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最強のJava入門書はどれか?(2016年秋)第1回

悩めるJava子羊たちに入門書と教科書の違いを説く

2016年09月13日 21時00分更新

文● 矢澤久雄、高橋征義鹿野桂一郎遠藤諭 編集● 鹿野桂一郎

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悩めるjava子羊たちのためのド入門書

 プログラミングを勉強することになったとき、山のように発行されている本からどの本を手に取ればいいだろう? プログラミングを“はじめる人”、あるいは“はじめざるをえない人”がいちばん多いのは、いまも「Java」だという。そのため、Java本は、初心者向けの本にかぎっても数十タイトルが売られている。

 そもそも、「本で入門するのがよいのか?」という問いはあるかもしれない。しかし、プログラミングを学ぶときに本がまだまだ求められていることは、その刊行点数が如実にあらわしている。2016年8月、コンピューター書について思うところがある4人(矢澤久雄、高橋征義、鹿野桂一郎、遠藤諭)が売れ筋のJava本およそ30冊とともに集まり、ベストJava本は何かを考察した。

 あまりに盛り上がってしまい、1本の記事では収まらないため、全3回にわけてお届けする。初回は、ふだんあまり意識されていない“入門書”と“教科書”の違いという視点から論評がスタートした。

座談会メンバー

矢澤久雄

 株式会社ヤザワ 代表取締役、グレープシティ株式会社 アドバイザリースタッフ。パッケージソフトの開発と販売に従事しつつ、執筆活動と講演活動も精力的にこなす、自称「ソフトウェア芸人」である。

高橋征義

 株式会社達人出版会代表取締役、一般社団法人日本Rubyの会代表理事。大学では推理小説研究会とSF研究会と天文同好会に所属。好きな作家は新井素子。

鹿野桂一郎

 ラムダノート株式会社 代表取締役。TechBooster CEO(Chief Editing Officer)。HaskellとSchemeとLaTeXでコンピュータとかネットワークとか数学の本を作るのをお手伝いする仕事。

遠藤諭

 株式会社角川アスキー総合研究所取締役主席研究員。プログラマを経験後にアスキー入社、’90年~’02年『月刊アスキー』編集長。今年、全国小中学生プログラミング大会を主催。月1回、神保町や新宿ゴールデン街で1日だけのカレーBARを開店している。

プロローグ

矢澤: けっこうな数のJavaの本を集めましたねぇ。

遠藤: ここに集めたのは、書店のPOSデータ編集注※1やAmazonのランキングなどで売れているように見えるタイトルです。Javaの本としては、ほかにも資格本やAndroid編集注※2の本もあります。

高橋: Androidの本は、Javaの本って言っちゃっていいんですかね。

鹿野: Javaの概説が章立てに含まれているAndroid本もあるので、ぜんぜん問題ないと思いますよ。

高橋: いや、むしろ政治的な理由編集注※3でどうなのかなと。

一同: あー。

矢澤: この本、全部、読者プレゼントにするといんじゃないかな。

高橋: たしかに、これを全部読めれば、Java、なんとかなるだろうという気がしますね。

鹿野: で、ちゃんとレポートを書いてもらって、それを改めて記事にする、と。

品評会を待つ売れ筋のJava本たち

遠藤: 個人的に、本を読まないプログラマは信用できないという気がするんですよ。『たいていのことは20時間で習得できる』編集注※4という本があるんですが、その本では、20時間で習得しなきゃいけないのに、まずプログラミングの本を3冊読めとなっている。

一同: どうやって読めと。

遠藤: 本のほうが情報がまとめられているから、ネットで検索しながらいくより早いんですね。飛ばし読みだと、いよいよそうかもしれない。この本は、だいたいそういう準備に時間をわりふって、ある程度つかんだらダーッといくような形になっています。つまり、そこから先はWebもフル活用するわけですけどね、まずは本だと。

矢澤: わかるわかる。メールもらうより紙の手紙もらうほうがじんとくるみたいな。

遠藤: ちょっと違うんだけどなぁ。

初心者向けだけでも50冊以上あるJava本

高橋: でも、そもそもなんでJavaの本なんでしたっけ。

遠藤: アスキー(現KADOKAWA)の営業に、こういうことになると超マニアックで頼りになる人間がいるんですよ。彼の分析による基準だと、いま書店で動いているといえるJavaの初心者向けの本は55点だそうです。これが、C言語やJavaScriptになるといきなり半分くらいになるんですね。実際に神保町の三省堂本店で数えてみたら、Java本全体では122点が実際に棚に並んでいました。

