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「顧客企業がクラウドへと向かう流れを変えるつもりはない」と幹部が語る背景

転換期を迎えたHPE、その戦略で重要なHPE Pointnextとは何か

2018年12月12日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 サーバー、ストレージなどの“ハコ(=ハードウェア)”を主力事業分野としてきたHewlett Packard Enterprise(HPE)が、大きな転換期を迎えている。「クラウドへと向かう流れを変えるつもりはない。クラウドはすばらしいものであり、使えるところでは使うべきだ」と語るのは、同社のテクノロジーサービス事業部門であるHPE Pointnextの幹部だ。もちろんこの発言は、企業ITの次なるステージにおいてリードを取れるという確固たる自信に裏打ちされたもののようだ。

ネリCEO、大規模クラウド向けハードウェア事業は「われわれのビジネスではない」

前任のメグ・ホイットマン氏に代わり、今年2月からHPEのCEOを務めるアントニオ・ネリ(Antonio Neri)氏

 11月末にスペイン・マドリードで開催した同社カンファレンス「HPE Discover Madrid 2018」において、HPE CEOのアントニオ・ネリ氏は「インテリジェントエッジの時代」を予言した。「データのほとんどがエッジで生成され、クラウドやデータセンターではなくエッジ上で処理される」時代が到来するのであり、そのために「HPEではエッジをトランスフォームする(革新する)技術に投資している」とネリ氏は語る。

 そして「Tier 1」や「ハイパースケーラー」と呼ばれる超大規模なパブリッククラウド事業者向けのハードウェア市場については「われわれのビジネスではない」と一蹴した。

 HPEがTier 1ビジネスからの撤退を明らかにしたのは、2017年秋のことだ。その数カ月前には、Tier 1企業であるMicrosoftからのサーバー受注の減少がHPEの業績に影響を与えたことが明らかになっていた。当初はHPEが設計/製造するハードウェア製品を提供していたが、次第にTier 1企業自身で設計をするようになり、最終的には「HPEは彼らの設計どおりに製品を製造するだけになった」。ネリ氏は、こうしたTier 1向けビジネスは「利益はほとんどなくブレークイーブン、あるいはマイナスのことすらあった」と明かす。

 それからおよそ1年が経過した現在、HPEでは「技術革新を行い、それをソリューションとして顧客に届けること」「価値を生むこと」に投資していく戦略をとっていると、ネリ氏は語る。

ハイブリッド環境の「正しい組み合わせ」を実現するHPE Pointnext

 HPE Pointnext(ポイントネクスト)は、「ハイブリッドIT」や「インテリジェントエッジ」といった同社の戦略を顧客に届ける役割を担う、コンサルティングとサービスの事業部門だ。2万5000人規模のグローバル組織であるこのPointnextでマーケティング担当VPを務めるフリン・マロイ氏は、クラウドとオンプレミスに対するHPEのスタンスを次のように説明する。

HPE Pointnextのマーケティング担当バイスプレジデント、フリン・マロイ(Flynn Maloy)氏

 「クラウド事業者ならば“すべてがクラウドになる”と言うだろうし、既存のハードウェアベンダーなら“いや、オンプレミスのほうが重要だ”と反論するだろう。それではHPEの立場はどうか。HPEの考えは“クラウドとオンプレミスの両方が重要だ”というものだ。それも複数のパブリッククラウド、プライベートクラウド、そしてオンプレミスなどを組み合わせたハイブリッド環境こそが重要である」(マロイ氏)

 一口にハイブリッドと言っても、顧客によって「正しい組み合わせ(Right Mix)」のあり方や比率は異なる。その正しい組み合わせを顧客にアドバイスし、設計や実装を支援するのがPointnextの役割だ。そのために、AWSのインテグレーションを得意とするCloud Technology Partners(CTP)、Azureを得意とするRedPixieを買収し、パブリッククラウドのノウハウを持つコンサルタントを2000人規模で揃えている。「われわれには、顧客がどこで何を使うべきかをアドバイスするツールと知識がある」(マロイ氏)。

