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RINK×ASCII HealthTech 細胞・再生医療先端企業最前線 ― 第3回

細胞のみから成る立体的な細胞構造体をヒトへ移植し、機能不全になった組織・臓器を再生

細胞版3Dプリンタで臓器を創る「サイフューズ」

2018年11月12日 06時30分更新

文● 北島幹雄/ASCII STARTUP

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再生・細胞医療の産業化拠点として、再生・細胞医療事業に関わる機関が相互に連携・協力して産業化を加速させているRINK(Regenerative medicine & Cell therapy industrialization network of Kanagawa;かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク)。日本・神奈川県発で細胞の加工・培養・保管・供給という一連のバリューチェーン構築・産業化を狙う、イノベーション拠点にかかわる先端テクノロジー企業を紹介する。

人工材料を用いることなく
細胞のみで立体的な組織を作製する細胞版3Dプリンタを開発

 サイフューズは、細胞のみから成る立体的な細胞構造体をヒトへ移植することで、病気やケガで機能不全になった組織・臓器等を再生させ、多くの患者さまに貢献することを目指す再生医療ベンチャーだ。

 創業者となる中山功一教授(現:佐賀大学医学部臓器再生医工学講座)が、細胞が本来有する力に着目。人工材料を用いることなく細胞のみで組織や臓器を作製することができるのではないかと着想し、研究開発を進め、2010年にサイフューズを設立した。

 「革新的な三次元細胞積層技術の実用化を通じて医療の飛躍的な進歩に貢献する」という企業理念のもと、多面的に事業を展開している。

サイフューズのプラットフォーム技術

 現在、再生医療パイプライン(骨軟骨、血管、末梢神経等の臨床開発シーズ)について、1日も早く再生医療製品を患者さまへ届けられるよう、早期の再生医療等製品の承認取得・実用化を目指して開発パートナー(各大学・研究機関及び連携企業など)とともに共同開発を進めている。

 新薬開発現場においては、新薬の肝障害リスクを予測する肝毒性評価の精度不足という課題に対する有効なツールの開発が求められている。同社の基盤技術により作製された肝臓構造体を使うことで、将来の開発効率が大幅に向上されるのではないかという期待も集まっている。

細胞版3Dプリンタ「Regenova」

 サイフューズが開発した細胞版の3Dプリンタ「Regenova」(レジェノバ)(製造:澁谷工業(株))は、人工の足場材料(生体吸収性の高い高分子など)を活用することなく細胞だけを積み重ねて立体的な組織を作製する革新的な技術を搭載している。

 人間の体は細胞からできているため、その細胞を立体的に組み合わせることで組織・臓器を作製している。具体的には、細胞自らの凝集力で団子状の細胞の塊「スフェロイド」を作製。それを華道の剣山のような土台に積んで固定することで、細胞同士が融合するのを待ちながら細胞だけで立体的な組織をつくり上げていく、世界初の取り組みとなる。

 ビジネス面では、再生医療と創薬支援の2つの領域をメインターゲットとして研究開発及び技術開発を進めている。

 再生医療領域においては、1.損傷が軟骨及び軟骨下骨まで進行し、骨軟骨の同時再生を必要とする患者をターゲットとした骨軟骨再生、2.血液透析においてシャントトラブルを抱える患者をターゲットとした血管再生、3.神経損傷から四肢の機能回復を必要とする患者をターゲットとした神経再生の開発を推進。

 創薬支援領域においては、基盤技術を通じて作製された細胞構造体を用いた創薬支援用ツールの開発を進めている。

 再生医療市場は、海外では市場の急速な拡大が進んでおり、経済産業省によれば、全世界で2020年は1.0兆円、2030年に12兆円、日本国内でも、2020年で950億円、2030年には1兆円と今後大幅な急成長が見込まれているが、細胞のみから創出された立体的な再生医療等製品はまだ存在していない。

 サイフューズの開発パイプラインは、医療現場のアンメットニーズに基づいており、細胞のみで作製された立体的な細胞構造体の移植は、従来の治療法よりも安全性および優位性が期待できる新しい治療選択肢の1つともなりうると期待されている。

細胞製の人工血管

 サイフューズは、現在研究を進めている開発パイプラインを製品化するため引き続き各研究機関との開発を進めるとともに、事業化に向けたパートナリングを進め、再生医療等製品承認取得へ向けた臨床開発および立体組織製造技術の実用化を加速させていくという。

 代表取締役の秋枝静香氏は「サイフューズは患者さまファーストの揺るぎない信念を持ちつつ、今後、上市や上場を目指していくにあたり、できる限り多くの方々に我々の存在を知っていただき、サポーターやファンを増やしていく活動を継続していきます。このような活動を通じて、ものづくりへの想い・情熱を共有する多くのパートナーとともに、病気やケガで苦しんでいる患者さまにとって新たな希望となるようなベンチャーに成長することを目指してまいります」と述べる。

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