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ジェームズ・ポンソルト監督にインタビュー

未来にプライバシーはない? 映画「ザ・サークル」が描くSNSの光と闇

2017年10月28日 15時00分更新

文● 八尋/ASCII

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映画「ザ・サークル」

 FacebookやTwitter、Instagramなど世界中で多くの人が利用しているSNS。もちろん私も利用しているが、ふと不安になることがある。特に何も考えずに電話番号を入力したり、写真と一緒に撮影場所もアップしたりしたときに、あれ、これ大丈夫か? と思うのだ。

 SNSの未来には、プライバシーがなくなるのではないか。そんなSNSの裏側の顔を題材にしたサスペンススリラー「ザ・サークル」が11月10日に公開される。デイヴ・エガーズ氏の同名小説を映画化した作品で、ジェームズ・ポンソルト氏がメガホンを取り、原作者のデイヴも脚本で参加。エマ・ワトソンを主演を務め、共演者には、トム・ハンクスや「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のジョン・ボイエガ、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のカレン・ギラン、「6才のボクが、大人になるまで。」のエラー・コルトレーン、「エイリアン2」のビル・パクストンなど豪華な面々が揃った。

主人公のメイ・ホランド役にエマ・ワトソンを起用。サークルのカリスマ経営者のベイリーをトム・ハンクスが演じる

ザ・サークルのあらすじ
 世界的にトップシェアを誇る超巨大SNS 企業「サークル」。誰もが憧れるこの最先端企業に採用された新入社員のメイはカリスマ経営者ベイリーの目に留まり、新サービスのモデルに大抜擢され、超小型最新カメラを通して自身の24時間をネット上に公開することに。瞬く間に一千万人を超えるフォロワーを獲得し、アイドル的存在になっていくが……。

メイには共感できるけど、悲しい

 今回、監督のジェームズ・ポンソルト氏に直接話を伺う機会があったので、「ザ・サークル」について色々聞いてみた。

ジェームズ・ポンソルト監督にインタビュー

ーーよろしくお願いします。「ザ・サークル」は、デイヴ・エガーズ氏の同名小説を監督が映画化されたとのことですが、最初に小説を読んでどう感じましたか?

2児の父親でもあるジェームズ監督。子供の成長していく先にプライバシーがなくなるかもしれないと思うと、悲しい気持ちになるという

ジェームズ・ポンソルト監督(以下、ジェームズ):最初読んだときは、メイが読み手、観客の代理のような存在だと思ったので、彼女に入り込んで、彼女の道のりに寄り添いながら旅をすることができました。

 彼女は物語の冒頭では原理主義者的なところがあって、何らかの形で世界に爪痕を残したいと考えています。そして、サークルに就職したことで、自分の目的意識を得るんです。サークルで過ごす時間の中で、彼女は間違った選択をしていき、権力を得て会社の顔として影響力を持ち始めます。僕らはその選択にフラストレーションを感じながら読み進めていきます。

 私的な人間関係を捨ててまで、全世界の人と分かち合おうとする彼女の姿に、なんでそれを犠牲にするのかわからないと感じた反面、共感できる部分もありなんだか悲しいなとも思いました。

 今私は2児の父親なのですが、僕の子供たちが大人になったとき、僕が子供のころから今まで当然のように享受してきたプライバシーがなくなるかもしれないなと思うと、悲しい気持ちになります。

シェアすることで幼馴染のマーサーと口論になるメイ

ーーサークルで働く人たちは、明るくいい人そうな人達ばかりですが、どこか不気味さを感じます。彼らから感じる不気味さというのは、意図されたものなのでしょうか。

最初は理想的な職場環境を喜ぶメイだったが……

ジェームズ:サークルで仕事をしている多くの人は、会社のミッションを信じていて、ポジティブな気持ちを持って臨んでいるんです。同じような原理主義的な思想を持っていて、ミッションを疑う気持ちがまったくない人達は、小説を読んだときになんだかカルト宗教のようだと感じたんです。サークルというのは会社なのかカルト宗教なのか、この境界線がぼやけているのが面白かったんです。

