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VRおじさんの「週刊VRかわら版」第25回

平面ディスプレーで培われたノウハウが活かせないVR

見えてきた「VRならでは」の体験、「ぶっ壊し」がいちジャンルとして成長する!?

2016年09月26日 09時00分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

HERO5 Black

 どもども!! VRおじさんことPANORAの広田です。今週はシルバーウィークでしたが、VR業界を見てみると、ドイツで20〜25日に開催しているカメラの展示会「photokina」に合わせて、360度カメラシステムによく使われているGoProが最新モデルの「Hero 5」を、ニコンが360度撮影可能なKeyMission 360」をそれぞれ発表。さらに、オートデスクがVRにも対応した建築業界向けクラウドサービス「Autodesk Live」を明らかにするなど、さまざまなニュースが飛び出しています。

 それでも先週に開催され、110ものVRタイトルが一堂に会した「東京ゲームショウ2016」の余韻は大きく残っていました。というわけで、今回はVRゲームで生きるものを壊すという楽しさについて考えていければと思います。

VRエンタテイメント施設「VR ZONE Project i Can」の知見が凝縮された講演より

「従来のゲームは三人称、VRゲームは一人称」

 「VRならではの表現」という話については、この連載でも何度か触れてきました。VRヘッドマウントディスプレーで難しいのは、映画やテレビ、スマートフォンなど枠付きの平面ディスプレーで培われてきたノウハウの多くが使えなくなってしまうところです。

 現状、何が課題でどういった解決の糸口があるのかは、お台場にあるVRエンタテイメント施設「VR ZONE Project i Can」の知見が凝縮された講演が非常にわかりやすいです。

 かいつまんでお伝えすると、「従来のゲームは三人称、VRゲームは一人称」という話がでてきます。従来は画面の中のキャラクターに感情移入できるようにカメラワークやシナリオを作りこんできましたが、VRゲームではプレイヤーが自分でやって感動できるように体験自体をつくりこむ必要がある。

 講演では、そうした考えを得るきっかけになったVRコンテンツとして、Oculus Riftのモーションコントローラー「Oculus Touch」を使う「ToyBox」というデモが取り上げられていました。これが何かというと、おもちゃ箱の中に入って、目の前にある積み木やパチンコなどの玩具を手に取り、投げつけたり壊したりとやりたいに放題できるという体験です。しかもネットワーク接続して顔と手だけのアバターを出現させて2人で会話しながら遊べる。

 そこには達成すべきゴールも、やり込み要素も特に存在しないわけで、とにかく一緒にたわいもない会話をしながら、手を使っておもちゃを好き放題できるというのが楽しい。



 先の講演では、VRならではの表現づくりについて、「そもそもVRはリアル体験の感動が得られることにみんな驚いているし、面白がっているし、可能性を感じているのです」として、「リアル体験じゃないと得られない感動をコンテンツの中心に据えてみては?」と締めていました。

 考えてみれば、人間は赤ん坊の頃から好奇心の塊ですよね。ゴミ箱を倒したり、ボックスからティッシュを全部抜いてみたり、コンセントに指を突っ込んでみたりと、自分の手を使って何かをして、それに対してリアクションがあると快感を得られる。そんな欲望が根底にあって、その感覚をバーチャル世界で強めてあげると、より「これは新しくて面白い!」となるのかもしれません。


D4Dとエニグマスフィアを遊んでみよう

 というわけで、今回の「ものを壊すという楽しさ」というテーマに基づいて、ここ数ヵ月で体験して面白かったVRコンテンツといえば、まずコロプラのHTC Vive向けゲーム「Dig 4 Destruction」(D4D)。すでにSteamにて、1180円で配信中です。

 ネットワーク対戦に対応したシューティングバトルゲームで、ボクセル(立方体)が積み上がったフィールドに4人が現れて、地中を手で掘り進んで埋まっている武器をゲットし、他のプレイヤーを撃破しまくって、5分間で倒した数が多い人が勝利という内容になります。

 PANORAのインタビュー記事でも書きましたが、D4Dは、まずハンドコントローラーで掘り進む(=ボクセルを壊す)際の音が気持ちいいうえ、自分の手で武器を拾ったり撃ったり投げたりできるという感覚もうまくできています。対戦フィールドに移動する前の待合室は、まさにToyBoxにインスパイアされたような場所で、和気藹々とボイスチャットしながら、テーブルや棚に散らばったものを手でいじくり倒せるのが楽しいです。



 もうひとつ、よむネコが開発中のVR脱出ゲーム「エニグマスフィア〜透明球の謎〜」も興味深いです。よむネコはASCII.jpにもVR系の記事で寄稿している新清士さんの会社で、同ゲームは2人が協力して、部屋の中に隠された透明球をすべて割ることで次のステージに進めるという内容になっています。

 対応するVRゴーグルはOculus Rift(+Oculus Touch)とHTC Viveで、いずれもモーションコントローラーを使って操作します。ここでもハンマー的なものを拾って、透明球に投げつけるとガシャーンと音を立てて割ることがまず気持ちいい。さらに「あそこに球がある!」や「私が手前側を壊すので奥をお願いします」といった具合に、ボイスチャットでのコミュニケーションも魅力を増してくれます。バーチャル空間で、ハイタッチができるのもポイントが高い。

 というわけで、スマートフォンで「ひっぱりアクション」がひとつのジャンルを築いたように、今後、VRでも「ぶっ壊し」というのが注目を集めていくでしょう。コミュニケーションの絡め方や、壊したときの気持ちよさなど、突き詰めるべき項目は多いので今後の研究に期待です。まだあまりVRにピンときていない人は、ぜひ紹介したソフトを体験してみてください。


著者近影

広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


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