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RINK×ASCII HealthTech 細胞・再生医療先端企業最前線 ― 第6回

ひも状三次元組織「細胞ファイバ」で医療、食糧生産、環境等の分野にイノベーションを起こす

糸のような生きた細胞で医療や食糧生産を変える「セルファイバ」

2019年01月21日 06時30分更新

文● 北島幹雄/ASCII STARTUP

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再生・細胞医療の産業化拠点として、再生・細胞医療事業に関わる機関が相互に連携・協力し産業化を加速させているRINK(Regenerative medicine & Cell therapy industrialization network of Kanagawa;かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク)。日本・神奈川県発で細胞の加工・培養・保管・供給という一連のバリューチェーン構築・産業化を狙う、イノベーション拠点にかかわる先端テクノロジー企業を紹介する。

株化細胞、初代培養細胞、微生物などのファイバ化に成功
細胞技術を産業利用するための量産技術を開発中

 再生医療、創薬など、さまざまな分野において、生体と同様の機能を培養細胞で再現・模倣することが求められている。

 とくに細胞は平面ではなく三次元的に組織化することで、高度な機能発現が期待されるが、一般的な三次元培養技術は球状の細胞塊であり、大きくなると内部の細胞が死んでしまうなどの問題がある。この問題を回避する方法の1つとして、東京大学生産技術研究所 竹内昌治研究室で開発されたのが、ひも状三次元組織「細胞ファイバ」だ。

 細胞ファイバは細胞をエンジニアリングの領域で扱うための基本技術として開発された。細胞密度や直径がメートル規模に渡って均一であり、生きた細胞をまるで糸のように扱えるという。セルファイバは、このプラットフォーム技術を利用して、医療、食糧生産、環境等の分野にイノベーションを起こそうとしているベンチャーだ。

 細胞ファイバは、ハイドロゲルの中空チューブ内に細胞およびECM(; Extracellular matrix、細胞外マトリクスと呼ばれる非細胞性の構造成分)を内包させたひも状の構造体。ハイドロゲルの殻により細胞を保護しながら培養できるうえ、細胞塊が大きくなりすぎることがないため、長期間の維持が可能だという。

 また、任意のECMを入れられるため、三次元培養が難しいものも扱える。さらに、細胞だけでなく微生物などもファイバにすることができ、食品やエネルギー分野への応用も可能だと同社は考えている。

 これまでに、株化細胞、初代培養細胞、微生物など数十種類に関してファイバ化することに成功。一部の細胞・微生物では困難だった長期培養を実現している。細胞技術を産業利用するための量産技術は現在開発中だ。

 ビジネス面では、再生医療と創薬の2領域をメインターゲットとして研究開発および技術開発を進めている。企業としてのフェーズは、シード(外部資金調達前)の段階だ。

 再生医療領域においては、I型糖尿病・肝不全・心不全を最初の対象疾患と位置付け、独自の組織保存技術を利用して移植用組織を大量生産し活用する。

 創薬研究領域においては、解凍してすみやかに使用可能な凍結ヒト三次元組織片を提供。創薬コストの低減ニーズに加え、動物愛護の観点からも三次元組織の需要は高まっている。実験に合わせてさまざまなアレンジも可能としている。

 代表取締役社長の安達亜希氏は「今後製品化にあたっては、ファイバ内の細胞の品質評価が必要になってくるが、その際には画像解析などIT技術を駆使することが必要になると考えている」と述べる。

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