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僕らが知らないGoogle マップ 第2回

良いデータさえ買ってくればいい地図はできる!?

Google マップの「巨大システム×手作業」が支える見やすさと拡張性

2015年07月22日 09時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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巨大なシステムの力を発揮した「自動車通行実績情報マップ」誕生秘話

 そうした大規模かつ柔軟なシステムの力が最大限に発揮されたのは、2011年3月11日。東日本大震災の日だ。

 震災によってライフラインは寸断された。その回復には、物流の力は欠かせない。だがそもそも、どの道が通れて、どの道が通れるのかもわからない状況だった。そうした状況を解決するための情報システムとして生まれたのが、「自動車通行実績情報マップ」だ。

2011年4月27日のアップデートにより自動車通行実績情報マップに渋滞情報が追加された

 グーグルは、災害のデータを地図に反映するという活動を、東日本大震災の前、2005年アメリカを襲ったハリケーン・カトリーナの際に行っていた。だから「システムが対応できるなら、できる限り素早くやろう」という判断になった、と後藤氏はいう。

後藤 「その作業は私が担当していました。ホンダのデータが手に入るのでちょっとやってみようか、ということになってから、外に公開できるようになるまでに、だいたい6時間くらいでしたかね。それも私、ホンダが持っているような走行データを触るのは、その時が初めてでした。でも、できたんです。その結果、その日のうちにスタートできたのですが、それはシステムがあったので見え方を考え、アイデアをくっつけた、という感じかと思います」

 自動車通行実績情報マップで活用しているのが、現在の自動車が使っている「走行データ」だ。幾つかのメーカーの自動車にはGPS付きの通信モジュールを内蔵されている。そうしたデータは、日々自動車メーカー側に蓄積されており、その量は、2015年現在、全世界で1ヵ月に500億km分を超える、と言われている。

 2011年もホンダが日本国内で収集する分だけで、月に2億kmもあった。実際の走行データを地図上にプロットできれば、「地図を見て、震災後に走行実績のある道」を把握することができる。即効性が高く、現場では求められていたものであったため、ホンダ・トヨタなどが音頭を取り、関連業界団体のITSジャパンを窓口として、各社に集まる自動車の走行データが、可能な限り速やかに公開された。

 自動車通行実績情報マップは、毎朝9時にアップデートしていたという。その時間に「物流用のトラック運転手が動き始め、最初に道路状況をチェックするから」ということが理由だった。利用の中心は、ふたつ折りのいわゆるガラケー。スマートフォンはまだ都市部での利用が中心だったためだ。だからシステム的にも、パフォーマンスの劣るガラケーでいかに快適に使えるかにこころを配った。

後藤 「最初の開発は6時間で出来たんですが、実は、毎朝アップデートするためのデータを作るのが大変だったんです。しばらくは自動化するソフトが出来上がっていなくて、毎朝私が手でアップデートしてたんですよ。いかに大量の処理を効率よくこなすか、という点では、人間がやっちゃった方が早かったんですよ。やっぱり、人間ってまだまだ侮れませんね(笑)
 実は、タイミングもよかったんです。あれだけ膨大なデータを処理できるシステムは、ちょっと前であれば、社内にも存在しませんでした。最初に出したタイミングでは、外からはわからないような形だったのですが、内部ではデータ量の問題でシステムが止まってしまったりもしたんです。深夜2時に緊急ミーティングをして、みんなでがんばりました。処理できるシステムが導入できていたことも、ラッキーでした」

 自動車通行実績情報マップの事例は、グーグルにとっても日本にとっても、大きな経験となった。日本でその後、オープンデータの活用に関する議論が広がったのは、自動車通行実績情報マップの存在に依るところが大きかったのでは……と、筆者は思っている。

 自動車通行実績情報マップがガラケーで使われたように、Google マップの進化と切っても切り離せないのが「モバイル」の存在だ。モバイル系の地図サービスは、日本で生まれ日本で育った部分も多い。次回はそのあたりを解説していく。


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