文系女子大生のKidsVentureレポート/工作のほうがプログラミングより難しい?
2016年11月09日 09時00分更新
代表講師と代表に聞く KidsVentureは、なぜ“キッズ”なのに“ベンチャー”なのか?
KidsVentureは、どんな人たちがどんな経緯で始めることになったのか? 子供向けのプログラミングスクールで“ベンチャー”という言葉をかかげる理由は? この日も子供たちにIchigoJamやpaprikaの指導をされていた代表講師の松田優一さん(株式会社ナチュラルスタイル 代表)、代表の高橋隆行さん(さくらインターネット株式会社 執行役員 セールスマーケティング本部長)のおふた方に、お話をうかがった。
いまの若者はコンピューターの中身を知らない。だから電子工作に触れるのがいいんじゃないか?
―― KidsVentureは、4つの会社が一緒にやっているということですけど、どういう関係なんですか?
松田 さくらインターネット、ビットスター、ナチュラルスタイル、jig.jpの4社ですが、当初は、2つの別な動きだったものが組み合わさったものです。僕のほうは、福井で2年半前からPCN(プログラミング・クラブ・ネットワーク)という活動をやっています。もともとは、私の長男が10歳になったときにやってみたのを「自分の子供だけにやっているのはもったいない」と、jig.jpの福野さんに相談したらすごく興味があると言われたんです。
―― 福野社長も福井だから。
松田 福野さんも子供のプログラミングについて地元でちょっとやっていた。それで、一緒にはじめたのがPCNという活動です。
(※福野さんの活動については「子供パソコン“IchigoJam”はどうやって生まれたか?」を参照のこと)
―― それって、最初からIchigoJamを使って?
松田 いや、まだなかったので、JavaScriptで独自のカリキュラムを準備している真っ最中に、IchigoJamを福野さんが作って持ってきたんですよ。「これで子供たちにプログラミングを伝えるのがいいんじゃないか」って、ポンと渡された。それで、電源を入れてみると昔なかしいBASICが起動するじゃないですか? 「ひょっとしたらこれでいいのかも?」と思い、自分の息子にその日やらせてみたらケラケラ笑いながら楽しんでいるんです。ということで、IchigoJamでどんどんやり出すことになったのが、2014年の夏です。
―― なるほどもう1つの高橋さんのほうは、どんなふうに始まったんですか?
高橋 2015年1月にIchigoJamをはじめて見たんですが、これいいなと思いました。ただ、その時はKidsVentureみたいな子供向けのものをやる気はありませんでした。ところが、それから2~3カ月して、北海道のビットスターの若狭さんから「今後、子供のプログラミングに関してなにかやりたい」と相談されました。
―― そのときにIchigoJamを選んだ理由というのは?
高橋 いまの若者ってハードウェアについて知らないですよね。スマートフォンの中身は知らないわけです。それで、電子工作がいいのではと考えていたときに、ちょうどIchigoJamがあった。私はもともとプログラミングはそれほど詳しくないのですが、ハードウェアとプログラミングは繋がっているということを教えたらいいのではないかと。
―― たしかに、今の若い人たちはアプリとか表面しか知らないので、中身はブラックボックスになっていると思います。
高橋 じゃあ、さっそくIchigoJam作っている福野さんのところに行こうとなった。jig.jpは、さくらインターネットのユーザーでもあるので取引があって、福野さんが福井高専で、さくらの社長が舞鶴高専で、高専同士で仲が良かったのもあります。それで、5月に福井に行った時に松田さんを紹介されて、じゃあこういう活動を一緒に広げて行こうということで始まったのがKidsVentureです。
―― なるほど松田さんや福野さんが福井でやられていた活動と、北海道の若狭さんからの呼びかけと高橋さんのお考えが、IchigoJamでうまく組み合わさったわけだ。
ここから10代で起業する子が出てきたら感涙もの
―― KidsVentureという名前を聞いたときに、なぜ“子供”で“ベンチャー”なんだと思ったんですよ。
高橋 それは、ベンチャースピリッツを持つ若者を増やしていきたいということです。子供が10代で起業してもいいわけです。うちの田中(さくらインターネットの田中邦裕社長)が10代で起業しています※1。
―― なんと見本があるんですね。
高橋 ただよく考えてみると、起業だけがすべてじゃないのではないか? ベンチャースピリッツ、熱意あふれる若者を輩出していきたいということです。
―― 子供向けのプログラミング教室って、理由として将来仕事に困らないようにとかなんじゃないですか? あるいは、子供を億万長者にしたいとか英才教育的なのもあるかもしれませんが。
松田 実際、子供を連れてくるお母さんたちは、子供が将来仕事に困らないようにという考えの方が多いです。
―― 子供のほうはどうなんですかね?
松田 子供は、とにかくロボットが好きとかゲームが好きという理由で来る子が多いです(笑)。
高橋 遊びが学びになるのです。それがいいんだと思っています。
―― プログラミング教室って、実際にやってみるとコードが学べるという本来の目的もさることながら、工夫してやり遂げるとか、仲間と出会ってアイデアを語りあえるようになったりとかいいですよね。それが、なんのことはないベンチャースピリットということかもしれません。
高橋 そうですね。ただ、KidsVentureは、塾とかではないので継続学習することは提供できません。なので、ゲームではなくて「次はこれできないのかな」っていう時にロボットだったり、さくらインターネットが提供している「IoTモジュール」ってIchigoJamと組み合わせても使えるので、サーバーにアクセスするものもできる。そこで、ネットワークの勉強ができるようになったりとステップアップができるということをしていきたいです。
―― そうやってステップアップして行った先に、本当に起業する子供が出てきたら面白いですね。
高橋 それはもう感涙しそうです。
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