはPoulson(Itanium 9500シリーズ)ベースのIntegrityに対応したVersion 8.4-1H1をリリース、2016年にはItanium向けの最終リリースとなるV8.4-2をリリースした。

 VSIはこの後x86-64への移植を進めており、最初のVersionであるV9.0は今年中にリリース予定だが、現時点ではまだEAK(Early Access Kit)が提供されている段階で、製品出荷まではもう少しかかりそうである。

 もっともこのあたりはOpenVMS 8.0~8.2によく似ており、V9.0は特定の顧客およびパートナーが、アプリケーションをx86-64ベースOpenVMSに移植するためのテストベッドというか開発プラットフォームという扱い。

 続くV9.1も、製品クオリティではあるものの、いくつかの重要なコンポーネントはまだ開発/テスト段階にあるため、Pre-Production Release扱いであり、V9.2で完全な製品版になる予定だそうだ。

 ちなみに2014年にHPからVISに移管されたのはソフトウェア資産だけで、ビジネスそのものは引き続きHP(と、分社後のHPE)が保持していたが、HPEはまず2018年に古いOpenVMSのライセンス販売を終了。2019年6月にはVSEの開発したOpenVMSの販売も終了している。

 これを受けて2019年9月にHPEのOpenVMSに関わるすべてのビジネスをVSIが買収、今後はHPEと無関係にVSIがOpenVMSを提供できることになっている。そうなるとハードウェアはなにが対応するのか気になるところで、現状はHP/HPEの製品が対象だが、今後は他のメーカーの機種にも対応するのかもしれない。

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