HTCの人事関係のニュースが相次いでいる。次期フラッグシップ「HTC One M9」のローンチを控えた3月20日、同社はCEO交代を発表した。その一週間後にはデザイン担当トップが同社を去ると発表した。
デザイン責任者の辞任はこの1年で2人目となる。新しいCEOのもとでHTCはどのような回復戦略を計画しているのか? 最大の課題といえるマーケティングについては、課題が残ったままのように見える。
ピーター・チョウCEOが交代
創業者で会長がCEOを兼任
今回のCEO交代により、CEOとして10年に渡ってHTCを率いたPeter Chou氏がとうとう退くこととなった。
Chou氏が率いた2005年から今まで、HTCは大きな成長とその後の低迷の両方を経験する。HTCはiPAQの製造など、もともとはODMメーカーだったが、2006年にChou氏が自社ブランド戦略を取り始める。
幸運なことに、2007年のiPhone登場でスマートフォン時代が幕を開け、HTCはAndroidに賭けた。その戦略は成功し、Androidの拡大とともにHTCは見事にハイエンドブランドに転身を遂げた。
初期のスマートフォンブームにうまく乗った形となったが、その後Samsungが急成長を開始した。巨大なブランド力とマーケティング予算を持つSamsungの前に、HTCやソニーなど早期にAndroidを利用して好業績を収めたベンダーが落ち目になっていく。
SamsungはNokiaを超えて世界最大の携帯電話メーカーとなり、Appleとの2強体制ができあがった。このようにして、さまざまなベンダーがしのぎを削ったスマートフォン黎明期は終わった。HTCは、一度はApple、Samsungに次ぐ3位のスマートフォンメーカーとなったが、そのシェアは2011~2012年頃をピークに低迷期になり、ここ2年ほどは1~2%を推移している状態だ。
Chou氏は2013年にも引責辞任が示唆されたものの、CEOとして同社を率いてきた。製品側ではカメラやオーディオ機能へのフォーカスによりハイエンドブランド復権を試みるが、決定的な解決策が見出だせないまま退くことになる。その後もHTCに残り、研究開発を行なうFuture Development Labを率いるとのことだ。
デザイントップが辞任……1年で2人目
さて、Chou代わって、CEOに就任するのは会長のCher Wang氏である。Chou氏らと1997年にHTCを共同創業した人物だ。Wang氏は今後の戦略について明らかにしていないが、共同創業者ということからも抜本的な変化が望めないのではという見方もあるようだ。実際、Wang氏はすでにここ1年の間、CEOのChou氏とともに意思決定に関わってきていた。
HTCは3月初めのMWCで、HTCは「HTC One M9」とともに拡張現実(VR)ヘッドセット「HTC Vive」を発表している。これがなんらかのヒントになるとすれば、今後スマートフォンからウェアラブルへと製品を拡大させていく多角路線が予想される。
それにしても、スマートウォッチではなく(スマートウォッチの前に?)VRヘッドセットというのは意表を突かれた。スマートウォッチを各社が出す中でとりあえず出したという形を避けたかったのかもしれないし、VRに賭ける別の理由があったのかもしれない。
MWCで話を聞いたIEEEのKevin Curran氏はVRを推していたし、GoogleのSundar Pichai氏もVRがゲームにとどまらずさまざまなユースケースが出てくるとVR分野への期待を述べていた。
HTCをみると、製品側の取り組みよりもマーケティングの強化が急務のように見えるが、これについては現段階では明らかになっていない。
そのCEO交代の発表から1週間後、今度はデザイン担当責任者のJonah Becker氏がHTCをやめることが明らかになった。Becker氏は、2014年4月に同職を辞任したScott Croyle氏の後を継いでデザイントップに就任した。両氏はともに、HTCが2008年に買収したデザイン企業One&CompanyからHTCに移籍した人物だ。
(次ページでは、「大型画面の新モデルで中国市場を強化か?」)
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