30年の歴史と匠の技が組み合わさって実現した製品
JVCはこれまでも据え置きスピーカーやカナル型イヤフォン(カナルWOOD)で、積極的にウッドコーン(木製振動板)を採用してきた。木材には紙やアルミなどと比較して伝搬速度の速さ、内部損失の高さ、減衰特性の自然さなどが利点。ただし、高音域のレンジを確保する(つまり細かく振動させる)ためには薄く削り、軽量化することが必要で、技術的には困難だった。
そもそも同社が木製振動板の研究開発に着手したのは30年も昔。しかし、安定した品質の確保や量産化は難しく、最初の据え置き型スピーカーが発売されたのは2004年だった。実はその直後にヘッドフォンへの採用も検討されたが、当時の技術では振動板を100μm以下に削ることができず、性能・音質の目標を達成できず開発を中止した経緯があるという。
その後、「匠の技」と同社が呼ぶ加工技術の改善で、カバ材を80μmの薄さに削ったウッドシートの生産に成功。2007年の「HA-FX500」に採用した。その後もWOODシリーズとして継続して新製品を投入しており、その技術は昨年発表された「HA-FX1100」などに継承されている。
ただしこれは直径11㎜程度と小さなインイヤータイプの話だ。今回発表したWOOD 01/02は約11倍も面積が大きい直径40㎜のヘッドフォン用ドライバーを使用している。製品化に先立ち、同じ80μmのシートで試作したところ、案の定、高域が伸びず、音圧も出せずと、満足する結果が得られなかったそうだ。つまり冒頭で筆者が述べたような不安は、とっくの昔に課題として認識されていた。WOOD 01/ 02はそれをクリアーして市場投入された製品だったわけだ。