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ロック、ジャズ、アニソン、クラシックの人気楽曲で音の個性を知る

ハイスピードで突き抜ける高域「TITAN 1」

2015年02月14日 12時00分更新

文● 天野 透、編集●ASCII.jp

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オスカー・ピーターソンで、躍動する音楽に酔いしれる

 TITAN 1が得意とするのは、特定の音が目立つシーンや編成の小さな音源と感じた。

カナダの巨匠、オスカー・ピーターソンの名盤。録音の古さは感じられず、みずみずしい音楽を聴かせてくれる。ハイレゾ配信が待たれる一枚だ

 今回聴いた中では特にWaltz For Debbyの雰囲気にハッとしたので、自由曲は同じ編成であるオスカー・ピーターソン・トリオの名盤「We Get Requests」から「You Look Good To Me」を聴いてみたい。今回使用したのはCD盤だが、オノ・セイゲン氏がDSDリマスターをした10枚のうちのひとつで、音質の良さには定評がある。

 You Look Good To Meは全体的に静かだが、オスカーの自由奔放なピアニズムが炸裂する名曲である。冒頭はカノンコードで進行しており、旋律が優しくとても聴き心地が良い。オスカー・ピーターソンを聴いた事がない方がいれば、ぜひとも聴いてみてほしい一曲だ。

 では実際に聴いてみよう。まず冒頭のトライアングルで、金属を叩いた時の響きがとても生々しい。チタンの反応の良さがいかんなく発揮された、澄み切った響きである。この曲のダブルベースは、イントロとアウトロではボウイング(弓を使った通常の弦楽器スタイル)で、中間部はピチカート(弓を使わずに手で弾いて演奏する、ジャズでよく見られるスタイル)で演奏するのだが、イントロを終えた後のボウを置いた質感もちゃんと伝わってくる。そしてその後のピチカートがノリノリなのだ。それに誘われて、オスカー・ピーターソン・トリオの特徴である「歌いながらの演奏」も始まる。オスカーのピアノもキレがとても良い。

 音域ごとの不自然な感じも無く、ベースラインがしっかりと鳴った上で音楽が振興してゆくので、リズム感がよく伝わり、まさに音楽の生命観が大きく躍動する。前奏・後奏の優しくゆったりとした部分と、中間部雰囲気の良いノリが支配するテンションの違いも良く描き分けられており、音楽の楽しみを目一杯聴かせてくれた。

強豪がひしめく価格帯
ダイナミック型の良さと高音の鮮やかさが光る

 音数の再現性と中音域の表現力という弱点は確かに抱えており、まだまだ改善の余地は見られるが、全体的に見るとドライバーユニットの素性の良さが存分に感じられた試聴体験だった。

 特に高音の鋭さ不足という、ダイナミック型の既成概念を覆す鮮やかな高音域は非常に魅力的である。

 市場価格は1万6000円前後と、冒頭にも述べた通り各社が力を入れるボリュームゾーンに位置している。近い価格帯にはShureやソニー、Klipschなどの強力なライバルが存在し、もう少し予算を積めば同ブランドの「DN-1000」や、同じダイナミック型イヤフォンでも「MDR-EX800ST」といった、ソニー・ミュージックスタジオと共同開発したプロ仕様のものなども見えてくる。競争が激しい位置にTITAN 1がいるということは間違いない。

 それでもハイスピードでキレが良く、高音まで突き抜けるフルレンジのダイナミックドライバー機というのは魅力的である。そのような素直な音を求めている人は、一度TITAN 1を聴いてみて損はないだろう。

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著者紹介――天野 透(あまの とおる)

 1987年生れ。神戸出身の駆け出しライター。某家電量販店で販売員を経験した後に、一念発起して都内の大学へ進学。文学を学び「高度な社会に物語は不可欠である」という信念を確立した。音楽、アニメ、カメラ、パソコンいじりなど、雑食性の趣味を持つ。基本的に道楽人。

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