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業界を知り、業界をつなぐX-Tech JAWS第12回

現場にあったIoTをこつこつチャレンジ

フジテックの情シスが語る「3度目の正直」になったIoTプロジェクト

2018年08月08日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 第4回となったX-Tech JAWSの3番手はフジテック 情報システム部の小庵寺良剛さん。製造業で業務システムを担当していた小庵寺さんがIoTにチャレンジし、現場のニーズにマッチするモノを作り上げるまでの試行錯誤が今回のセッションだ。

情シスがIoTを扱う際に感じた「3つの課題」

 「武闘派CIO」としていられる友岡賢二氏がCIOを務めていることでも知られるフジテックは、今年で創業70周年を迎える昇降機メーカー。「セカエレ」の広告の通り、グローバルを舞台にエレベーター・エスカレーターの事業を展開しており、製造から据え付け、保守・運用までをワンストップで提供している。

 そんなフジテックの情報システム部に所属する小庵寺良剛さんは、新卒でフジテックに入社し、受注管理や購買管理、中国の生産管理などのシステムをCOBOLやDelphiで作ってきたベテラン。現在は、部門の企画や運用管理、DBサーバーの管理、開発基盤の導入を手がけており、昨今流行のIoTに挑戦してみたという流れだ。

フジテック 情報システム部の小庵寺良剛さん

 情シスの小庵寺さんから見たIoTは、「今までの業務システムに比べて技術範囲が広い」「情シスなので機器制御など自社製品の知識が欠如している」「やったことのないので費用対効果がわからない」など3つの課題があったという。こうした課題をどのように解決するかが、今回のプロジェクトの出発点だ。

情シスから見たIoTの難しさ

 まず技術範囲が広いという課題に関しては、専門知識を持ったパートナーと連携することに。とはいえ、全部外注するとノウハウが自社に残らないという課題があったため、成果物のソースコードを提供してもらうという条件で外注した。また、自社製品に関しての知識が少ないという課題に関しては、本番の機器を直接触るのではなく、あくまで外部からできることを試すことにした。そして、費用対効果に関してはやはりわからないので、規模の拡大を前提にスモールスタートでプロジェクトを開始したという。

「作ったもの」と「欲しいもの」に大きな乖離が

 実際にIoT化したのはメンテナンスツールである「治具」だ。最初の実験では、温度、湿度、照度、加速度、磁力、音など10種類を収集できるTexasInsturmentsのセンサーを購入。Bluetooth経由でLinux搭載の小型マシンOpenBlocksにデータを送り、SORACOM Funnel経由でAmazon Kinesisにデータを送信した。「転送先のURLや認証情報などを画面から指定すれば、データをクラウドに上げるところまで可能」(小庵寺さん)とのことで、設定も容易だったという。あとはAmazon Firehose経由でデータをRedshiftに溜め、BIツールのTableauで分析できるようにした。構築はクラスメソッドに依頼したが、「カスタマストーリーセンサーズ」というテンプレートを使うことで、安価でシステム構築を実現できたという。

クラスメソッドと進めた実証実験の第一弾

 さっそく現場に持っていこうと思ったが、検証用だったため、センサーの精度がイマイチだった。また、温度、湿度、気圧、照度は現場で取得したいというニーズがそもそも低かった。「現場に聞いたところ、電圧や振動の方が欲しいんだけどと言われた(笑)」とのことで、「はい、次に行ってみよう~」ということになった。

 再起をかけた2度目の実証実験では電圧を監視する「メモリハイコーダー」という機器のリモート監視にチャレンジした。今までは異常を検知したら、メモリハイコーダーを設置しに行き、後日回収するというオンサイトの対応が必要だったが、今回はこれをリモート監視することにした。

電圧を監視するメモリハイコーダーをリモート監視

 フジテックが利用していたHIOKI社製のメモリハイコーダーは、データ保存用のメモリスロットが用意されているため、そこに東芝のFlashAirを差し込み、WiFi経由でデータ収集できるようにしたという。メモリハイコーダーの電圧情報は、CSVファイルとしてOpenBlocksに送られ、JSON形式に変換される。あとはSORACOM FunnelからFirehose、S3、安価なDynamoDBを経由し、システムを担当したKYOSOの「IOT.Kyoto」で可視化した。

 きれいな電圧の波形データが取得できたため、意気揚々と現場に持ち込んだ小庵寺さんだが、現場からは「テストではミリ秒単位で取得していたけど、現場からはマイクロ秒単位のデータが欲しい」と言われてしまった。しかし、こうなるとデータ量が1000倍になってしまい、データベース格納のためのCSVからJSONへの変換処理がかかることがわかった。「最長で数時間かかる。それなら現場行った方が早いと言われてしまった」と小庵寺さんも苦笑い。加えて、データもCSVではなく、バイナリの波形データが一般的とのことで、ついに3回目にチャレンジした。

社内ブログを見た海外メンバーからも問い合わせが!

 3回目の実証実験は電圧を波形データで取得するという点が2回目と異なる。CVSからJSONへの変換処理も必要ないため、OpenBlocksをやめてLTEルーターを採用し、Luaスクリプトでデータ転送することにした。今回はSORACOM Funnelが使えないため、SORACOM BeamでLambda経由でS3にアップ。S3のデータをGoogleDriveに定期的に同期し、波形データそのものをHIOKIの波形ビューアで見る。「つい先週やったのですが、転送時間は大幅に短縮されました。電圧をバイナリの波形データで取得するので、現場でも違和感なく使ってもらえそう」(小庵寺さん)とのことで、検証メンバーからも高評価。現在は現場出動待ちというステータスとのこと。やったね!

3回目の実証実験ではLTEルーターを採用し、バイナリデータを波形ビューアで見る

 後日談として面白いかったのは、ニーズがないと思っていた温度・湿度の取得に関して、海外法人から問い合わせが来たこと。「実証実験の広報活動を社内ブログに書いていたら、海外の方がたまたま目にして、連絡が来た。海外のVIPなお客様のサビ対策に使いたいという」(小庵寺さん)とのことで、現場まで遠いため、温度や湿度をリモートで監視できないか、現在センサーの選定や仕様検討などを実施しているという。

 最後、小庵寺さんは現場を巻き込むコツとして、「小さく始めて動くモノを見せてしまえば、具体的な会話が始まる」という点を指摘する。小さく始めてもクラウドだったらスケールするし、知識やリソースがなくても、パートナーと連携することでプロジェクトは動かせるという。「最後、精神論になるのもなんですが、あきらめずに何度も繰り返すことが重要だなと思っています」とは、失敗を繰り返しつつ、あきらめずに3度目の正直を実現した小庵寺さんだからこそ言える台詞だろう。

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