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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第138回

サムスン、8Q連続での営業減益は免れたが、その中身は半導体が中心

2015年11月04日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

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 Samsungが7四半期連続で営業減益となった後、好調な決算を発表した。だが、牽引役となったのは半導体やディスプレーなどのデバイス部門であって、スマートフォンではない。一方で、強化分野であるサービス部門はMilk Videoの閉鎖など課題が見えている。

2015年Q3決算では増収増益となったSamsung

 Samsungが10月末に発表した2015年第3四半期(7~9月期)の業績は、久々に明るい内容となった。売上高は前年同期比9%増の51兆6800億ウォン(約5兆5040億円)、純利益は同29%増の5兆4600億ウォン(約5820億円)となった。そして、7四半期連続でマイナス成長だった営業利益が前年同期から82%アップ、7兆3900億ウォン(約7870億円)となった。

 コンシューマー・エレクトロニクス、携帯電話事業を含むIT&モバイル、半導体とディスプレイを含むデバイスソリューション、3部門すべてプラス成長となったが、これはあくまで落ち込みが激しかった2014年第3四半期と比較してのものだ。

 14%増のデバイスソリューションは好調といえるが、携帯電話は2%増、IT&モバイル事業部も2%増に終わっている。携帯電話では、「Galaxy S6 edge+」「Galaxy Note 5」などの新機種の成長に支えられたものの、ミッドレンジとローエンド製品の製品の販売が好調だったことから平均販売価格は下がったと報告している。

 とはいえSamsungがスマホの世界での王者であることに変わりはない。IDCの調査によると、同期のSamsungは8450万台のスマートフォンを売り上げ、シェアは23.8%に。この出荷台数は前年同期比の6.1%増だ。しかし、Samsungの難しさはその下で差を縮めつつあるApple、そしてHuawei、Lenovo、Xiaomiなどの中国ベンダーの強さに現れている。

法人からの売り上げが半分に達したApple

 Samsungの2日前にAppleが発表した2015年会計年度第4四半期(7~9月期)決算では、iPhoneの販売台数が前年同期比22%増の4805万台、売上高は同36%増の322億ドルとなった。9月に発売された最新機種「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」は発売後の週末3日間で過去最売上高の1300万台を売り上げ、その翌週、米Box社のイベントに登場したCEOのTim Cook氏は満面の笑顔だった。

 iPhoneの販売台数はアナリストの予想を下回った(Reutersによるとアナリスト予想は4872万台)ようだが、511億ドルという売上高のうち250億ドルがエンタープライズ、つまり法人からという点は特筆に価するだろう。AppleはCook氏の下でIBM、Ciscoと提携しており、明確にエンタープライズへの拡大を図っている。Cook氏がBox社のイベントで語ったことの意図としては、コンシューマーとエンタープライズの境界が曖昧になっており、そこにチャンスがあるという考えのようだ。

 エンタープライズのビジネスユーザーもそもそもコンシューマーであり、コンシューマーとして利用するiPhone、iPadを職場でも利用したいというトレンドは新しいものではない。Apple Watchについても、あいまいなメリットをコンシューマーにアピールするよりも、最新技術が好きなビジネスユーザーを、ビジネス向けのアプリとセットで狙ったほうが効果的に思える(Salesforce.comなどはすでに対応を始めている)。モバイルから入れば、Macの需要につなげることができる。ここではIBMと(ビジネス向けアプリだけでなく)Macの導入サービスでも手を組んでおり、その点では戦略を敷いていると言える。


(次ページでは、「動画配信サービスのMilk Videoを閉鎖 Samsung Payは拡大へ」」)

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