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Oracle OpenWorld 2016でエリソンCTOがAmazonに宣戦布告

AWSのリードは終わる!第2世代インフラでIaaSに本腰を入れるオラクル

2016年09月20日 10時30分更新

文● 末岡洋子

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9月18日、米サンフランシスコで開幕した同社の年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」で、オラクルの共同創業者で経営執行役会長を務めるCTOのラリー・エリソン氏が、基調講演でクラウド戦略を語った。ここではIaaSとPaaSを中心にレポートする。

オラクルの共同創業者・経営執行役会長 CTOのラリー・エリソン氏

基調講演のフォーカスはIaaS分野

パブリッククラウドの中でもIaaSは巨大な設備投資を要求されることもあり、スケールビジネスだ。つまり、一部の事業者しか生き残れないだろうといわれており、グローバルではAmazon Web Services、Microsoft Azure、Googleの3つで勝負はついたと見る向きもある。だが、「Amazonのリードはもう終わる」と宣戦布告をするのがオラクルだ。

 オラクルと聞くとデータベースのベンダーと連想するかもしれないが、Oracleはクラウドカンパニーを標榜している。Open Worldの会場でも昨年に引き続き今年も、コーポレートカラーの赤字に“cloud”の文字があちこちに並ぶ。

会場となったサンフランシスコのモスコーニセンターが真っ赤に染まった

 直近の決算発表を見ると、「オラクルはクラウドカンパニー」というのはあながち否定できない。オラクルは会計年度2017年第1四半期(2016年6-8月期)、総売上高(前年同期比2%増の86億ドル)のうちクラウド事業(IaaS、PaaS、SaaSの合計)は9億6900万ドル、全体の10%を占めた。そして、クラウド事業の成長率は前年同期比59%で増加した。内訳はIaaSが前年同期比7%増の1億7100万ドル、SaaSとPaaSは同82%増の7億9800万ドル。一方でソフトウェアライセンスは前年同期比約10%のマイナスで、クラウドへのシフトが進んでいるといえる。

 1時間20分の基調講演のフォーカスはIaaSとなった。オラクルのクラウドはこれまでSaaSが中心で、それを支えるPaaS、IaaSという位置付けだったが、今年はIaaSを前面に出した。「今年からは、アグレッシブにインフラ部分のクラウドにフォーカスをしていく」というのが、会場に集まった顧客、パートナーへのメッセージだ。

 2015年のOpen Worldでエリソン氏は「SAPとIBMは敵ではない」と述べたが、今年もこの路線を強化し、「インフラではAmazon、アプリケーションではWorkdayがライバルだ。かつてはIBMとSAPだったが、業界は大きく変わった」と述べる。なお、エリソン氏がこの時に表示したスライドではアプリケーションの競合にSalesforce.comが含まれており、プラットフォームではAmazonとMicrosoftが競合となっている。

 ではオラクルのクラウドの強みは何か? エリソン氏は設計上の目標を説明する。1)初期投資とTCOの両方のコストが低い、2)一部に支障があっても全体が機能停止しないフォールトトラレント、3)高速なデータベースによる性能、4)業界標準(データベースではSQL、Hadoop、NoSQL、言語ではJava、Ruby、Node.js、その他LinuxとDocker)の利用、5)オンプレミスとクラウド間をデータとアプリケーションがやりとりできる互換性、6)セキュリティ、などの6つだ。特にセキュリティは、2015年のOpen Worldでチップレベルから実現するなど大きな差別化としていた部分だ。「オンプレミスからクラウドへの移行で、もっとも重要な問題となりかねない」とエリソン氏は指摘した。

 設計上の目標はそのまま戦略につながっており、SaaSはさまざまなベンダーのさまざまな技術を統合する必要のないスイート、PaaSはデータベースへの既存投資を無駄にすることのないオンプレミスとクラウドとの互換性と移植性、IaaSではコストと性能、がOracleクラウドの戦略となる。

