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クラウドネイティブ時代を告げる「AWS Summit 2018」 第1回

「Amazon EFS」東京リージョン提供やスタートアップ拠点「AWS Loft Tokyo」などの新発表も

KDDI、ソニー銀行、SOMPO HDなどが語った「AWS Summit」基調講演

2018年05月31日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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SOMPOホールディングス:「破壊的な新規事業の創出」に向けたデジタル変革

 SOMPOホールディングス グループCDO 常務執行役員の楢崎浩一氏は、「保険業界は非常に保守的な業界だが、実はいま大変なことになっている」と切り出した。「“Digital Disruption”、デジタル化で完膚なきまでに業界が破壊されそうになっている、そういう『最大の危機感』がある」(楢崎氏)。

SOMPOホールディングス グループCDO 常務執行役員の楢崎浩一氏

 楢崎氏は「破壊」の例をいくつか挙げた。たとえば自動車保険は、カーシェアリングや自動運転車、MaaS(Mobility-as-a-Service)などが普及していけば、根本的に形を変えざるを得なくなる。火災保険や生命保険も、IoTやウェアラブルデバイスによるセンシングデータとAIの予測分析技術によって、事後の弁済や保障よりも事前の健康増進などが重視されるサービスへと変わっていく。一方で、サイバーセキュリティやドローン保険など、新たに生まれるリスクに対応した保険が求められるようになる。

 このような危機的な変化に対応していくために、SOMPOホールディングスでは東京、シリコンバレー、イスラエルの3カ所に「SOMPO Digital Lab」と呼ぶデジタル戦略の推進拠点を設置してきた。その役割は「既存事業のデジタル化支援」と同時に「破壊的な新規事業の創出」を行うというものだ。この拠点をベースに、昨年度は42件のトライアルや実証実験を実施し、そのうち10件は実サービス化(またはそれに向け開発中)されたという。

多数のトライアル/実証実験から生まれ実サービス化された「Driving!」

 トライアルや実証実験において、同社デジタル戦略部では「Digital Sandbox」と呼ぶPOC実験環境をAWS上で構築している。試行錯誤の迅速な繰り返しを行う基盤として「AWSが不可欠だった」(楢崎氏)。AWSを採用した理由については「スピード、コストパフォーマンス、スケーラビリティ、強固なセキュリティ」の4点を挙げる。

 実サービス化したもののひとつとして、楢崎氏はドライブレコーダーを活用した安全運転支援サービス「Driving!」を紹介した。通信機能搭載のドライブレコーダーとクラウドサービスを連携させて、車間アラートなどによる運転中のサポート、ALSOKとも連携した事故発生時の対応サポート、「運転診断レポート」による運転後のセルフメンテナンスまで幅広いサービスを提供するものだ。

 このクラウドサービスの実装にAWSを活用し、ドライブレコーダーから収集した走行データや事故映像データなどの保存、分析、レポート化などを行っている。「(Driving!は)AWSなくしてはできなかったデプロイメントであり、ありがたいと思っている」(楢崎氏)。

Driving!クラウドサービスのアーキテクチャ図

 このほか1日目基調講演では、さまざまな企業に商用ディープラーニングプラットフォームを提供するABEJA、自動車部品メーカーから“モビリティ/MaaSメーカー”への転換を図るデンソーも登壇し、それぞれのAWS活用について紹介した。

ABEJA 代表取締役社長 CEO兼CTOの岡田陽介氏

デンソー MaaS開発部 部長 兼デジタルイノベーション室 室長の成迫剛志氏

“クラウドジャーニー”をビジネス視点からサポートするサービス/ツール群

 AWSJ長崎氏は、AWSでは12年間、数百万の顧客とともに培ってきた“クラウドジャーニー(クラウドへの道のり)”に対する学びに基づいて、新たなサービスを次々に生み出していることを紹介した。1日目基調講演では特に、エンタープライズのクラウドジャーニーにおいて課題となりがちなアーキテクチャの最適化やコスト算定、クラウド人材の育成、移行プロジェクト支援といった、経営/ビジネス視点の濃いサービス/ツール群が紹介された。

AWSのイノベーションスピードは加速し続けている。2017年は1430件の新機能がリリースされた

 企業のクラウドジャーニーは、大きく「既存システムのクラウド移行(リフト&シフト)」と、「新規システム(クラウドネイティブアプリ)の構築」の2つに分けられる。

 「既存システムの移行」においては、たとえばアーキテクチャのベストプラクティスをガイドラインとして提供する「AWS Well-Architected Framework」、AWS採用時の投資効果を財務効果(ハード/ソフトなど)だけでなく非財務効果(生産性向上、ダウンタイム低減など)まで含め算定支援する「AWS Cloud Economics」、顧客のAWS環境を自動分析してコストの最適化やパフォーマンス/セキュリティの向上などの視点から最適化を支援する「AWS Trusted Advisor」などのツールがある。

「AWS Cloud Economics」で実際に試算した結果、非財務効果でも大きな効果が出るという結果が複数の企業で得られたという

 また、クラウド知識を持ち組織横断的に対応できる企業内の“CoE(Center of Excellence)”人材育成のためのAWSトレーニング/認定のほか、業種別/技術分野別/AWSサービス別で体系化されたパートナー認定制度など、人的な側面での顧客支援策も紹介した。

 加えて、包括的な「AWS Migration Acceleration Program」も提供している。これは、クラウド移行プロジェクトの前段階で、テクノロジー面だけでなくビジネス面も加えた「6つの視点」からアセスメントを実施し、課題を洗い出すためのプログラムだと、長崎氏は説明した。

「AWS Migration Acceleration Program」ではテクノロジー/ビジネスの6つの視点からアセスメントを実施し、課題の所在を明確化する

 もう一方の「クラウドネイティブアプリの構築」については、マネージドサービスやサーバーレスの考え方によってビジネスによりフォーカスすることができ、リスクを取ったチャレンジも可能になるとして「今後の標準になっていくのではないか」と語った。

 「クラウドは新しいチャレンジを可能にする」「新しいチャレンジにAWSが手を貸せることは、とてもすばらしいことだと考えている」(長崎氏)

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