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ASCII STARTUP 今週のイチオシ!第67回

失われた読書体験を取り戻せ!「全巻一冊 北斗の拳」の挑戦

2017年10月06日 07時00分更新

文● コヤマタカヒロ 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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 マンガ全巻を1冊のサイズに収録し、紙書籍のような感覚で読める電子本「全巻一冊 北斗の拳」の先行販売がクラウドファンディング「Kickstarter(日本版)」にて9月13日にスタートした。第1弾として収録されるのは今なお絶大な人気を誇る「北斗の拳(究極版)全18巻」(原作:武論尊、作画:原哲夫)だ。

 この「全巻一冊」を開発したのは大手メーカーのさまざまな製品開発、研究開発などを技術面でサポートするプログレス・テクノロジーズ株式会社だ。これまで受託開発を主に行なってきた中堅企業がコンシューマー向けのハードウェアを開発する理由はどこにあるのか。共同創業者でもあり、新規事業創出プロジェクトを担当する取締役の小西享氏に話をうかがった。

株式会社プログレス・テクノロジーズの小西享取締役

マンガを全巻収録したアツい“単体ハード”

全巻一冊「北斗の拳(究極版)全18巻」。現在開催中のCEATECでもブースで実物を展示している。電子書籍になかなか親しめない、古くからの漫画ファンはぜひ、一度実物をチェックしてもらいたい

 まずは簡単に「全巻一冊」について紹介しよう。「全巻一冊」は完全版コミックスサイズ(A5判)の電子書籍端末だ。

 一見すると分厚いコミックスのようなフォルムをしており、コミックスと同様のカバーもかかっている。開くとそこには見開きでマンガを表示できる電子ペーパーが2枚。コミックスを開いて読んでいるかのようにマンガが楽しめる。いわゆるタブレット端末や電子書籍端末と違うのは、汎用端末ではなく、決まったマンガだけを全巻収録した“単体ハード”であるということだ。

 「もともと、2005年の創業時から自社でプロダクトをやると決めていた。しかし、新しいものづくりにはヒト、モノ、カネがかかる。だから、技術派遣や受託開発を中心に行うことでエンジニアを集め、利益を立ててきた。そして2014年7月から自社ハードウェアの開発をスタート。いくつものアイデアや企画があったが、『全巻一冊』がこうして結実した」(小西氏)

 コミックスのように開くと2枚の電子ペーパーディスプレーが見開きで搭載されている。操作は非常にシンプルだ。左右のページの端にページ送り・巻送りボタンと、日本語/英語の切り替えボタンを配置するだけ。今では多くのデジタル機器に当たり前に搭載している通信接続機能などもない。充電式は採用せず、単4乾電池で1冊読み切るぶん駆動する。そして何よりすごいのが圧倒的なまでの表示画質だ。

 コンテンツを圧縮しない独自フォーマットを採用し、さらにそのコンテンツにチューニングを最適化することにより、米アマゾンのKindleなどと比べても圧倒的にきめ細かくきれいな描画を実現している。色の濃さ、鮮明さ(にじみのなさ)、残像も見えない点などは従来製品を凌駕している。「全巻一冊 北斗の拳」での販売予定価格は3万5000円(税別)。正規販売は2018年4月以降を目指している。

1兆5000億円の紙市場が狙える電子書籍とは何か?

 シンプルを極めたようなこの『全巻一冊』のアイデアだが、簡単に実現したわけではないという。

 もともとは、開発チームのメンバーが、とある受託開発で電子ペーパーの案件に関わったことがきっかけだ。せっかく知見を得た以上、それを活かせないかと考えていた。また、小西氏はその頃同時に、新聞社の知人からデジタルで何か面白いことができないかと相談を受けていたという。新聞を電子ペーパーで、とは考えたが、まだまだハードルは高い。では何か……と考えた時に見つかったのがマンガだった。

 「最初の気づきは新聞から。僕らはネットでニュースに触れるので新聞を見ない。しかし、新聞は現在でも年間4000万部以上発行されている。ここにアプローチできれば革命が起こせるかもしれないと。ただ、(現状の電子ペーパーは)四つ折りにもできないなど技術的に厳しい。新聞と同じような市場……と考えてマンガ、とくに電子書籍の市場を調べてピンときた」(小西氏)

新聞の部数推移(一般社団法人日本新聞協会)
2016年度の電子書籍市場規模のうち、コミックが前年度から340億円増加の1617億円(市場シェア82%)を占めるという(インプレス総合研究所『電子書籍ビジネス調査報告書2017』)

 電子書籍市場は2016年のデータでは約2000億を超えたところだ。しかし、本の市場は雑誌や書籍すべてを合わせると約1兆5000億円もある。小西氏はまだまだ残された可能性がそこにあると考えた。すぐに、自社プロダクトチーム内のメカのスペシャリストである坂松氏に連絡して試作を指示した。それが2016年の11月のことだ。

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