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腕がハックされる!体感がヤバい触感型ゲームコントローラー「UnlimitedHand」

東大ベンチャーH2Lに直撃

連載
ASCII STARTUP 今週のイチオシ!

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VRゲームコントローラーのスタンダードを目指すその実力は

 ここからは実際のUnlimitedHand開発者向けキットの中身を見てみよう。

 開発者向けキットの内容は、本体、電気を流すための専用ゲルパッド2セット、ゲルパッドを乾燥させないための保管トレイ、太さが足りない場合に腕に巻きつけるストラップ、USBケーブル、保証書兼説明書となっている。

 岩崎氏によれば、ゲルパッドの耐久は20~30回。本体のサイズも現時点ではMサイズのみだが、海外市場の場合、とくに現状のサイズではカバーできないことも多いため、将来のサイズ展開ができるようにLサイズなどの試作も進めている。

サイズの異なる試作品

 本体には、腕の内側にあたる箇所に基盤やモーションセンサーを搭載。腕をカバーする翼のような部分にゲルパッド経由の導電部分と8つのセンサーを備える。前腕の筋変位を多方向から観測し、手指の動きを推定する技術である「筋変位センサアレイ」でセンシングが行われている。ゲームプレイ時には、この8つのセンサーの閾値が設定できる。

 「センシングのキモは筋肉の動きで、特に筋肉と腱の動く距離を赤外線で計測している。『手を握る・放す』といった計測のほか、PossessedHand由来だからこそ注目してほしいところは、手首のスライドと指を開く動作。モーションでの動きだけでなく、曲げるや伸ばすといった動き、その2つを体感できるようにしている」(岩崎氏)

 ゲームを正しく操作できるように、ソフトだけでないハード面での調整も重要となる。独特な翼のような形状も、前腕にある筋肉群の動きをとらえ、「手首を上下左右に曲げる」「指を曲げる」といった動きを計測するためだ。「人体の構造的に、ひじの近いほうに手を動かす筋肉がある。人間の筋肉と腱に合わせた電極配置がポイント」だと岩崎氏は語る。

 とはいえ、このように動かすための”材料”がそろっていれば、いきなり製品ができるわけではない。UnlimitedHand開発での大きなキーとなっているのは、人体の動きを分析した解剖学的な部分だが、それ以外にも、回路設計、ソフトウェア、人間の筋肉の動きのための生理学、ロボット制御学、さらには基礎心理学などが製作にあたっては複合的に求められたという。

 「プレイヤーの身体が動かされる部分が強み。マインクラフトや各種FPSをはじめ一人称視点のアクションゲームでは、コントローラーに頼らずに直接入力できれば面白さが変わってくる。ゲーム内で銃を撃ったときの反動を感じるサンプルを用意しているが、こちらは海外での反響が大きい」

開発キットでの装着体験は医療用製品の色合いが強い

手首から先がのひらがハッキングされるのは単純に驚きがある

 筆者は実際にデモを体験してみたが、手ではなく腕部分に低周波の電気刺激でくすぐられるような感覚が強かった。自分の意志と関係なく指が動く様は、体験してみると自らの身体ではなくなったような奇妙な驚きがある。岩崎氏によれば、UnlimitedHandでのプレイに慣れてくると、腕の電気刺激に慣れてきて次第に違和感がなくなってくるという。自分の意志とは別に指が動かされる感覚は、開発キットということもあり、従来のゲームよりも身体性に訴えかけるような、通常の遊びの先にあるマッドな体験という感覚を抱いた。

 なお、使用における推奨利用年齢は15歳以上となっている。安全面については、「低周波刺激はあくまでJIS規格での低周波治療器レベルのもので問題ない。手首や指を動かされるのは普段ない動きで、使い始めは刺激が大きいが、そもそも脳の回路が使われ続けることで筋肉の動きを活発化させるリハビリに使われていたもの」だと岩崎氏は説明してくれた。

キャリブレーションにはまだ個人差が強く表れる。想定以上に脂肪が厚いような場合は計測がなかなか難しいとのこと。「ある程度はハードウェアで解決したが、現時点では、個人ごとの差をソフトウェアでキャリブレーションする必要がある。センシングの点で、万人につけられるようなものは改めて検討している」と岩崎氏。

ゲーム開発者向けだけでない拡張性も

 UnlimitedHandの本体基盤はArduinoベース。開発者に向けた部分としてハッカブルポートも備えており、4つのハードを付加できる。目指すところはVRのゲームコントローラーのスタンダードだが、ゲームの範囲にとどまらないインタラクティブな可能性もUnlimitedHandの魅力の1つといえるだろう。

 「Arduinoのピン端子から、なんでもつなげてもらっていい。赤外線LEDをつけてテレビリモコンにしてもいいし、さまざまなジェスチャーに適したものなので、ゲーム開発者だけでなく、Maker関連の人にも使ってもらいたい」(岩崎氏)

UnlimitedHandのハッカブルポート

 開発者向けキットと同時にオープンした開発者コミュニティは基本的にオープンソース。当初Unityを想定して作ったが、各種開発者用のソフトウェア開発キット(SDK)も用意されており、現在、Arduino、Unity、Processingに対応。7月にはセンサー、8月にはUnreal Engineに対応予定だ。フィードバック用の開発プラグインも専用デベロッパーズサイトに用意する予定で、ある程度自動でキャリブレーションを行えるシステムや、1つ1つ電気刺激を与えていってどの指が動いたか登録できるものが用意されるという。

 「まずはコアユーザー中のコア、世界中の開発知識がある人々に触ってもらうことに期待している」と岩崎氏。販売と平行して、より精度や開発環境も整えていく予定だ。

 5月11日の発売発表会後、国内ではアスキーストアでの先行販売が始まっている。5月末日には、アマゾンでも販売を開始する予定だ。実店舗では秋葉原の愛三電機で取り扱っている。

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