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スタートアップ事業戦略の攻めと守りを知財から知る

「宮崎のスタートアップのリアル~攻めと守りの事業戦略」イベントレポート

特集
STARTUP×知財戦略

提供: IP BASE/特許庁

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 2024年2月20日、宮崎県はスタートアップセミナー「宮崎のスタートアップのリアル~攻めと守りの事業戦略」を宮崎市の若草hutteにて開催した。セミナーでは、スタートアップが知財を活用してビジネスアイデアを守る方法をテーマに、弁理士法人IPX代表弁理士CEO押谷 昌宗氏による講演と、宮崎県で活躍するスタートアップと特許庁によるパネルディスカッションを展開した。

 宮崎県では、企業価値10億円以上のスタートアップを令和8年までに10社以上とすることを目標に掲げ、「みやざきスタートアップ創出・成長促進事業」として、各種セミナーやワークショップ、アクセラレーションプログラム等を開催している。令和5年度のアクセラレーションプログラムには、株式会社HATSUTORI、株式会社ベルコード、株式会社スーパーワームの3社を採択。令和6年度のプログラムは夏頃に公募する予定だ。

宮崎県 商工観光労働部 企業振興課 技術支援担当 前田裕和氏

スタートアップのビジネスアイデアを守る方法

 弁理士法人IPX代表弁理士CEO押谷 昌宗氏による講演「スタートアップのビジネスアイデアを守る方法」と題して、実際に起こったトラブル事例を挙げながら、知的財産の基礎知識と、ビジネスアイデアを守るいくつかの方法を紹介した。

弁理士法人IPX代表弁理士CEO押谷 昌宗氏

 最初にブランド名のトラブルとして、「ティラミスヒーロー」の事例を紹介。

ティラミスヒーローは2012年にシンガポールで設立し、翌2013年に日本に出店。一方で、2014年に設立した大阪の会社が「HERO'S」という類似の商品を発売し、表参道に店舗を出店して大々的に売り出されていたそうだ。その後、2018年にシンガポールの会社は商標を出願したところ、模倣者であるはずの大阪の会社が「ティラミスヒーロー」の名称やロゴの商標が先願されていたため登録できず。結果、本家の「ティラミスヒーロー」が「ティラミススター」にブランド名を変更することになってしまったという。

 最終的には、模倣者の商標登録は取り消しになり、本家の手に戻ったそうだが、こうしたトラブルは商売にとって大きな痛手だ。できるだけ早い段階でブランド名と会社名の商標を押さえておくことが望ましい。

 次に、知的財産の基礎知識として、特許権と意匠権、商標権の3つについて解説。 特許権は技術的アイデアを守る権利、意匠権は見た目を守る権利、商標権は商品に使う名称やロゴを守るための権利だ。特許は、新規性と進歩性を有していると判断されれば権利化が可能で、例えば、押し寿司やロバート秋山の梅宮辰夫Tシャツも特許として認められているそうだ。

 言い換えれば、新規性と進歩性があれば、技術的に高度である必要はなく、既存の技術の寄せ集めや、まだ実物が存在しないアイデアでも特許になりうる。やり方さえわかれば誰でも簡単にまねできるものほど特許で押さえておくことが大事だ。

 続いて、ビジネスアイデアを守る手法として、ビジネスモデル特許とUI特許について解説した。ビジネスモデル特許は、ビジネスモデルを実現するための仕組みを保護するもので、Amazonの1-Click特許が有名でVCも注目している特許だ。UI特許は、UIを実現するための技術を保護するもので、技術による制御がUIに現れるソフトウェアの場合は、UI特許を押さえておくことで模倣対策になる。

 AppleのiOSのSlide to Unlock機能は、背後の技術はUI特許、見た目は意匠権で二重に保護されているそうだ。2014年から長年争われたAppleとSamsungのSlide to Unlockに関する侵害訴訟では、Samsungの特許侵害が認められているが、損害賠償額の約9割は意匠権侵害によるものだったとのこと。

 ソフトウェアを保護する場合、機能やデザインの特性をうまく切り分けて特許権と意匠権で同時に権利化するのがポイントだ。

 意匠と商標を同時に保護する方法として、ニコンの一眼レフカメラの例を紹介。シャッター下の赤いマークを意匠と商標で登録している。意匠権と商標権は、権利の登録期間に違いがあり、意匠権は25年、商標は半永久的に更新可能だ。知名度のない商品は商標登録できないケースもあるので、先に意匠で押さえておき、認知度が高まってから商標に切り替える、手もあるそうだ。

 オープンイノベーションでの注意点として、相手側に情報を開示する前に自社の技術を特許出願しておくなどBackground IPを明確にして、共創相手との条件を整理し、さらなるオープンイノベーションの可能性など含めてよく検討することを提案した。

 最後に、シード/アーリー期にやっておきたい知財活動を紹介。シード期は、商標出願、弁理士探し、規定の整備、アーリー期は、コア特許/意匠の取得、クリアランス調査、教育と情報発信、と少ないリソースを効率的に配分して知財活動に取り組むことをアドバイスした。

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