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約2.5万円で購入可能、コスト性能が抜群に高い

ビクタースタジオ、ハイレゾ制作のスタジオで実際に使用する、モニターヘッドフォン「HA-MX100-Z」

2016年03月18日 13時00分更新

文● 小林 久、編集●ASCII

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 JVC ケンウッド・ビクターエンタテインメントは3月17日、スタジオモニターヘッドフォン「HA-MX100-Z」を発表した。価格は2万4800円。すでにハイレゾ配信サイト“VICTOR STUDIO HD-Music.”内のオンラインストアで販売を開始している。

HA-MX100-Z

スタジオでエンジニアが聴いている音をそのまま楽しめる

 HA-MX100-Zは、ビクタースタジオがプロデュースしたスタジオ用ヘッドフォンで、すでにビクタースタジオへの納品が決定している。

 2011年2月発売の「HA-MX10-B」をベースにしつつ、JVCケンウッドの音響技術を利用し、昨今のハイレゾ音楽制作環境に見合った性能・音質の改善を加えた。ちなみに型番末尾の英字はプラグ形状の違い。入力プラグはステレオミニの3極でAmphenol製。プラグからドライバーユニットまでは4芯配線。ビクタースタジオ仕様による75時間のエージングが出荷時に施されており、開封してすぐに安定した性能が得られるという。

 ビクタースタジオで制作した音源を、ハイレゾで配信する「HD-Music.」の音源をこのヘッドフォンで聴くことで、エンジニアがスタジオで実際に聴いて調整した本物の音に肉薄できるという触れ込みだ。

HA-MX10-Bのサウンドを現代の制作環境に合わせて改善

 ケーブルを含まない重量は265g。インピーダンスは56Ω。出力音圧レベルは107dB/1mW。最大許容入力は1500mW。ケーブルは2.5mで着脱二は対応しない。HA-MX10-Bからの改善ポイントは大きく3点。ドライバーユニット(モニタードライバーユニット)の改良、サウンド・ディフューザーの改良、そしてベンチレーションの改良だ。

分解図。大きく3つのパーツを改良した。

 まず、ドライバーユニットはハイレゾ再生に求められる広い周波数帯域を確保するため磁気回路やボイスコイルを改善した。磁気回路には従来同様、ネオジウム磁石を用いているが、ヨークとして使用する鉄製のプレートに注目した。単純に削り出すと、切削時にプレートの表面に凹凸が発生し、これが歪みとして音にも影響する。ヨークの表面を平滑にするために、一度切削機で削った後、熱処理で表面を滑らかにしているとのこと。

 また、ボイスコイルについても日本製の高純度CCAWボイスコイルとした。これらの改善により、高域の特性を伸ばすことができた。

 次にサウンド・ディフューザーについて。このパーツにはドライバー自体の保護に加えて、中低域の周波数特性を決めるという。そこでサウンドディフューザーの中心孔の大きさを調整している。

奥に見えるチューブ状の部分が前室の空気を抜くための構造。

ドライバーユニットの右にある小さな穴とつながっている。

 最後のベンチレーションについては「デュアル・クリアバスポート構造」と呼ばれる空気抜きの仕組みを取り入れた。密閉型のヘッドフォンでは、ドライバーの振動板の前後の背圧が高くなり、振動板がスムーズに動かなるといったことが起きる。そこでハウジングに音が漏れても気付かない程度の少量、空気が出入りできる小さな穴を開けている。従来はこの空気抜きの穴を、主に振動板の後室(振動板とハウジングの間)用に設置していたが、HA-MX100-Zは直径2mmで長さ73mmのチューブを通して前室(振動板と耳の間)の空気圧も効果的にコントロールできるようにした。

ハウジング側のパイプは従来機種にもあったもの。

 従来モデルでも10Hz~28kHzまでと可聴域を上回る高域の再現が可能だったが、今回から10~40kHzまでに拡大した。

 開発を担当した三浦拓二氏によると「ボイスコイルとサウンド・ディフューザーの改善によって、中・高域が良くなった半面、低域が少しスカスカした感じになった。周波数特性のグラフなど計測上の数字が変わっていないにも関わらずだ。これは人間の耳がバランスで聴いているため。MX10ではポートによって100~200Hz付近の低域のこもりを減らすことに成功したが、MX100では80Hz以下の低域が伸びる。これによってドライバーがよりスムーズに動き、音の奥行き感やクリアー感、広がり感などが向上した」という。

 発表会では、ビクタースタジオ内の301スタジオに報道関係者が招かれ、コントロールルームに設置してあるラージスピーカーと比較試聴する場も用意された。交響曲、ジャズのセッション、アコースティックな女性ボーカルなどを順に聴いたが、低域がしっかりとローエンドまで伸びて、音の分解能が高く非常に好印象だった。前面から鳴るスピーカーと側面から鳴るヘッドフォンということで、定位感などはかなり異なるが、音色感やレンジ感、各帯域のつながり感といったところは非常に似ていて、スタジオエンジニアの声が反映されているのだなと実感できた。

 また、エンジニアの実作業を垣間見るという形で、マイクや録音環境の違いで録音される音がどう変わるか、そして実際に録音したソースをミックスダウンする際の調整の工程などを紹介した。その調整は非常に細かいが、その微細な差を聴き分けるためにモニターヘッドフォンが必要だとした。

  • マイクの違い(ダイナミック、コンデンサー、リボン、真空管)
  • スタジオの違い(ビクタースタジオ内の4つの場所)
  • EQ、リバーブ、バランス調整などのミキシング工程

 特に最後のミキシング工程については、JiLL-Decoy associationがビクタースタジオ302スタジオで録り下ろした192kHz/24bitのソースを活用。トラック単位での収録ではあるが、一貫したスタジオを使い、最終的な楽器の定位や配置なども考慮した録音を実施している。デモではEQで4kHz付近の高域を調整することで音色を替えたり、リバーブの有無による影響、そして簡易ではあるが、バランスを調整しながらのミックスしていく過程を見せてくれた。

 今後はビクタースタジオでアーティストやエンジニアが、ヘッドフォンでは「HA-MX100-Z」を使ってモニターしていくことになる。音の入口から出口までを押えることで、制作者の意図に即したサウンドを体験できるという点は大変魅力的だ。

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