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快適、省エネ、安全だけでなく生活改善の提案も? 未来のスマートハウスを見てきた

見た目は平凡な一軒家、LIXILのIoT研究所はこんな所だった

2015年02月13日 09時00分更新

文● 河内典子(@mucchio)

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 住宅設備/建材メーカーLIXILの総合研究所では、スマートハウスやIoTをテーマとして人、モノ、家、社会を情報で結んだ「住生活の未来」を研究している。その一環として、千葉県野田市には築17年、137.2平米の一軒家を研究施設とした「U2-Home(ユースクエアホーム)」がある。2月5日、この“ちょっと未来の家”にお邪魔してきた。

LIXIL 総合研究所のスマートハウス/IoT研究施設「U2-Home」。外観は平凡な一軒家だが、実は先進的な住環境の研究施設なのだ。お邪魔しまーす!

中に入ってもごく平凡な一軒家。しかし、よく見るとダイニングテーブルにロボットがいたりして、そこはちょっと非凡かもしれない(写真提供:LIXIL)

一軒家に200個のセンサーを設置、家中をネットワーク経由で制御

 このU2-Homeでは、住生活に関係するデータを常に収集/集積するため、屋内外に合計200個ものセンサーが設置されている。センサーが収集するのは、天候や空気の質といった屋外/室内の「住環境」データ、住む人の移動、ドアや窓の開閉、設備操作などの「行動」データ、電気/ガス/水道/熱などの「エネルギー」データなど、幅広いものだ。

 こうしたデータは、タッチパネルディスプレイや対話型ロボットなどを通じて住む人に伝えられる。ロボットが発する音声や警告音、ディスプレイの点滅や色、映像など、伝える手段もさまざまである。

200個のセンサーが収集した屋内/屋外のデータは、住生活に役立つ情報となって、さまざまな手段で住む人に伝えられる

ダイニングのテレビで各部屋の室温や湿度を表示。脱衣所や風呂、トイレなどは、高齢者が“ヒートショック”を起こさないよう温度差を自動調整できる

玄関脇のタッチパネル。玄関を開ける前に、天候、気温、花粉やPM2.5などの状態がわかる。出かける前に「あっ、エアコン消し忘れた!」となっても、ここからオフにできる

 今回は、実際の生活シーンを想定して、「来訪者が玄関チャイムを鳴らしたとき、トイレの中から応答音声で迎える」「トイレで具合が悪くなった高齢者が、緊急呼び出しボタンで家族を呼ぶ」といったデモが披露された。さらに、子どもがトイレの照明をつけっぱなしで出て行ってしまった場合、照明を消すよう音声で促すこともできる。

トイレにもタブレット。シャワートイレ(温水洗浄便座)の操作のほか、トイレで具合が悪くなった際の緊急呼び出しもできる。なぜか「トイレットペーパーがない!助けて!」の場合の専用ボタンは別途用意されている(気が利いている)

 生活環境の快適さを維持しつつ、省エネルギー化も考えられている。今回は、屋外の風向きや天候のデータを参照しながら、自然の風を利用した室内換気をおすすめするデモ、さらには窓を自動開閉させて換気するデモなどが披露された。電動式シャッターや日よけもネットワーク化されており、屋外の天候や気温などの変化に応じて自動制御される。この家ではシーリングライト、ダウンライト、ロボット掃除機までネットワーク経由で制御されている。

省エネ、防犯、さらに“ビッグデータ活用”的な生活改善も

 日常的な生活習慣をセンサーデータとして収集、蓄積することで、“ビッグデータ活用”的なちょっとした生活改善も考えられるという。たとえばキッチンの食器棚にセンサーを設置しておき、高い場所にある棚が頻繁に開閉されているようであれば、「食器をもっと低い場所に移してはどうですか」と提案してくれる、そんな生活である。うーん、未来だな。

 当然、エネルギー使用の管理にはHEMS(Home Energy Management System)が活用される。HEMSは、前述した省エネルギーのための自動制御システムとも連携できるが、そもそも電力や水道、ガスなどの使用状況が可視化されれば、それだけで住む人が節電や節水に気を配るようになるだろう。

キッチンに置かれたタブレットで電力や水道、ガスの使用状況を確認。ちなみに、節電より“節湯”のほうがCO2削減に効果があるのだそうだ

 屋外には監視カメラも設置されている。家の周囲に4台設置された広角カメラの画像は、画像合成によって家を上空から見たようなかたちで表示される。映像だけでなく、音声を聞くこともできるため、家の外に出ることなく周辺状況を知ることが可能だ。

リビングにいながらにして、家の周囲を上空からの俯瞰画像で見ることができる。防犯目的だけではなく、庭で遊ぶ子どもやペットの見守りにも活用できそうだ

 今回、U2-Homeを紹介してくれたLIXIL 総合研究所の高田巖氏は、スマートハウスやIoTの研究では「実際のユーザーの声をよく聞くようにしている」と語った。研究所の中だけで考えられた開発内容が一人歩きしがちだが、LIXILではほかの研究所の専門家や、鎌倉市の「みらいずみ工房」実験棟で一般ユーザーにモニターしてもらっているそうだ。

ロボットに話しかけるLIXIL 総合研究所 新事業創造部 情報社会研究グループ グループリーダーの高田巖氏

 また、将来的な研究ビジョンとして、一軒の家で完結するシステムだけでなく「家と家がつながることで、何ができるか」も考えているそうだ。そんな住生活の未来にどんな可能性が生まれるのか、今から楽しみにしておこう。

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