一同: なるほどぉ。

遠藤: これだけ多いと、ほとんどの人はどれを選ぶのか悩みます。ネットにもJava本の選び方の定番ネタっぽいページはあるんですが、売れスジ上位だけを数点ならべてあるだけですね。

鹿野: ああいうサイトは、たいていAmazonのアソシエイトを稼ぐのが目的ですからね。

遠藤: ということで、今回は、いちばん選ぶのが大変そうなJava本についてみなさんに評価してくださいということなんです。

鹿野: では、まず矢澤さんと高橋さんの視点をはっきりさせたいので、それぞれJava歴とか、プログラミング入門書にどうかかわってきたのかみたいな点を教えてもらえないでしょうか。

矢澤: Javaは、かなり昔に翔泳社で上下巻の本を出したことがあるんだけど、そのあとC#の普及のお手伝いをしていたので、正直「あんなもの触るか」くらいの時期もあったんですよね。

一同: (あんなもの……)

矢澤: ただ、2000年くらいから企業の新人研修をいくつか頼まれるようになって、そういう会社のほとんどが「Javaでやってくれ」ってなったんです。

鹿野: その企業っていうのは、実際にシステム開発を自分たちでやっているようなところなんですか。

矢澤: そう。Webも含むけど、どっちかっていうと業務システムをやってるような会社。それまではC言語とか、VBとかだったんだけどね。なので最近は、そういう研修のためもあって、市販していないJavaの教材を書いています。情報処理技術者試験を受ける人が、Javaなんてできなくてもいいけど試験問題が解ければいいという趣旨で、プログラムを作る人ではなく読めればいい人向けの本。

鹿野: 高橋さんのJava歴は?

高橋: 仕事でJavaを使ったのは前職でStrutsのサービスを開発したくらいなので、Javaの入門書を勧める人間として適任じゃないのでは、という心配はあるんですが、技術書を読むのは好きなので、そういう観点で意見を出せればなと思います。

鹿野: あと高橋さんといえば、年初にやってるジュンク堂池袋本店のイベント編集注※5ですよね。

高橋: そうですね。1年に2000冊くらいコンピュータ書って出てるんですが、そのなかでピックアップしたものを200冊くらい、ひたすら紹介するというイベントをここ数年やっています。

遠藤: いいものを選んで紹介という感じですか?

高橋: いや全然。ジュンク堂池袋本店さんの月間のベストセラーをもとに、気になる新刊をどかどか突っ込んでいくという。

遠藤: じゃあ今日の会に似てる感じ?

鹿野: ジュンク堂イベントは紹介だけなので、今日みたいに最終的にベストなお勧め本を選ぶとわけじゃないですね。

高橋: あんまりベストとか好きではなくって、それぞれの読み手ごとにいい本って違うと思うんです。「こういう目的にはこの本がいいのでは」みたいな話をするのが好きなので、誰にでもお勧めできるような本を選ぶのは得策ではないだろうなとも思ってるんですが。

鹿野: ジュンク堂イベントはまさにそんな感じですね。

高橋:  個人的には変わった本が好きで、そういう変わった本はそもそも人に勧められませんし。

遠藤: 鹿野さんの経歴も教えてください。

鹿野: わたしは去年までオーム社っていう会社にいて、コンピュータの本を企画するほうの立場でした。そういう意味では書き手に近いけど、読者側の立場でもあったという。

遠藤: そういえば、ここに集まった本にオーム社の本はないね。

鹿野: そもそもJavaの入門書を出してないはずです。出してない理由というか、自分が企画しなかった理由は、ひょっとしたらあとで話す機会があるかも。いずれにせよ、いまは既存の版元のしがらみの中にいないので、そのへんを含めて企画者の立場で話に混ざれるかなと思っています。

遠藤: なるほど。私は、月刊アスキーで長くプログラミングの入門記事を担当してきたんですけどね。そういえば、先日、『日経アントロポス』という雑誌にインタビューされた記事が出てきて、95年に「Javaが要注意だ!」と答えてました。

Javaの入門書を買うのは“誰”?

