Deep Blueのシステムを応用して生まれた
質問に対して適切な回答を出すAI
Deep Blueはチェス専門のシステムであるが、この考え方(つまり力業で圧倒)を他にも応用できないか? ということで始まったプロジェクトがWatsonである。開発当初はDeepQAという名前だったそうだ。名前でわかるように、これは質問に対して適切な回答を出すシステムである。
2010年には商用サービスがスタートするが、もう少し目で見てわかるような成果が必要と判断されたのだろう。2011年には米国のクイズ番組であるJeopardy!に出場、Ken Jennings氏とBrad Rutter氏を相手に、見事打ち負かすことに成功している。
画像の出典は、“Wikipedia”
Watson自身の基本構成は、自然言語(つまり英語)での質問を受け取ると、その文脈を解釈して質問を理解し、次いで自身の持っているデータベースを検索して回答を返すという、いわゆるExpert Systemである。
ちなみにJeopardy!に出場した際のハードウェア構成は、トータル2800プロセッサー構成のPower System 750のクラスターで、処理性能はおおよそ80TFLOPS。データベースとして、100万冊の文献相当のテキストデータ(70GB)をデータベースとして搭載していたそうだ。
ただIBMはこのWatsonは、単にクイズ番組だけではなく、「人間の問いかけを理解し、その問いかけに基づいて大量のデータから目的の情報を検索し、その結果を返す」システムは、それこそコールセンターや医療での診断など非常に広範に利用できると判断した。
これは一種のExpert Systemであって、2012年あたりから急速に普及してきた、いわゆるDeep LearningやMachine LearningベースのAIとは動作原理も使われ方もまったく異なる(*2)とは言え、広義にはAIに分類されるサービスである。
実際IBM自身も、厳密にはこれをCognitive SolutionあるいはCognitive Computingという呼び方をしているが、ラフな説明では人口知性(AI)と称することが少なくないし、そもそもAIそのものの幅が極めて広いから、これはこれで通じている感じだ。
2015年まではこのCognitive Solution(Watson絡みの売上)はGlobal Technology Serviceに分類されていたが、2016年にこれを切り出したというのは、それだけ市場に成長の余地があるとの判断であろう。
そのわりに成長がゆっくりなのは、それこそDeep Learning/Machine Learningベースのいわゆる「AI」が急速にWatsonのマーケットを追い上げていることが理由の1つとして挙げられよう。
(*2) 「違う」と言われそうだが、それこそ第二次AIブームの際に議論されていた、大量のルールをあらかじめ登録しておき、そのルールに従って判断するExpert Systemの方がまだ近い。
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