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軽貨物版Uber「PickGo」が日本の物流を変える

ベンチャー発の独自物流サービスが名称を改めCtoC配送へ拡大

連載
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軽貨物の分野なら、Uber以上のものが日本でできる

Uber

 流通業界の構造を変えなくてはならない――CBcloudはミスマッチを改善すべく、物流のラストワンマイルを解決するプラットフォームとして「軽town」を2016年6月よりスタートした。そのお手本ともいうべき構造は、アメリカで拡大していたシェアリングサービスの「Uber」だ。

 Uberは既存のタクシーよりも3~4割安い料金で、ドライバーだけでなく利用者にも評価制度がある。ドライバー・利用者それぞれが「品質」を考えるようになり、どんどんよいサービスが形作れる。

 これを手本に「PickGo」は、軽貨物版のUberを目指す。軽貨物を運ぶドライバーに登録してもらい、荷主が登録した仕事を、ドライバーがピックアップしていく。荷主は利用料の10~15%程度を、プラットフォームである軽townに手数料として支払う。それでも、ドライバーに入る収入は「これまでの倍以上」となるという。松本氏は、実績として月額およそ70万円を稼ぐドライバーも出てきていると述べる。

 PickGoのポイントは、「マッチングのスピード」にあるという。たとえばビールをレストランや居酒屋に届ける、建築現場へ足りなくなった部品を届けるなど、ほとんどの場合は急いで荷物を届けることが求められている。従来は電話を駆使しドライバーを探すということをしていたが、空いているドライバーを見つけるまで電話をかけ続け、結果として30分以上の時間がかかっていた。その課題を、PickGoでは「15分以内に決まる」という実績で解決する。

 「配送が行なえないということが、荷主の最も大きなリスクだと考えている。そのため、配送ニーズができたときに15分以内でマッチングできるということで大きな評価をいただいている。荷主にはコストもリスクも下がって早く届けられるというメリットを、そしてドライバーには給与水準を上げ、限られた時間を有効に使えるというメリットを提供できる」(松本氏)

 軽town時の実績で、ドライバーからの声も温かなものが多いという。「いい案件が選べるという声が多いだけでなく、荷主から感謝の言葉やお褒めの言葉が『ログ』というかたちで残ることがうれしいと言われた」(松本氏)。このように受け入れられた秘訣として、松本氏は細かな言葉使いに「ドライバー用語」を使ったこともポイントだと述べる。「『分かる人が作っている』と思われるように、ドライバーなら当たり前に使う言葉をいれている。一方で、PickGoのスマホアプリは、スマホに慣れていない人にでも使えるようにしている」

画像提供:CBcloud

 PickGoでは、プラットフォーム上での直接マッチングによるコスト削減のほか迅速な配送マッチング、さらにアプリから現在位置と到着予想時間がわかるといった点も含めて、従来からの圧倒的なコストダウンが目指されている。

ドライバーを魅力ある仕事に変え、若い人たちの選択肢を増やす

 マッチングの速さとコスト削減が狙えるため、軽貨物の現状を変える可能性を見せるPickGoだが、松本氏の狙いはさらにその先にある。個人事業主によるドライバー市場の変革だ。

 PickGoは現在、登録ドライバーが月に200台のペースで増加、配送の依頼数も直近6ヵ月で10倍になるなど、順調な伸びを示している。88%の依頼も15分以内でマッチングする。また登録済みの個人事業主は1300名にのぼる。しかし、松本氏はまだまだドライバー数が足りないと考えているという。

 個人事業主のドライバーは、これまでであれば大手、中小の企業と契約することで仕事をもらうというスタイルも多かった。しかしほとんどの場合は大手企業に有利な契約になりがちで、このままでは魅力が少ない。大手企業と契約を結ぶと、ほかの仕事を受けられないリスクも大きい。これは、流通の担い手が減っている背景のひとつでもある。しかし、PickGoのような“中立的なマッチングシステム”が存在していれば、専業のドライバーではなくても「空いた時間を軽貨物運送に使う」という働き方もできるはずだと松本氏は考えている。

 実際、日本における軽貨物運送を行なうためには、陸運局に申請し、届出を出す必要がある。しかしこれは約30分程度で完了する作業で、自動車と運転免許、そして申請さえ完了していればできる仕事なのだ。ここには日本において規制で展開が遅れるUberなどのような、法的な問題もないという。「このようなサービスがあれば、空いた時間だけドライバーになるなど、軽貨物を運ぶドライバーの枠を大きく拡げられる」(松本氏)。

メンターとしてPickGoを支えるGoogle

 そしてPickGoを運営するCBCloudには、強力なパートナーが後ろを支えている。それはGoogleだ。同社はGoogle AdWordsにおけるスタートアップ支援プログラムとしてPickGoを支えているだけでなく、メンターとしてさまざまな支援を行なってきた。


 Google日本法人のマーケティングマネージャーである佐川大介氏は、2016年春に開催されたKDDI ∞(ムゲン)ラボのイベントで松本氏と出会い、メンターとなることを決めた。マップやドライバー募集など、グーグルの各種サービスとの親和性が高いことだけでなく、今後は収集したデータの機械学習処理や、ドライバーのための最適ルート検索、ウェブサイト/アプリのUI、UX支援など、多くの部分で実装支援をする予定とのことだ。

 サービスから1年を経て、多くの実績も積み上がった。最新データとしては、発注してからマッチング、そして積み荷が完了するまでの平均が「63分28秒」になった。荷主側もこの数値を評価している。「これまでは運べないリスクを考え、最大利用時を考えたトラック/ドライバー確保をしていた企業も、呼びたいときに呼ぶスタイルに変えることができ、コストメリットも出てくる」と松本氏は述べる。

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