鹿野: まずはじめに、今日集まった本をざっくりと分類しませんか? とはいえ問題は、どういう軸で分類するかですよね。よくあるのは初級とか上級みたいなレベルに応じた分け方だけど。

集まったJava本の分類中

遠藤: 誰向けかはあるけど、最終的には本を選ぶときの指針を出したいですね。

鹿野: ということは、最初に、Java本を読むのは“誰?”をはっきりさせないとですね。そのうえで、今日集まった本を“誰向けか”という観点で比べればよさそう。

矢澤: 企業の新人研修をやっていると、“ITが好き系”と、“しょうがなくITに入った系”に生徒が分かれるんだよね。新人以外では、“ほかの言語やってた人”っていうのがいる。

鹿野: IT好きの新人っていうのは、学生時代に何らかの言語でプログラミングを自分でやっていた人なのでは?

矢澤: いや、知識も経験も特にないしプログラム書いたことはないけどITに興味はある、という気持ちでIT業界にきている人たちがいるんだよな。新人研修だと、そういう人たちと、ほかに行くところがなくてIT業界に来ましたっていう人たちと、きれいに2つのグループにわかれるんだよ。

高橋: おれはザッカーバーグになる、みたいな人たちが想像されますね。

矢澤: あと趣味でやる人か。読者ハガキとか見ると、意外におじいさんで趣味で始めましたっていう人がけっこういるんだよね。

遠藤: 普通の大学生が授業とか就職対策でやるというケースはない?

矢澤: 授業はあるけど、日本のIT企業だと新人をとるときにコード書かせるっていうのはあまり聞かないから、就職対策でJavaを勉強する学生っていうのはあまりいないよねえ。外資ならあるかもしれないけど。

高橋: 学生だと、Androidでアプリを作りたいからJavaに入門するっていうのがいちばんあるでしょうね。

鹿野: 学生に限らず、Androidのアプリにしろゲームにしろ、具体的に作りたいアプリケーションがすでにあって、その手段としてJavaを入門したいっていう人は、きっと入門書を探しますよね。

矢澤: あと、これは入門書ではなく基本的にはJavaの経験者だけど、特定のフレームワークとかの応用に進みたい人は本を買うよね。それから、情報処理試験を受ける人でJavaを選択する人がわりといるかな。アセンブリのほうが試験としては簡単だと思うけど、会社の研修で使ったという理由でJavaをやるんだよね編集注※6

高橋: 実際にJavaのコードを書くわけじゃないけどJavaの情報は知っておきたいです、っていう人もいますよね。

鹿野: 日本実業出版社とかでいろいろな分野の本が出ている系ですね。

高橋: Javaの用語ってけっこう独特なものがあるので、これってなんだっけ、みたいなのを知った気分になれる本は一定の需要がありそうです。この中だと、アスキーの『すっきりわかった!Java』とかがそんな感じです。これJava 1.6くらいなんですけど、この本以降、あまりこういう感じのJavaの本は出てないんですよ。で、この本の著者の花井さんは、宇野るいもさんの名義でJavaの本も何冊か書いてるんで、内容が安心できるんですよね。改訂してほしいですよね。

『すっきりわかった!Java』

矢澤: そういえば最近、その目的で、Javaのリファレンスの本を買ったわ。で、がっかりして駅のゴミ箱に捨てた! わたしは気に食わない本は駅の雑誌用のゴミ箱に捨てることにしてるんだよ。それを読んだ駅員さんがプログラマになるかもしれないし。

遠藤: そのリファレンス本は、今日集まった本のなかにあります?

矢澤: ないですね。リファレンスを騙ってるのに網羅性がなかったのががっかりしたんです。もうちょっと単に資料集であってほしかったんだよね。紙の。Webにありそうだけど、ないんだよね。

高橋: リファレンスマニュアルを読めという感じなのかもしれませんね。そのへんの本は、昔だったらマニュアルっぽいのが出ていた印象ですが、最近はほんとになくなっちゃいました。

