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Windows Info 第173回

Build 2019で見えた「Windows Subsystem for Linux 2」の詳細

2019年05月19日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII編集部

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 前回に引き続き「WSL2」(Windows Subsystem for Linux 2)に関連する情報をお届けする。5月頭に開催されたBuild 2019では、WSL2に関連するセッションもあったようで、その動画が公開されている(https://mybuild.techcommunity.microsoft.com/sessions)。英語ではあるが、設定で字幕も表示できる(ただし、意味はかなりわかりにくい)。ここでは、セッションなどから見えた情報をまとめておく。

Hyper-Vを利用しているが
Homeエディションでも利用可能

 Windows 10のHomeエディションではHyper-Vは動作しない。しかし、WSL2はHyper-Vは使うものの専用環境であるため、Homeエディションでも利用可能になるようだ。

 ただし、問題もある。通常、Windowsで動作できる仮想マシンハイパーバイザーは1種類だけで、Hyper-Vが動作していると同居できない仮想マシンシステム(ハイパーバイザー)がある。

 すべてのハイパーバイザーがダメなのではなく、Hyper-V Platformに対応していれば、同居可能なものがある。たとえば、Virtual BoxのVer.6.0以降のものや、GoogleがAndroidエミュレーター用として配布しているAVD(Android Virtual Device)などだ。しかし、VMwareやIntel HXMは現時点では同居ができない。

 Homeエディションは、これまでHyper-Vをサポートしていなかったので、他のハイパーバイザーを使っている場合があった。ハードウェアとしての仮想マシン支援機能の有無と、Windowsのエディションは論理的には無関係なので、Hyper-Vが動作しないHomeエディションでも、他のハイパーバイザーは動作が可能(ただしBIOS設定などで仮想マシン支援機能をオンにする必要がある)だったからだ。

 そのような環境でWSL2を利用すると、これまで使えていたハイパーバイザーが使えなくなる可能性が出てくる。まだ配布は始まっていないものの、WSL2は、いずれWindows 10の機能アップデートで配布が始まる。このとき、WSL1が有効だとWSL2がインストールされてしまう可能性がある。となると、サードパーティのハイパーバイザーが起動しなくなる可能性が出てくるわけだ。特にVMWareやHAXMを利用している場合には要注意だ。

 また、Homeエディションの場合、WSL2ではHyper-Vを利用できても、それ以外の用途ではHyper-Vが使えない可能性もある。そうなると、Hyper-V PlatformでHyper-Vを利用するサードパーティの仮想マシンシステムがうまく動かない可能性さえある。

 現時点ではWSL2の配布はまだ始まっていないし、正式に導入されるとしても来年3月の「20H1」の可能性が高いので、サードパーティやユーザーが対応する時間はある。ケチケチせずに、WLS2のタイミングでHomeエディションにも普通にHyper-Vが利用できるようにしてくれるとありがたいのだが。

 また、Hyper-Vを使うものの、WSL2の最初の時点ではWSL2の内部からハードウェアを直接操作することはできないようだ。たとえば、AI関連では、NVIDIAのGPUをディープラーニング(ニューラルネットワークなど)の学習用に使う場合、ほとんどがLinuxで動作させている。

 Windowsでも不可能ではないのだが、そもそもGUIを持たないLinuxのシステムを作り、そこにDockerなどでディープラーニング用に構成したコンテナーを動かして、学習させるといった使い方が多い。このとき、Linuxのアプリケーション側からGPUへアクセス(もちろんNVIDIAが提供するデバイスドライバー経由ではある)が可能になっていなければならない。

 しかし、当初の時点では、WSL2でDockerは動作するものの、GPUやUSBデバイスへのアクセスは困難なようだ。マイクロソフトによれば、当面はシリアルおよびUSBアクセスが可能なWSL1を使ってほしいとのことだが、検討対象にはなっているようだ。

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