それでもやはり違うのは黒
有機ELディスプレイは画素が1つずつ発光するのに対し、液晶ディスプレイはバックライトによって画面を明るくしています。大きな違いは黒をどう作り出すかです。
簡単に言えば、液晶ディスプレイの場合は、黒いフィルタによって黒を再現しますが、有機ELディスプレイは消灯が黒です。
そのため、真っ暗な場所で最大光度にして比べると、iPhone Xの黒は真っ黒ですが、iPhone 8の黒は強力なバックライトの光を遮っていて、限りなく濃いグレーのような雰囲気にも見えてきます。
明るいところではさほど気にならなかったかもしれませんが、先行レビューの初日に飛行機でサンフランシスコから東京へ移動した筆者は、その発色以上に暗い機内でもキリリと真っ黒なiPhone Xのディスプレイが印象的でした。
ついつい、モノクロ写真を撮りたくなる
iPhone 8シリーズ、iPhone Xのカメラには、1200万画素の新しいセンサーとカラーフィルタが用意され、色やディテールの表現が向上し、また暗いところでの撮影に強くなったとAppleは説明しています。
iPhone Xを携えて長野で紅葉や苔を撮影してみると、確かに色や細かい構造を写し出す力が高まっており、また望遠レンズにも光学手ぶれ補正が入ったことで、積極的に望遠レンズで撮影するようにもなりました。
しかし、ディスプレイの黒の黒さに惹かれて、ここ数日はモノクロ写真ばっかり撮影しています。モノトーンで露出を落として撮影した写真をiPhone Xで見ると、なんとも重厚感が生まれ、写真がうまくなったような気分を味わうことができます。
せっかく暗所に強くなったというのに、昼でも夜でも露出を下げて、黒く塗りつぶす領域を拡げている始末。本当に罰当たりなものですが、もしiPhone Xを手にしたなら、モノクロ写真に挑戦してみてください。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
この連載の記事
-
第264回
スマホ
ライドシェアにシェアバイク、これからの都市交通に必要な真の乗り換え案内アプリとは? -
第263回
スマホ
Amazonが買収したスーパーマーケットで生じた変化 -
第262回
スマホ
日産「はたらくクルマ」でみたテクノロジーでの働き方改革 -
第261回
スマホ
WWDC19で感じたのは、体験をもとにアップルがサービスの整理整頓を進めているということ -
第260回
スマホ
LoTで、いかにして世界から探し物をゼロにできるか?:Tile CEOインタビュー -
第259回
スマホ
ファーウェイ問題で感じたテクノロジーと国家対立の憂鬱 -
第258回
スマホ
スマホでの注文が米国でのスタバの役割を変えた -
第257回
スマホ
10連休に試したい、ゆるやかなデジタルデトックス -
第256回
スマホ
人によって反応が異なるドコモの新料金プラン -
第255回
スマホ
「平成」と「令和」 新元号発表の瞬間の違い -
第254回
スマホ
Adobe Summitで語られたAdobe自身のビジネスや開発体制の変化 - この連載の一覧へ