Java入門書の御三家

矢澤: わたしは、この『スッキリわかるJava入門 第2版』を研修で使ってます。なにがいいかって、絵が出てくるところがいい。

『スッキリわかるJava入門 第2版』

鹿野: 絵が出るだけなら、ここにはないけど、『Javaの絵本』っていうのもありますよね。もうけっこう古いしメンテナンスされてませんが。

遠藤: いまだによく売れてるみたいですね。「絵本」っていうタイトルで勝ってる。

矢澤: まあでも、『Javaの絵本』は、絵があるけれど説明は固いというか、モチベーションが低い人にとってわかりやすいかっていうと、そうでもないと思うんだよね。

鹿野: 絵だけあっても、モチベーションがない人にはわからない、と。

矢澤: 『スッキリわかるJava入門』には、できない子と、それを優しく見守る先輩っていうのが登場人物として出てくるんだよね。だから、あんまりモチベーションがなくてしぶしぶ本を読む人でも、自分を「できない子」に重ね合わせて読める。しかも、その登場人物が、本の中ではだんだんプログラミングできるようになっていく。読んでると、自分もひょっとしたらできるようになるんじゃないかと感じさせる。

高橋: 個人的には高橋麻奈さんの『やさしいJava』編集注※7にかなり思い入れがあるんですよね。自分でも初版だか第2版を読みましたし。

『やさしいJava』

矢澤: やさしい麻奈ね。よく売れてるよね、これは。

遠藤: ここにある第5版の帯編集注※8には、通算80万部って書いてある。でも、いまPOSで圧倒的に売れてるのは、矢澤さんが副教材で使っているという『スッキリわかるJava入門編』なんですよね。

高橋: むかしはJavaの入門書といえば、この『やさしいJava』と、あと結城浩さんの『Java言語プログラミングレッスン』だったんですよね。それがあるとき『スッキリわかるJava入門編』が出てきた感じではないかと。

『Java言語プログラミングレッスン』

鹿野: 『やさしいJava』、『Java言語プログラミングレッスン』、『スッキリわかるJava入門』の3冊で、Java入門書の御三家といえそうですね。

矢澤: でも結城さんの本は、正直、モチベーションがないと読むのきついんじゃないのかなあ。

高橋: 読み物を読むのが苦手な人にはきついんだけど、わりと優しい読み物っぽい作りにはなってるので、入門書かなと。結城さんの本と高橋麻奈さんの本が出るまでは、わりとどのプログラミング言語本も教科書っぽいのばかりだったんですよ。1990年代の本はみんなそんな感じでした。

遠藤: 巻末みたら結城さんって『数学ガール』シリーズ編集注※9の方なんですね。

一同: そうですよ。知らなかった?

教科書か、それとも入門書か

鹿野: いま、教科書と入門書の違いって話が高橋さんから出たんですが、多くの読者は教科書と入門書をあんまり意識して区別してないと思うので、ここでちょっとはっきりさせておきましょう。

高橋: いちばんの違いは、先生が教えやすいかどうかだと思いますよ。教えるには、あんまりストーリーとかない教科書のほうが使いやすいっていう。

鹿野: でも矢澤さんの研修では、入門書であるところの『スッキリわかるJava』を教材として使ってるんですよね?

矢澤: いや、副教材として渡して、自分で読んでもらってるの。

鹿野: 教科書としては使ってないんですね。

矢澤: 研修のときに使う教材となると、ストーリーが作っちゃってある本は、教える立場では使いにくいんだよね。先生としてはやりにくい。それよりは情報の羅列のほうが教えやすいってのはある。

高橋: 学生にすれば、先生と教科書のペアで学ぶわけですからね。その点、たとえばここにある『アクティブラーニングで学ぶJavaプログラミングの基礎』とかすごくて、ちゃんと学生が嵌りそうなところを抑えてあるんですよ。実際に嵌った学生がいたのを教科書にフィードバックしてるんだろうなと。

『アクティブラーニングで学ぶJavaプログラミングの基礎』

矢澤: 回答欄がこれだけ白くとってあるんだものなあ編集注※10

高橋: どのへんがアクティブラーニングなんだろうっていうのはよくわからなかったんですけど。

矢澤: 柴田望洋さんの『新・明解Java入門』は、教科書か入門書か、どっちなんだろう。

『新・明解Java入門』

高橋: この本はむしろ言語仕様にべったりというか、わりと教科書ちっくですね。

鹿野: 柴田望洋さんの本は、解説の丁寧さとか紙面の工夫はすごいけど、文法を淡々と解説していく感じなので、教科書グループですかね。

高橋: そういえば、『新・明解Java入門』のこの三色の色使いは、柴田望洋先生のこだわりが反映されているという話を昔聞いたことが。

矢澤: 赤いセロファンを置くとキーワードが消える、みたいなんじゃないの?

