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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第55回

劇場版BD発売中! 今あらためて「大洗」と「ガルパン」を考える

ガルパン杉山P「アニメにはまちおこしの力なんてない」

2016年08月06日 17時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII.jp

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(C) GIRLS und PANZER Film Projekt

劇場版は興行収入21億円超、累計動員数120万人を突破
BD発売後も異例のロングランが続く『ガールズ&パンツァー』

 「ガルパンはいいぞ」――もはやそう表現するよりほかないほどの快進撃が続いている。テレビ、OVA、劇場版と続いた大ヒットは社会現象とも言える規模になりつつある。そして『ガールズ&パンツァー』の主人公たちが活躍する舞台、茨城県大洗町には日々多くのファンが訪れ、町の人々との交流があちこちで見られる。

 どのようにして地方都市「大洗」とアニメ「ガルパン」は幸せな関係を築くことができたのだろうか? その中心人物の一人、バンダイビジュアルの杉山潔プロデューサーに詳しくお話を伺った。

プロフィール:杉山潔プロデューサー

『ガールズ&パンツァー』プロデューサー杉山潔氏

 1962年生まれ。大阪府出身。バンダイビジュアル所属。航空・軍事に造詣が深く、「AIR BASE SERIES」をはじめとするドキュメンタリー作品を多く手掛けている。アニメの担当作品には『青の6号』『戦闘妖精雪風』『ストラトス・フォー』『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』『ガールズ&パンツァー』などがある。


ストーリー:『ガールズ&パンツァー 劇場版』

 学校の存続を懸けた第63回戦車道全国高校生大会を優勝で終え、平穏な日常が戻ってきた大洗女子学園。ある日、大洗町でエキシビションマッチが開催されることに。大洗女子学園と知波単学園の混成チームと対戦するのは、聖グロリアーナ女学院とプラウダ高校の混成チーム。今やすっかり大洗町の人気者となった大洗女子学園戦車道チームに、町民から熱い声援が送られた。
 戦いを通じて友情が芽生えた選手たち。試合が終われば一緒に温泉に浸かり、お喋りに華が咲く。そんな時、生徒会長の角谷杏が「急用」で学園艦に呼び戻される。いぶかしがる大洗女子のメンバーたち。果たして「急用」とは…?
 大洗女子学園、決断の時―。新たな試合(たたかい)が始まる!

(C) GIRLS und PANZER Film Projekt

スタッフ
監督:水島 努 脚本:吉田玲子 考証・スーパーバイザー:鈴木貴昭 キャラクター原案:島田フミカネ キャラクターデザイン・総作画監督:杉本 功 キャラクター原案協力:野上武志 ミリタリーワークス:伊藤岳史 プロップデザイン:竹上貴雄、小倉典子、牧内ももこ、鈴木勘太 モデリング原案:原田敬至、Arkpilot 3D監督:柳野啓一郎 音響監督:岩浪美和 音響効果:小山恭正 録音調整:山口貴之 音楽:浜口史郎 主題歌:ChouCho「piece of youth」 3DCGI:グラフィニカ アニメーション制作:アクタス 製作:バンダイビジュアル、ランティス、博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、ムービック、キュー・テック 配給:ショウゲート

キャスト
西住みほ:渕上 舞/武部沙織:茅野愛衣/五十鈴 華:尾崎真実/秋山優花里:中上育実/冷泉麻子:井口裕香 ほか

(C) GIRLS und PANZER Film Projekt

『ガールズ&パンツァー 劇場版』Blu-ray/DVD発売中!

(C) GIRLS und PANZER Film Projekt

発売日:2016年5月27日(金)
Blu-ray特装限定版 BCXA-1123:9800円(税抜)
カラー 本編119分+映像特典224分 DTS-HD Master Audio(5.1ch)・リニアPCM(ステレオ) AVC BD50G×3枚 16:9(1080p High Definition)・一部16:9(1080i High Definition) 聴覚障害者対応日本語字幕付(ON・OFF可能)

特典
キャラクター原案・島田フミカネ描き下ろし収納BOX キャラクター原案・島田フミカネ描き下ろしジャケット(本編DISC) 総作画監督・杉本功描き下ろしジャケット(映像特典DISC) 聴覚障害者対応日本語字幕付(ON/OFF可 ※本編のみ対応)

新作OVA『愛里寿・ウォー!』『3分ちょっとでわかる!!ガールズ&パンツァー』 ノンクレジットOP・ED 『不肖・秋山優花里の戦車講座』 劇場特報・本予告・PV・CM集(蝶野正洋CM含む) 劇伴収録メイキング 『プレミア前夜祭』『全国舞台挨拶ツアー』『大洗 あんこう祭2015』

