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さくらじまハウスで聞いたサービス作りに必要なもの

BASEえふしん、LINE和田、ビットスター若狭が語る「サービス作りと運用」

2018年08月20日 10時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 2018年7月14日に鹿児島の桜島で開催された「さくらじまハウス 2018」では、サービス作りと運用について語るパネルが行なわれた。BASEやLINEといった都内のWeb企業に、北海道のSIerであるビットスターが加わり、鹿児島のエンジニアがいろいろ聞くというユニークな立て付けのパネルだった。

会社内で技術をリードする3人が語るサービス作り

 後半のパネル「あのサービスの作り方!技術を生かす秘密のレシピ!マインドから文化、サービスの裏側まで全部話します」は、サービスと技術がテーマ。さくらインターネットとともにイベントを主催するリリー代表取締役CEOの野崎 弘幸さんがモデレーターを務めつつ、BASE CTO 藤川 真一(えふしん)さん、LINEの和田 充史さん、ビットスター 取締役COO 若狭 敏樹さんの3人と語った。

 まずは自己紹介。BASEのえふしんさんは技術をリードするCTOという役割ではあるが、プロダクト部門のリーダーでもある。「CTO業はメンバーに任せ、プロダクト作りや採用で日々忙殺されている」とコメントしており、採用に関わることが多いという。

BASE CTOの藤川真一さん

 鹿児島出身のLINE和田さんは、スタートアップをいくつか立ち上げてきた後、近年はLINEで京都や福岡でエンジニア組織を立ち上げてきた。「マネジメントしているのは150人いかないくらいの人数で、すべてエンジニア。えふしんさんと同じく採用の比率が高く、社内の組織作りをやっている」とのことだ。

 北海道から来たビットスターの若狭さんは技術職からはじめ、今はCOOとして経営に関わりつつ、エンジニア組織を率いる。「お二方と同じく最近は採用メインになっている。技術職が快適に働ける環境作りを考えている」とのことだ。

インターネットの価値を具体的に提供する「サービス」

 最初のテーマは「サービスとはなにか?」という抽象的なテーマ。これに対してえふしんさんは「インターネットを通じて提供できる価値を実現するITシステムと人の融合」と定義する。インターネットがなくても生活できると考える世代が、いつの間にかインターネットがないと生活できないという世代に移行した現在、インターネットで生活を変えていく仕組みやビジネスがサービスだという。

 LINE入社以前はサービスの立ち上げなどを経験してきた和田さんはお金という観点で「時間に依存しない稼ぎ方をできるものがサービスだと捉えている」と語る。人月換算ではない形で収益を得て、それを分配しつつ、次のサービスの投資に回していくという仕組みがサービス型のビジネスだという。

LINE 京都開発室 室長/LINE Fukuoka 開発センター 副センター長 和田 充史さん

 若狭さんは経営者の視点で和田さんの意見に賛成しつつ、プログラミング教室を手がけている立場から「社会的な意義」について語る。「子どもたちは目の前の困った人たちのためにものを作る。多くはお母さんのためなんですが、そういった誰かのためという視点も忘れてはいけないと思う」と語る。

「広告収入>サーバー代」の方程式で「勝ったな」と

 続いて、サービスが誕生した背景を聞く。えふしんさんは、Twitterクライアント「モバツイ」を生み出した理由について「最初は『ついかっとなってやった』というやつです」とコメントし、会場を苦笑させる。「初期のTwitterはサービスも落ちるし、バグも多いし、APIのデータ型は変わるし、ひどいサービスだった(笑)。それでもユーザーはめげないし、熱量がすごくて面白かった」と当時を振り変えるえふしんさんが書いたのは、文字数のスペースを送信可能な分量に自動調整してくれるプログラム。そこから歩きながらツイートできるガラケー用のモバツイに発展していったという。

 モバツイはユーザーもかなり増えたけど、インフラ面で限界を迎えてしまった。「ずっと家のサーバーをやっていたけど、最後はルーターがいっぱいになってしまった。どうにもならなくて、AWSに移行した」(えふしんさん)という経緯だ。とはいえ、ランニングコストもかかるようになったので、広告収入を得ようと一番上にバナーを貼ったところ、一晩でAWSの料金以上の収益を得ることができた。「このシンプルな方程式が見えた段階で、これは勝ったなと。AdSenseの収益を上回らないようにサーバーの利用料を調整すれば永遠にスケールできると思った」とえふしんさんは振り返る。

 和田さんの「一人でやってたんですか?」という質問に対し、えふしんさんは「一人でやってました。技術イシューはブログに書いて、はてブ経由でみんなからコメントをもらってました」と答える。GitHubがなかった時代にこういったソーシャル開発をやっていたのはびっくりだ。いち早く導入したAWSに関しても「人のブログを読んで見よう見まねでやったら、もうギーク扱いですよ(笑)」とコメントする。

「サービスの失敗」はいつも根に持っている

 そんなえふしんさんのブログを見ながら「チッとしてた」というのが和田さんだった。受託開発からスタートした和田さんのエンジニア人生だが、「これではお客様からもらう額以上には収入は上がらないので、もっと時間に依存せずにはねるものをやりたいな」ということで作ったのがサービス。スキルのマッチングやCI系のサービスも手がけたが、すぐに終了の憂き目にあったという。

 LINE入社後はチーム作りに携わっていたので、サービス開発はしていないが、「LINEバイト」などは初期から携わってきた。「自分でやったサービスで一番当たったソーシャルゲームでも2000ユーザーくらい。でも、LINEでは一日40万人くらいアクティブユーザーが増える。それ見た瞬間に今までのオレの努力はなんだったんだと切ない感じになった」と和田さんは語る。LINEの場合は、ボードメンバーでサービスの概要は固め、試作を作った段階で、エンジニアとデザイナがサービスをもんでいくという。

 過去に2つのゲームを当てた同僚といっしょに開発をしているえふしんさんは、「一発目当てても二発目はなかなか難しい。モバツイのような再現性がない」とコメント。LINE内で組織開発をしている和田さんに「自らサービスを成功させたいとか、葛藤ないですか?」と聞くと、和田さんは「つねに葛藤はあるし、経営者として失敗についてはいつも根に持ってます(笑)」と語る。

えふしんさんの話を興味深く聞く和田さん

 受託開発からスタートしたビットスター自体は、今までサービスを提供してきたことはなく、サービスを支える側に徹していたという。「もともとプログラマーの集団だったのですが、システムの裏側を支える役割を担うようになると、人数が少ないのに、インフラをおもりをし始めたり、24時間365日監視を始めたりした」(若狭さん)とのことで、サービスの栄枯盛衰は見てきたという。

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