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ガジェット楽器ブームから10年、今年のNAMMに見る成熟感

2017年02月18日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ロウソク駆動エフェクター「ZVEX Vibrophase」

サイトより

 続きましてロウソクの熱と光で駆動する突拍子もないエフェクターの話題です。メーカーの会議やプレゼンでは絶対に通らない発想でイカれたサウンドを世に問い続けるハンドメイドエフェクターブランド「ZVEX(ジーベックス)」は、今年も電池を使わない製品を展示していました。

 ティーキャンドルの熱によってスターリングエンジンを駆動し、そのパワーで一部を塗りつぶした透明ディスクを回転させ、ディスクを透過したキャンドルの光を4つのフォトセルに当て、その電力によって周期的な変調を起こす、実に画期的な位相系エフェクター!

 ……と、言葉にしてみるとややこしいですが、つまるところ豆電球を使わないUni-Vibeです。エンジンの回転がLFO、ディスクの遮光パターンがその波形に相当。周波数、すなわち変調速度は、駆動部に磁石を近づけディスクの回転速度を落とすことで調整します。

 このショーモデルは去年のNAMMにも出品されていましたが、こんな真鍮削り出しの、まるで工芸品のような機械式エフェクターを持ち歩くのは大変です。そこで今年はごく普通の9V仕様でまったく同じ音の出るストンプボックス型エフェクトペダル「Vibrophase」も登場。やったね! いわば火力駆動エフェクターのエミュレーター……というより昔からあるUni-Vibeのクローンだと思いますが、その文脈にこそ意味があるわけです。

 加えて今年は、キャンドルパワーによるエフェクトペダル火力発電器も展示されていた様子。来年もなにが出てくるのか楽しみです。それではエフェクター人類みんな大好きザッカリー・ベックス氏の素晴らしいプレゼンテーションをお楽しみください。

小型真空管アンプヘッドのBluGuitarからは「Blubox」

 今年はNutubeを使ったVOX MV50のデビューでもちきりでした。が、それより先に小型真空管「NANOTUBE」を使って小型アンプヘッド「AMP1」を開発していたBluGuitarからは、キャビネットエミュレーターの「Blubox」が発表されています。アンプヘッドのヘッドフォンやライン出力の音は平板で実に味気ないものですが、それをリアルなサウンドに変換するためのハコ。

サイトより

 このネーミング、ブランド設立者のThomas Blugさんの名前にちなんだもので、ウォズニアックとジョブスの電話かけ放題装置「Blue Box」は意識していないものと思われます。機能的に全然関係ありませんから。

 で、こちらのBluboxは、マーシャルやフェンダー、VOX、メサ・ブギーなど有名どころに自社キャビネットも含めて、16種のモデルをエミュレート。レイテンシーも1msに収まっているそうなので、弾いても気持ちいいはずです。

 ちなみに、BluGuitarの名を一躍有名にしたAMP1は、小型マルチエフェクターのサイズ、1.2kgの重量ながら、クラスDのパワーアンプで100Wの出力を発揮。プログラマブルで、MIDIコントローラーにも対応するプロ仕様のハイスペックなシステムです。

AMP1。こちらもサイトより

 そこに、より小さく安いMV50が登場したことで「ペダルボードアンプ」のカテゴリーも熱を帯びてきそうです。というか、ぜひ熱を帯びていただきたい。小型真空管アンプの元祖でもあるOrangeから、来年あたりなにか出てこないかなー。

もうひとつのNutube「VOX NBX150H」

 Nutubeを使ったVOXのヘッドアンプはもうひとつ出ていました。パワーは150W、2ch仕様でステージ向きのシステムでモデル名は「NBX150H」。去年もプロトタイプとして出品されていましたが、実際に製品化されるようです。メーカーからはいまのところなんの発表もありませんが、VOX製品のデモンストレーターでおなじみFreddy Demarco君が、各媒体の取材に応えて「soon to be released」と言っているので、もうじき製品として細かい仕様や価格が明らかになるのでしょう。期待して待ちましょう。

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