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かつてないほどに「針金と空白」を深掘りしたDXロケーション話

エクイニクス、「日本一AWSに近い場所」について濃い目に語る

2017年11月08日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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NW X Security-JAWSの冒頭、レイヤー1/2の担当としてAWS Direct Aceessとの接続ポイントである「DXロケーション」について解説したのがエクイニクス・ジャパンの内田武志さん。カスタマールーターとAWSへの入り口であるDXルーターをつなぐ物理ネットワークを説明し、インフラ事業者としてのこだわりをアピールした。

AWS Direct Connectのロケーションとは?

 「日本一AWSに近い場所。独自に進化したエクイニクス・ジャパンの現状」というタイトルで、レイヤー1/2の物理話を披露したエクイニクス・ジャパンの内田武志さん。「記念すべきNW-JAWSとSecurity-JAWSの合同イベントで、伝説に残るくらい地味な話をします」と一声目に会場から笑う声が漏れる。

エクイニクス・ジャパンの内田武志さん

 内田さんの所属するエクイニクスは世界48都市、世界188拠点でデータセンターを展開しているグローバル事業者。59期連続成長を遂げるイケイケの業績で、2016年の売り上げは36億ドル(約4000億円)を超える。特に顧客同士を相互接続するインターコネクトを得意としており、現在23万以上の相互接続を実現。顧客は9500社にのぼり、99.99999%という高い稼働率を誇る。日本でもビットアイルとの統合を経て、11のデータセンターを展開しており、社員数も600名を超えるという。

 エクイニクスとAWSとの関係で行くと、やはりユーザー拠点とAWSを直接つなぐ「AWS Direct Connect」の話になる。「かつてないほどに『針金と空白』にディープダイブしていこうと思う」(内田さん)ということで、DX(Dicrect Connect)ロケーションの物理層・データリンク層の話を進める。

 しかも話はDXロケーション全般と言うより、ユーザー拠点からの回線を収容するカスタマールーターと、AWSへの入り口となるDXルーターにつなげる間のネットワークの話。しかし、こうしたネットワークでもデータセンター事業者としての細やかなこだわりが詰まっているという。

かつてないほどに『針金と空白』にディープダイブ。しかも内容はDXロケーション内のネットワークの話

DXを使いやすくするため、データセンターを直結した

 まずAWS東京リージョンの場合、DXロケーションでの物理接続はCross Connect(構内接続)、Campus Cross Connect(キャンパス内接続)、Metro Connect(データセンター間接続)の3種類がある。ケーブルはシングルモードの光ファイバーを使っており、ギガビットの1000BASE-LXや10Gbpsの10GBASE-LRで伝送される。

 さて、Direct Connectをオーダーすると、指示書であるLOA-CFA(Letter of Authorization and Connecting Facility Assignment)が発行されるので、エクイニクスのエンジニアはそれに従ってラック間を配線することになる。具体的には、データセンターに配線済みの基幹の光ファイバをパッチパネルで切り替えつつ、ユーザーのラックまで配線する。「エクイニクスを使うと3ヶ月かかるみたいな都市伝説がありますが、標準納期としてはCross ConnectやCampus Cross Connectで24時間以内、データセンター間の接続(Metro Connect)でも10営業日ほどで作業が完了します」(内田さん)とのことで、作業も非常にスピーディだ。また、BGPルーターなどのネットワーク機器は、顧客やインテグレーターの持ち込みや通信事業者の指定機種の利用が可能で、エクイニクス自体もレンタルで提供している。

3ヶ月かかるのは都市伝説で実際の作業は非常にスピーディ

 都内のDXロケーションは住所も公開されており、東品川にあるエクイニクスのデータセンター「TY2」内のケージで囲まれたラック群にある。TY2ではAmazon、Facebook、Google、IBM、国内の多くのWeb事業者ともピアリングしているため、「プレミアムなロケーション」とも言われている。

 しかし、人気の高いTY2はプレミアム化してしまっているため、いつまでも在庫が続くわけではない。そこでエクイニクスは数km程度離れたビットアイルのデータセンター「TY6」「TY7」とTY2を光ファイバーで直結してしまった。そのため、TY2を物理的にTY6/7/8に延伸したようなイメージなので、ネットワーク機器を一切介さずに接続できる。パッチパネル経由でユーザーのラックとDXロケーションを直接接続できるので、こちらも日本一DXに近い場所と名乗れるという。

TY2は旧ビットアイルのTY6と7を物理的に延伸しているため、圧倒的な低遅延

 エクイニクスは湾岸エリア以外にも複数のデータセンターを保有しているが、これらの間もダークファイバーで結んでいる。データセンターには光伝送装置が用意されており、DWDM(高密度光波長多重)で伝送するため、マイクロ秒単位の遅延でファイバあたり最大8Tbps程度の大容量データを伝送できるという。

生のDirect Connectのよさをお客様にお届けする

 さて、Direct Connectのアカウントオーナーシップとしては、ユーザー企業が全部を持つ場合と、物理的な通信回線をキャリアが持ち、ユーザー企業がVLANのインターフェイスのみ提供される場合の2つあるという。とはいえ、メニューとしては1Gbpsと10Gbpsのインターフェイスだけなので、選択肢があまりない。

 そのため、エクイニクスでは「Sub1G via Direct Partner」というL2の帯域提供サービスがあり、1Gbps以下の帯域をVLANごとに切って、DX Hosted Connectionと1つのAWSアカウントに紐付けることができる。「一番安い50Mbpsであれば、年間2万5000円というお小遣いレベルでDirect Connectが実現します」(内田さん)。

1Gbps単位で帯域を区切れる「Sub1G via Direct Partner」

 しかも、L2ベースなので、クラウド間の相互接続を実現できるCloud ExchnageのWebポータルからソフトウェア的に帯域をプロビジョニングできる。利用開始や停止の手続きがも自動化されているので、「最大10営業日かかっていたDirect Connectの設定が15分で済んでしまう。PoCやオンプレミスからクラウドへのマイグレーションなどでも、一時的にDirect Connectを使う場合も安価に利用できる」(内田さん)とのことだ。

 地味ながら低いレイヤーにこだわるエクイニクス。内田さんは「針金に対する細やかなノウハウをグローバルレベルで持っているのが弊社の強み。われわれは『生のDirect Connect』と呼んでますが、デフォルトのスペックや価格、使いやすさを落とさないよう、極力シンプルにパフォーマンスを落とさないようにお客様に提供しています。クラウドの利用を推進できるよう、がんばっていきたいと思います」と語り、セッションを終えた。「一度聞けばお腹いっぱい。でも1回は聞いておくと得な話です」(内田さん)という冒頭のコメント通り、お得な話であった。

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