DTS Headphone:X(本編音声) キャストコメンタリー 渕上 舞(西住みほ役)、茅野愛衣(武部沙織役)、尾崎真実(五十鈴華役)、中上育実(秋山優花里役)、井口裕香(冷泉麻子役) スタッフコメンタリー 水島 努(監督)、柳野啓一郎(3D監督) ミリタリーコメンタリー 鈴木貴昭(考証・スーパーバイザー)、岡部いさく(軍事評論家)、吉川和篤(ミリタリー監修)、田村尚也(ミリタリー監修)、斎木伸生(ミリタリー監修)、杉山 潔(プロデューサー)

特典CD・ボコのうた「おいらボコだぜ!」 歌:西住みほ(CV:渕上 舞)、島田愛里寿(CV:竹達彩奈) 特製ブックレット(88P) 杉本 功自選作監修正集(20P) 「BANDAI VISUAL +」シリアルコード スマホゲーム「ガールズ&パンツァー戦車道大作戦!」DL特典シリアルコード☆5西絹代(大洗女子学園制服ver) イベントチケット優先販売申込券

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最初の候補地は大洗ではなかった

―― 本日はガルパンと大洗の関係についてお話を伺っていきたいのですが、まずは大洗が舞台に選ばれた経緯を教えてください。

杉山 実在の町を舞台にしたのは演出上の理由から来ています。作品の設定が“女子高生が戦車に乗って試合をする”という荒唐無稽な世界ですから、舞台まで架空の町ではリアリティーやキャラクターの存在感が地に足の付いたものにはなりにくい。

 登場人物が女子高生たちである以上、やはり現実に居そうな女の子たちとイメージが重ならなければなりませんから、どこかの町を舞台にして、その風景・習慣・食べ物といったものを取り入れることが必要だろうと。

 じつは、大洗は最初の候補地ではなく、山陰地方の某都市を想定していました。なぜかと言えば、作品の内容が“スポーツもの”なので、企画当初はいわゆる高校野球みたいなイメージを持っていました。

 そして高校野球といえば“東北勢”です。冬は雪に閉ざされるのでグラウンドではなく室内練習場での練習を強いられる。そういったハンデを背負ってくるから、日本人の好きな判官びいきで、応援したくなる。この作品についても、弱小校が勝ち上がっていく、という話ですから通じるものがあるだろうと。

 

次に、ならば“戦車を動かしにくい場所”ってどこだろうか? となったわけです。平地が少なくて豪雪地帯……といったところではないか? ということで山陰かなと。最初の候補地は私も訪れたことのある場所なのですが、山がすぐそこに迫っていて、海に落ちている。しかも豪雪地帯ということで『あそこだな』となんとなくイメージしてはいたんです。

 ところがロケハンをする段になって距離が問題になりました。ロケハンに行くスタッフは少なく見積もっても10人を下りません。1回行って写真を撮り、あとは適宜資料を集めて描くという考え方もあったのですが、それだとたぶん“背景が町になっているだけ”になるだろう、と。そして追加取材をしたくても(距離的に)ちょっと現実的ではないよね……という話になり、「じゃあ北関東あたりは?」ということで検討が始まりました。

 ただ、大前提として、設定上“学園艦”というものが登場しますから、巨大な船が入港できる港湾設備を備えた港町であることが望ましい。そしてある程度フォトジェニックというか、ランドマークになる建物があったり、キャラクターたちが遊びに行ったりする生活感を感じられる場所が良い、となったんです。

大洗町にひときわ高くそびえる「大洗マリンタワー」(撮影:佐藤ポン)

 たまたま私は茨城県に住んでいて、子どもたちを連れて大洗に行っていました。茨城で海水浴といえばあのあたりか大洋村(現在の鉾田市)でしたので。土地勘もあり、先ほどお話ししたランドマークも備えている。

 たとえば港、展望台(マリンタワー)、その足元には女子高生たちが買い物をしそうなアウトレットモール、関東最大規模の水族館、由緒ある磯前神社があり、海の中に鳥居が立つ神磯の杜がある。温泉施設もあり、電車は1~2両編成のディーゼル車が高架を走る鹿島臨海鉄道が――といった具合です。そこで提案したところ、水島監督がすぐ見に行って「いいよね」と仰り、大洗に決まりました。

 大洗は、特急に乗れば東京から1時間半程度、クルマでも1時間から2時間くらいで着きます。先ほど懸念として挙げた、ロケハンを何度も行くことになった場合も、地理的に便利だろう、と。

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