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最新パーツ性能チェック 第192回

最大10コア/20スレッドのBroadwell-E登場!新Turbo Boostの挙動検証&全モデル比較

2016年05月31日 15時00分更新

文● 加藤勝明 編集●ジサトライッペイ

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全モデル倍率ロックフリー&OC向けの機能も追加

 Broadwell-Eの型番末尾はすべて「K」または「X」であるため、CPU倍率を変更することでオーバークロック(OC)にも挑戦できる点はこれまでと同様。だがHaswell-EではOCの壁となっていたAVX(命令セットのひとつで発熱量が大きい)の倍率を下げたり、コア単位のクロックアップなど、OC向けの機能も強化している。

OC向けに3つの新しい機能が追加された。ただし、今回はこれらの有無がどうOCに影響するかについては、時間不足のため検証することはできなかった。

OC関連のBIOS設定を探ると、AVX部分の動作倍率をコアの倍率よりも下げる設定を発見。Core i7-6950Xの場合デフォルトは40倍の4GHz動作だが、「2」を入力すると38倍、すなわち3.8GHz動作となる。

謎多き新機能「Intel Turbo Boost Max Technology 3.0」

 Broadwell-Eは従来の多コアCPUの悩み、すなわち「コア数が多いがゆえに動作クロックが控えめ」を解決するための新たな技術が盛り込まれた。それが従来のTurbo Boostの上位版となる「Intel Turbo Boost Max Technology 3.0」だ(以降、ITBM3.0と略)。

 しかし、ITBM3.0が具体的にどういう機能であるか、動作に何が必要なのかは、発表当日の段階でも筆者の手元に公式の資料はない。なので今回は「主に筆者が今回のレビューを通じて得た情報」がベースになっている。そのため細部が間違っている、あるいは機能の未実装や不具合などで間違った情報になっている可能性がある点はご容赦頂きたい。

唯一ITBM3.0のことに言及した資料がこちら。「シングルでもマルチスレッドでも速い!」のとHaswell-Eに対し15%速い、と謳っているが具体的な仕組みには一切言及がない。

 まず、今回の検証で観測できたITBM3.0(Broadwell-E)の挙動は次の通りだ。

●「Turbo Boost 2.0の最大クロック」で「全コア」が安定稼働する

 これまでのTurbo Boost 2.0の場合、稼働するコア数が増えるとクロックの上限が下がる。あるCoreプロセッサーのスペックにある「Turbo Boost時最大クロック」とは、1コア(もしくは2コア)に負荷をかけた時のものであり、全コアに負荷をかけると定格クロック近くまで落ちる。コア数の多いCPUになるほど高クロック動作は諦める必要があった。

 特にTDPの高いCore i7では、このブースト幅が非常に狭い。例えば定格3.5GHzのCore i7-5930Kの場合、Turbo Boost最大時(1~2コア使用時)で3.7GHz、3コア以上に負荷をかけると3.6GHzが上限となる。

 しかし、Broadwell-Eでは、全コアに負荷をかけても公式スペックに書かれているTurbo Boostの上限値までは上がる。例えば定格3.2GHz、Turbo Boost時最大3.8GHzなCore i7-6850Kで全コアに負荷をかけるとすべて3.8GHzで動作する。これは非常にうれしい変更だが、ITBM3ではさらにもう1段ブーストが用意されている。

●1コアのみさらに高クロックで動作する

 ITBM3.0は全コア稼働時でもさらにその中の1コアだけ他のコアよりも高クロックで動作する。クロックの上限に関する資料は入手できなかったが、最下位のCore i7-6800Kでは1コアのみ3.8GHz、他の3製品では1コアのみ4GHz動作が確認できた。

 この“選ばれし1コア”はそのCPUの中で必ず決まっており、高クロック動作時はコア電圧も高めに印加される。このことから高クロックに耐えられるコアがあらかじめ選別されており、それを伸ばすという仕組みのようだ。これは特定コアのOCに他ならないが、CPU側で完全に掌握した上での挙動であるため、OCではなく「ブーストの一環である」というのがインテルのスタンスのようだ。つまり、サポートの範囲内であると言える。

Turbo Boost 2.0時最大3.7GHzのCore i7-6900Kは全コアに負荷をかけると、4GHzで動作する1コア(Core #6)を除き、他のコアはすべて3.7GHzで動作した。

Turbo Boost 2.0時最大3.6GHzのCore i7-6800Kは、1コア(Core #5)だけ最大クロックが3.8GHzで他のコアより200MHz高い値になっている。

 この手法は非常に興味深い一方で、ベンチマーカーにとっては頭の痛い機能となる。1コアに高い負荷をかけるといっても、常に同じコアに負荷がかかるわけではない(タスクマネージャーでコアとタスクを関連付ければ別だが)。つまり、その瞬間のタスクを割り当てられたコアが“4GHz動作の当たりコア”である可能性もあるし、普通のコアである可能性もある。これに偏りが生じれば、処理時間が変化する可能性も出てくる。

CINEBENCHのシングルコアテスト実行中の挙動を観察すると、あるときは3.6GHz動作(左)だが、時々4GHz動作(右)のコアに処理が移る。クロックが高いコアは1つしかないのでどのコアに当たるかは運次第なのだ。

●ITBM3.0は対応マザーとドライバーが必要

 まず、今回のテスト環境(スペックは後述)には、ASUS製のBroadwell-E対応をうたう最新マザーボード「X99-DELUXE II」を使用しているが、このマザーのドライバーCDにはITBM3.0用のドライバーが収録されている。これを組み込むことで、デバイスマネージャー上にITBM3.0の項目が出現するのだ。ITBM3.0は対応マザーとドライバーの2つが必要と考えられる。

 だが問題はHaswell-E発売当初からあるX99マザーを流用しようと考えていた人だろう。今回従来から販売されている「X99-A」マザーにBroadwell-E対応BIOSが入った状態でテストすることができたが、原稿執筆時点においてX99-A用にITBM3.0用のドライバーは存在せず、X99-A上でBroadwell-Eを動かしても挙動は変化しなかった。

 このような場合、後日ITBM3.0対応BIOSやドライバーが提供され対応可能になるのか、それはいつ頃かなどの情報は一切が不明だ。マザーメーカーの反応もまちまちであるため、今後のマザーメーカーの対応には十分な注意を払いたい。

ITBM3.0のドライバーはマザー付属のCDにひっそりと収録されていた。インストールをしてもデバイスマネージャーに追加されるだけ。

X99-DELUXE IIにCore i7-6950Xを搭載し、OCCTで全コアに負荷をかけたところ。コア0~8が3.5GHz、Core #9のみ4GHz動作になっている。コア電圧もコア9だけ1.242Vと高い。

Core i7-6950XをX99-Aに装着した場合。X99 DELUXE IIでは4GHzまで上がるコアが出現したのに対し、X99-Aでは3.4GHzが限界だった。

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