3歳児から使えるシンセ 「Blipbox」
3歳児から使える子供向けシンセと銘打ちながら、大人用シンセと同様、凶悪な音が出るというので話題だったPlaytime Engineeringの「Blipbox」。リズムマシン内蔵スピーカー一体型グルーヴシンセ。子供用monotribeみたいなものだ。
しかし、2EG、2LFOという結構な仕様で、複雑なモジュレーションもかけられるから、出音はかなりヤバい。こんな邪悪な音が出るというのに、映画やゲームのようなレーティングがかからないのだから、楽器は素晴らしい。
だいたい子供向けと言いつつ、大人に買わせるつもり満々だ。MIDI IN端子は付いているし、標準フォーンの出力もある。こんなものは、それなりの意図を持った大人しか使わない。
しかし、たとえば、これを買い与えられた子供が大人になり、ある日物置の奥から発見したとしよう。ちょっとアンプにつないで馬鹿でかい音で鳴らしたら、ぶっ飛ぶような音が出た。MIDIをつないで音源として使ってみたら、めちゃくちゃおもしろかった。そうしたことが全世界同時多発的に発生し、よせばいいのにまたマニアックな方向に進み過ぎて衰退の一途を辿ったシンセが再び勃興。みたいなストーリーも想定できる。
が、そんな想定がなくても、大人は勝手に使うのである。左右のレバーはいかにも子供向けっぽいが、microKORGのプロトタイプには、こんな感じのレバーが付いていたと聞いたことがある。大人だって、こういうものをギッタンバッコンするのは楽しいに違いない。そしていかにもオモチャっぽい外観は、使う人がいい感じで使えば、ステージ映えもするだろう。
予定されている価格は159ドル。さすがに安い。今年春に事前販売を開始し、夏には正式出荷の予定。
ポケットオシレーター新型「スピーク」「ノックアウト!」
ティーグ・カールソン設計のスピーカーをWi-Fi対応にしてモダナイズした「OD-11」やら、Baiduと共同開発したスマートスピーカー「H」やら、同ロボット型スマートスピーカー「R」やらを発表するなど、だんだん大人になって、デザインセンスの塊のようなスウェーデン人の本性を隠せない感じになってきた昨今のTeenage Engineering。
でも、去年話題だったグラフィックシーケンサーの「OP-Z」は、2017年夏発売と言いながら結局出なかったし、今回のNAMMでも何のアナウンスもなかったし、どうなるんだろうなあ、あれ。
と、そんなことを思いつつも、今年もTeenage Engineeringは定番ポケットオシレーターシリーズに新製品を2つ追加してきて、ちょっと安心。
「PO-33 K.O!」はサンプラー。音程を奏でるメロディーサンプルスロットが8つ、ワンショットで鳴らすドラムスロットが8つあり、内蔵マイクやライン入力の音をサンプリングした音をシーケンサーで演奏できる。サンプルメモリーは合計40秒まで。
「PO-35 speak」はボイスシンセサイザー。サンプルした音を、オートチューン 、ロボット、ボコーダーといった8つのボイスキャラクターに加工してシーケンサーで演奏。リズムマシンは「PO-32 tonic」と同じSONIC CHARGE社の音源で、同社のPC用ソフト「MICROTONIC」でmicrotonicドラムサウンドの入れ替えもできる。これは結構遊びがいがあるぞ。
これら2台と、去年発売されたドラムマシーンの「PO-32 Tonic」を合わせて、メタルシリーズと呼ぶそうだ。ちなみにPO-32が金、PO-33が銀、PO-35は銅。なぜかPO-34が飛ばされているのは気になるが、それはさておき金が高くて、銅が安いということもなく、すべて均一価格の89ドル。すでに公式サイトでの販売は始まっている。
さらに、PO-32 tonic、PO-33 K.O!、PO-35 speakの3台をセットにした豪華バンドルパックもある。プロケースとミニケーブルが3セットずつ付いて319ドル。
それにしてもOP-Zはどうなるんだろうなあ。次のNAMMには出るのだろうか。中国限定販売のRやHも、日本で売ってくれるといいなあ。そんなことを思いつつ、また来年!
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