 顧客のクラウドマイグレーション(クラウド移行)だけでなく、移行後はクラウドコストの管理も支援する。ここではマルチクラウドの使用量やコストを可視化するツール「HPE OneSphere」も提供している。「クラウドを恐れることはない――これがわれわれのメッセージだ」とマロイ氏は語った。

 マロイ氏は、英Virgin Groupの銀行であるVirgin MoneyのPointnext活用事例を紹介した。Virgin Moneyでは、Pointnextの支援をうけてすべてのシステムをAWSにマイグレーションした。これは数百万ドル規模の大型プロジェクトになったが、ハードウェアの売上は一切なく、サービスのみを提供した。そしてその後、あらためてオンプレミスのシステムが必要になった際に、HPEのハードウェアを導入したという。マロイ氏は「信頼できるアドバイザーとして、『正しい組み合わせ』を提案し続けた結果だ」と語る。

クラウドに対するHPEのスタンスは“UNIX/Win-tel”と同じ

 本稿冒頭で取り上げたコメントのとおり、マロイ氏はクラウドを「使えるところでは使うべきだ」と考えている。同時に、プライバシーデータなどに関する法規制などの理由から、オンプレミスがなくなることはないとも考えている。だからこそ「正しい組み合わせ」を重要視し、顧客にアドバイスしているのだ。ちなみにCEOのネリ氏は基調講演で、「(Pointnextのような)アドバイスサービスを利用しないパブリッククラウド採用の90%が失敗する」という数字を紹介した。

 率直な疑問として「既存のハードウェア事業が縮小してもよいのか?」と質問をぶつけてみたところ、マロイ氏は好むと好まざるとにかかわらずそうなるだろうと認めたうえで、「その流れを変えようとは思わない」と語った。「顧客がそれを求めているからだ。もっとも重要なのは顧客のニーズであり、われわれはそれに応える」と強調するマロイ氏は、およそ15年前のHPが、独自OSの「HP-UX」でUNIX事業を展開しながら、“Win-tel”(Windows+Intelアーキテクチャ、つまりx86サーバー)をプッシュしたときの動きになぞらえた。

 「当時は日本のパートナーからも、(UNIX事業より利益率の低いWin-telをプッシュするのは)自分で自分の首を絞めることになると言われた。だが、われわれは必然の流れに逆らうようなことはしない。われわれの答えは『将来に向かって進むこと』。そうした結果、HP-UX事業の売上は減った代わりに、Win-tel事業は大きく成長した。クラウドにおいても同じことをしていく」(マロイ氏)

 さらにハードウェア事業では、ネリ氏が述べているとおり、クラウド時代の先に訪れる「インテリジェントエッジの時代」でリードを取る戦略である。HPEは6月、今後4年間で40億ドルをインテリジェントエッジ領域に投資していく方針を明らかにしている。

クラウドの「体験」をオンプレミスでも実現していく

 クラウドについて、HPEが掲げるもうひとつのメッセージが「クラウドは『体験』である。『目的地』ではない」というものだ。柔軟で俊敏、スケーラブルなコンピューティング環境、「使ったぶんだけ」のコスト負担など、クラウドがもたらす価値の本質はその「体験」にこそ存在するというわけだ。

 HPEでは、クラウドライクなコンピューティング環境については「コンポーザブル」ビジョンに基づくハードウェアで実現する一方、従量課金型のコスト負担についてはPointnext事業部門が提供する「HPE GreenLake」で提供している。日本でも今年2月にローンチされた、従量課金型のオンプレミス利用モデルだ。

 「日本市場におけるGreenLakeは好調で、すでに世界2番目の市場になっている。日本の顧客はオンプレミス(のシステム)を採用しているケースが多く、クラウドのメリットがオンプレミスでも得られるならば、パブリッククラウドではなくオンプレミスを使い続けたいと考えているのではないか」(マロイ氏)

 さらに、現在のトレンドであるマルチクラウドでも大きなチャンスを感じているという。マロイ氏は、マルチクラウドには「社内における利用状況の可視化」「スキル人材の深刻な不足」「多様なクラウド環境の一元的な管理」という3つの課題があり、「HPEはその3つすべてに答えを持っている」と述べて、さらなる成長への自信を見せた。

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