ーーメイは結局会社の人たちと同じ側になってしまいますが、最初は観客と同様サークルの人たちに不気味さを感じていて、その不気味さを唯一共有していたのがタイ・ラフィートだと思っています。監督が考える、この作品における彼の立ち位置を教えてください

ジェームズ:彼は、サークルのクリエイターとして、理想主義者としてユートピアのようなイメージを抱いてこの会社を作ったのだと思います。単純に人と人がつながりやすいシステムや、すべてが統合された利便性の高いシステムを作ろうとしていたのですが、会社がそのシステムをお金に換えることが目的となってしまい、その中で自分の意図していないものになってしまいます。

 彼は、そこに付随して生まれてきた権力が怖くなり現場から離れますが、強大な力となってしまったシステムはコントロールできなくなるということもわかっています。システムに対して愛情はあるけど責任は持てなくなっていて、それに対する恥じらいの気持ちと恐ろしい気持ちを持ち合わせています。邪悪なことをする親みたいな気持ちですね。

ーータイ・ラフィート役はジョン・ボイエガさんを起用されていますが、起用の理由を教えてください。

ストーリーでも重要な鍵を握るタイ・ラフィート

ジェームズ:もともと「アタック・ザ・ブロック」が好きで、彼と出会ったのは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」よりも前でした。彼は役者としてダイナミックで、火花が散るようなものを持ち合わせています。多分、タイ・ラフィートがおかしくなる前のサークルをつくりあげていたころと同じような大志を、彼も18~19歳のころに抱いていたのではないかと思い、お願いしました。

子供の誕生日パーティーをドローンが覗いていた

映画撮影では便利なドローンに不安を感じる出来事も

ーーもっとお話しを伺いたいのですが、時間がなくなってきました。最後に、監督はガジェットがお好きだとう話を伺ったのですが、今後楽しみにしているガジェットと、ザ・サークルのSNSのように裏を返せば危険なのではと思うガジェットを教えて下さい。

ジェームズ:車の自動運転は本当にワクワクしています。私はドライブが大好きなのですが、その反面、アメリカでは年に3万人くらいの方が自動車事故で命を落としています。2児の父親として、子供たちが運転するようになると思うと、ヒューマンエラーを除いた安全な車にはワクワクします。事故はなくならないかもしれないけど、リスクは小さくなると思うので、自動運転は大歓迎です。

 怖いなと思うのは、ドローンがどこでも飛んでいて窓の外をドローンが横切ったりすることです。子供の誕生日にパーティーをしていたのですが、その様子をドローンが見ていたことがあり、近所のドローンなのかも確認のしようがなく、顔のないドローンに心を乱された覚えがあります。ただ、映画では今までに撮れないような映像を撮影できるので、使い方次第ということなんですが。

1つのエンターテインメント作品として楽しんでほしい
でも、シェアする前に考えてみてほしい

ーーありがとうございました。では日本の映画ファンにメッセージをお願いします。

ジェームズ:この映画はプロパガンダではないし、人生こういう風に生きるべきだというメッセージを伝えるための映画でもなく、やっぱり1つのエンターテインメント作品として楽しんでもらいたいです。ただ、もしザ・サークルを観たのをきっかけに、なんでも割と何も考えずにシェアしている人であれば、なぜ自分はそこまで全部シェアしたいんだろうと考えるきっかけになればいいなと思います。

 また、個人的な人との関わり合いをスマホでしかできないのであれば、それはいいことなのかを自分に問いかけてみてほしいです。どうせなら家族や友人と直接つながっていたいし、時にはすべてをシェアしないというのはステキなことじゃないかなと思います。

 「ザ・サークル」は、11月10日にTOHOシネマズ 六本木ヒルズ他で全国ロードショー。SNSが好きな人も、多少危機感を感じている人も、エンターテイメント作品が好きな人も、ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。

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