鹿野: 色使いだけでなく、全体に著者のこだわりを感じる一冊ですよね。教科書グループではあるけれど、語りかける口調をウリにしていたりして、独習も可能なように配慮されてる。

高橋: まあでも構成は手堅いスタイルでいってるので、やっぱり教科書系ですよね。中を読むと「この本はまじめな入門書です」って書いてあるけど。

鹿野: 教科書ちっくな構成だけどわかりやすい本です、って言いたいとき、作り手としては、「『やさしいJava』とか他の入門書とは一線を画してる入門書だぞ」と、言わざるをえないという面がありそう。

矢澤: 林晴比古さんの『明快入門Java』も、これもむかしっからあるよなあ。

『明快入門Java』

鹿野: それも完全に教科書グループですね。

高橋: はい、ちゃんと文法を勉強したい人向けの教科書っていう感じですね。

鹿野: もちろん、『やさしいJava』や『Java言語プログラミングレッスン』でも、文法は一通り解説されるわけだけど、このへんの入門書グループはもうちょっとふわふわしているというか……。

高橋: そういう意味で、この2冊(『やさしいJava』と『Java言語プログラミングレッスン』)は、モチベーションがない人でも一人で読める作りになっているのかもしれません。

鹿野: そこが教科書と入門書の違いだぞと。

矢澤: 学校で使いやすい本か、一人でやる本かっていう違いだよね。

鹿野: 『基礎からのJava』はどうですか? 網羅している内容はわりといいですよね。

『基礎からのJava』

高橋: これも教科書っぽいですね。

遠藤: それは、うちの若手いわく「説明文が多い、練習が多い」っていう話だね。

鹿野:  一人でやるにはつらいってことかな。もちろん、この本で独習ができる人もいるんだろうけど。

高橋: 仕事で明日から使う人向けですかね。

鹿野: 明日から使わないといけない人には、これを全部は絶対に読めないような。

高橋: まあ、そうなんですけど。そもそもどの本も、読んだところですぐ使えるわけでもないですし。

鹿野:  ああ。

遠藤: 『わかりやすいJava入門編』もPOSを見るとよく売れてるみたいです。うちの若手によると、前にIT系の会社にいたんだけど、そこに新入社員で入ったときに最初に「これ読んどけ」って支給された本がそれだって。

『わかりやすいJava入門編』

鹿野: 著者がその会社の人だったんじゃなく?

遠藤: そういうわけじゃないらしいけど。でも本が送られてきて、一人で読んだけど、まったくわからなかったらしい。

鹿野: たまたま最初に読んだのがこの本だったというだけで、ほかの本を最初に読んでいたら、どの本でもわからなかった可能性があるのでは。

矢澤: 考え方とかの説明があまりなく、「これやって、あれやって」っていう構成になってるよね。「どうして」はあんまり書いてないというか。だからこそ教科書としてはわるくないんじゃないかな。

鹿野: プログラミングってそもそも何、っていう人じゃなくて、文法を順番に解説することでJavaを学ばせようという感じなんですかね。

高橋: ええ、ええ。昔からあるオーソドックスな言語の本ですよね。

矢澤: 専門学校の本っぽいですよね。教えてくれる人がいればわかりやすいんだろうなあ。

遠藤: 会社に入って、先輩が隣にいるだけど、先輩もいちいち質問されるのは嫌なので、「ちょっとこれ読んどけ」と渡す本っていうわけだ。

鹿野: そういう構成の本で学んだ人は、同じような構成の本を、「これ読んどけ」って後輩に渡しそう。

高橋: 90年代までは、言語の解説書っていうと、こんな雰囲気の本しかなかったんですしね。

鹿野: 入門書で「なんでそうなってるか」を知ったうえで、教科書を使ってJavaの書き方とか文法を丁寧にさらう、みたいな学習パスはどうですか?

