このページの本文へ

Rapyuta Roboticsと日本MSが技術協力

倉庫自動化を簡単に実現するクラウドロボティクス基盤「rapyuta.io」

2019年05月29日 07時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 Rapyuta Roboticsと日本マイクロソフトは2019年5月27日、Microsoft Azure上で動作するクラウドロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io」の開発で技術協力することを発表した。物流、製造、流通など幅広い業種でrapyuta.ioの利用拡大を図るとする。

「rapyuta.io」はAzureのIaaS上に構築されている

 Rapyuta Roboticsが開発するrapyuta.ioとはどのようなものか。同社 代表取締役CEOのGajan Mohanarajah氏、同社 Head of Robotics Platform Businessの森 亮氏に話をきいた。

異なる種類のロボットをつなぐクラウド

 Rapyuta Roboticsは、ロボットのインターネットを作る「RoboEarthプロジェクト」(2009-2014)のスピンオフとして2014年に創業したベンチャー。東京に本社を構える。同社が開発するクラウドロボティクスプラットフォームrapyuta.ioは,2018年6月にクローズドベータ版の提供を開始し、2019年3月にGA(一般提供)になった。現在、国内企業を中心に約50社に利用されている。

 rapyuta.ioは、自律移動ロボット(AMR)や自動フォークリフト、ロボットアームなど、異なる種類の産業用ロボットをクラウドから一括管理して、協調作業やロボットナビゲーション、アプリケーションの配布などを可能にするプラットフォームだ。ロボットをクラウドから管理するための「Device Management」、異種ロボット間でのメッセージングや、同じアプリケーションを異種ロボットで動作させるためにクロスプラットフォームコンパイルなどを行う「Unified Runtime」、Unified Runtimeから配布するアプリケーションを登録する「Catalog」、ドラッグ&ドロップでロボティクス向けアプリケーションを開発できる「Composition Tool」で構成される。

「rapyuta.io」

 Rapyuta RoboticsのMohanarajah CEOは、「現在のロボティクスは、90年代の携帯電話のような段階です。当時のケータイは、各社がハードウェアを独自設計し、その機種でしか動かない専用アプリがインストールされていました。ロボティクスは今まさにその状態です」と説明。rapyuta.ioは、現在のスマートフォンのように、マーケットプレイスから各社が開発したアプリケーションをインストールでき、異なるメーカーの機種であってもアプリケーションが共通に動く世界をロボティクスで実現するために開発したという。サービス名はMohanarajah氏の好きなジブリ映画に由来する。

Rapyuta Robotics 代表取締役CEOのGajan Mohanarajah氏

rapyuta.ioが実現するクラウドロボティクスとは

 「一般的に“クラウドロボティクス”というと、ロボットの頭脳をクラウドにつないで賢くするアプローチのことですが、rapyuta.ioはもう一歩、クラウドの世界に踏み込んでいます」とMohanarajah氏。

 rapyuta.ioでは、Device Managementによってロボットを抽象化し、あたかも仮想マシン(VM)のようにクラウドから管理して、リモートでメンテナンスやパフォーマンス監視を行う。これにより、例えば、複数のロボットで作業する際に、各ロボットの位置やバッテリーの状態によって自動でタスクを振り分けるといった仕組みを作ることが可能だ。

 さらに、Unified Runtimeがコンテナテクノロジーを使ってロボットのアプリケーションレイヤーも抽象化する。例えばGitHubからコードをUnified Runtimeに取り込むと、ARMのロボットでもIntelのロボットでも動作するようにDocker化して、各々のロボットに配置する。

 ロボティクスアプリケーションのマーケットプレイスCatalogには、「画像認識AIで物体を把握してロボットアームでつかむ」といったような産業用ロボットでよく使われる機能が、あらかじめコンポーネントとして用意されている。今後、サードパーティーのアプリケーションを増やしていきたいという。

Rapyuta Robotics Head of Robotics Platform Businessの森 亮氏

日本郵便が物流センターに導入

 日本郵便は、宅配便(ゆうパック)の物流センター(地域区分局)にrapyuta.ioを導入した。地域区分局では、集荷した宅配物を集荷トラックから降ろし、配送先の地域ごとに区分して配達トラックに載せる作業を行っている。これまで、宅配物をカゴ車で作業部屋に運び込み、ベルトコンベアにのせて区分し、再びカゴ車にのせて運び出すという一連の作業を、すべて人が担っていた。

 ここに、カゴ車からベルトコンベアへ荷物を移動するロボットアーム、カゴ車を自律走行させる倉庫ロボットを導入した。2つの異種ロボットはrapyuta.ioを介して連携する。日本郵便はまた、画像認識AIで荷物の形状を認識してつかむロボットアーム用のアプリケーションをrapyuta.io上で開発した。rapyuta.ioが用意しているコンポーネントを活用したことで、約3カ月でアプリケーションが開発できたという。

GitHubやAzure DevOpsでロボットアプリ開発、日本MSと協働

 rapyuta.ioはAzureのIaaS上に構築されている。今回、Rapyuta Roboticsは日本マイクロソフトとrapyuta.ioの推進で連携することを発表した。日本マイクロソフトはスタートアップ支援の一環として、クラウドやAI分野での技術協力、アプリケーション開発、プロモーション、海外のロボットベンダーやソフトウェアベンダーとのビジネスマッチングなどで協力する。

 特にアプリケーション開発においては、rapyuta.io上のアプリケーションとAzureのAIサービスとの連携や、Azureの各種サービスをパッケージ化したロボティクスアプリケーションの開発などを予定している。また、GitHubやAzure DevOpsを使ってrapyuta.io上のアプリケーションを作成・編集できるようにするといったサービス連携も視野に入れる。

■関連サイト

カテゴリートップへ