第2世代のインフラで競合を一気に飛び越える

 今回IaaSに本腰を入れるにあたって、オラクルが準備したのが「第2世代のインフラ」だ。電源装置にはじまり、独立したアベイラビリティドメインをリージョン内に3つ用意し、低遅延・広帯域の光ファイバネットワークでつなぐ。これにより1つのアベイラビリティドメインに支障があっても、リージョンは影響を受けない。この三重化したリージョンは、今後世界に配置していくという。「ミッションクリティカルのワークロード向けに高い可用性を提供できる」とエリソン氏、「これで競合を一気に飛び越える」と自信を見せる。

Oracleは2015年のOpenWorldでIaaSに正式参入、今年は第2世代のインフラを引っさげ て、本格展開を図る

 そして価格だ。ベアメタル対応により「Amazonと比較して、2倍のコア、2倍のメモリ、4倍のストレージ、10倍のI/Oキャパシティを、20%安く提供する」とEllison氏。「Amazonのリードは終わる。Amazonは深刻な競争に直面することになる」と予言した。

オラクルのIaaSとAWSとの比較

 PaaSでは、高い信頼性やセキュリティを持つ「Oracle Cloud Platform」、その上の「Oracle Database」と「Oracle Fusion Middleware」が土台となる。既存のアプリケーションをクラウドに拡張する、まったく新しいクラウド主導のアプリケーションを開発する、SaaSアプリケーションに機能を拡張したいビジネスユーザー向け、と3つのニーズに応える。

 エリソン氏はスピーチ中、PaaS分野でたくさんの発表を行なった。まずはマイグレーション支援となる「Cloud@Customer」がある。顧客のファイアウォール内にまったく同じハードウェアとソフトウェア環境を構築し、オラクルが管理するというもの。もちろん、パブリッククラウドと同じサブスクリプション形式で利用できる。Cloud@Customerは、Infrastructure、Exadata、Big Dataと3種類を提供する。

 また、クラウド向けに設計したというデータベース「Oracle Database 12c Release 2」も発表した。マルチテナント、インメモリオプションが強化されたほか、シェーディングにより数千のデータベースで1つの論理データベースを構築することで拡張性を大きく強化するという。12c Release 2では新しいサービス「Exadata Express Cloud Service」も発表した。Oracle Public Cloudで動くOracle DatabaseのEnterprise Editionで、月額175ドルという低価格ながら、すべてのオプションが利用できる。

 コンテナ対応も進め、2015年のOpen Worldで発表したDocker対応が正式扱いとなり、クラウドの中でマイクロサービスを開発、実装できるようになる(サービス名は「Container Cloud Service」)。合わせて、コンテナイメージ向けのレジストリでDockerコンテナとしてオラクルの技術を提供できる「Oracle Container Registry」も発表した。

 これらにまじって、将来、企業がシステムとやりとりするインターフェイスが大きく変わることを予期させるデモもあった。オラクルが「ChatBot Platform」として開発するチャット形式のバーチャルアシスタント機能の開発プラットフォームだ。エリソン氏がデモした調達の例では、「名刺を再注文したい」と記入すると、調達側が前回注文した際のデータを取り出して表示し、HCMシステムと確認して肩書きが変わっていると知らせるなどのやりとりをチャットで行なって見せた。

古い名刺には「CEO」(Ellison氏は2014年秋までCEOだったが、現在はCTO)となっており、肩書きを新しくするかと聞いている。最終的には「CTO」と書き換えられた名刺を注文し、届け先まで聞いてくるというもの。

エリソン氏によると、JavaやJavaScriptなどの知識は不要で、グラフィカルなインターフェイスの操作により作成できるという。またFacebook Messenger、Slack、Kikなどのメッセージングサービスとも動くという

 Oracle Database 12c Release 2は、同日よりExadata Expresss Cloud Serviceの提供を開始した。11月に「Enterprise Cloud Serivce」「Exadata Cloud Service」を、12月には「Exadata Cloud Machine」(Cloud@Customer)を提供する。Chatbot Platformの提供時期などは明らかにしていない。

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