高橋: まあでも、やっぱり方向性が全然ちがうので、読む順番というよりは、好みであったり先生がいる前提かどうかだったり、そのへんの違いで選ぶのがほうがいいのかなと思います。

鹿野: なるほど。ここまで教科書っぽい本をざっと見てきて、入門書については突っ込んだ話をしてませんが、とくに御三家(『スッキリわかるJava入門』、『やさしいJava』、『Java言語プログラミングレッスン』)についてはあとであらためて評価しないとですね。でもその前に、入門書と教科書には区分できそうにない本もけっこう集まってるので、次はそっちを見ていきましょう。

ここまでのまとめと、次回予告

 とにかく書店のJava本でもっとも種類が多いのは、これからJavaを始める人、あるいはJavaでプログラミングを始めようという人をターゲットにした本だ。 対談では、こうした初心者向けの本のうち、淡々とJava言語について解説していく「教科書」タイプの本がまず括り出された。

初心者向けの「教科書」

タイトル 著者 出版社 発行年月
『アクティブラーニングで学ぶJavaプログラミングの基礎』 大野澄雄、荻谷光晴 コロナ社 2015年3月
『新わかりやすいJava入門編』 川場隆 秀和システム 2015年4月
『基礎からのJava』 宮本信二 SBクリエイティブ 2010年8月
『新・明解Java入門』 柴田望洋 SBクリエイティブ 2016年6月
『明快入門Java』 林晴比古 SBクリエイティブ 2012年12月
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 これら「教科書」は、ストーリーや脚色があまり目立たないので、研修や授業で先生が教えるのに使ったり、地道に勉強できる人が独習に使うのには向いているといえるだろう。

 オーソドックスな「教科書」と対照的なのが、著者の個性や企画性を前面に出した「入門書」だ。 ここまでの対談では、入門書として特に目立つ次の3点の名前が挙がったが、これらを含めて「入門書」タイプのについては第3回の記事で選び方を徹底的に研究していく。

初心者向けの「入門書」御三家

タイトル 著者 出版社 発行年月
『やさしいJava 第6版』 高橋麻奈 SBクリエイティブ 2016年8月
『Java言語プログラミングレッスン』 結城浩 SBクリエイティブ 2012年11月
『スッキリわかるJava入門』 中山清喬、国本大悟 インプレス 2014年8月
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さらに今回の対談では、自分でコードを書かないけどJavaについて知っていたい人向けの本も話題に登った。 この手のJava本は、最近のJavaに対応したものがないので、出版社的には企画の狙いどころかもしれない。

コードを書かない人向けの本

タイトル 著者 出版社 発行年月
『すっきりわかった!Java』 花井志生 アスキー 2008年3月
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次回、第2回(9月20日掲載予定)では、右も左もわからない初学者向けとしてはお勧めしづらい玄人向けのJava本や翻訳書へと話題がシフトしていきます。ご期待ください!

編集注

  1. POSはPoint of Salesの略で、店頭レジで本のバーコードが読み込まれる際に記録される実売情報。その集計結果を出版社によっては購入していて企画などに活用している。
  2. Androidのアプリを作るときは、表面的にはJavaでプログラミングをする。
  3. プログラミング言語であるJavaの仕様やインタフェースはOracleが策定しているが、それらをGoogleがAndroidで利用していることに対し、Oracleが損害賠償の支払いを求めて2010年にGoogleを訴えた。2016年5月26日にはGoogle側に有利な判決が連邦地裁で下されている。
  4. 『たいていのことは20時間で習得できる』(ジョシュ・カウフマン著、土方奈美訳、日経BP社)
  5. 「新春座談会 このコンピュータ書がすごい! 2016年版——2015年に出たコンピュータ書ならこれを読め!——」。https://www.youtube.com/watch?v=LJ_evEQ0Rsoで当日の録画が見られる。
  6. 情報処理試験のプログラミング能力を問う問題では、C、COBOL、JavaTM、アセンブラ言語(CASL II)の4つから受験者が言語を選択できる。
  7. 座談会当日はまだ第5版が最新だったが、2016年8月末に第6版が出た。本記事の第3回では改訂内容を予測する会話も掲載される予定。
  8. 書籍でカバーのさらに上に巻いてある、宣伝文句やアイキャッチなどが並べられた紙のこと。改訂版ではこのように累計発行部数が煽り文句として使われることが多い。
  9. 『数学ガール』(結城浩著、SBクリエイティブ刊)は、大学レベルの数学を解きほぐしていく高校生たちを主人公とした小説(ふうの数学解説書)のシリーズ。本編のほか、「秘密ノート」と題されたスピンオフ作品がある。
  10. 読者が本に書き込みながら勉強できるようになっているため紙面に余白が多い、という意味。

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