青森県庁の杉山さんがプロの引き継ぎを披露
参加者のうちでもっともシステマチックに引き継ぎを進めているのは、青森県庁の杉山智明さんであろう。杉山さんは「介護」「農業」「雪」「地域資源活用」など、さまざまな地域課題をITで解決するためのイベントを積極的に進めている。パネルに先だってプレゼンを行なった杉山さんは、引き継ぎのプロとも言えるさまざまな金言を聴衆に披露した。
もとより、役所では業務の属人性と外の業者との癒着を防ぐため、3年で配置転換となることが多い。情報産業の振興を務める杉山さんも、過去には土地改良事業法のチェック、在留外国人の生活支援、りんごの対中輸出、新幹線の予算陳情、風力発電のメンテナンス業務、商店街振興など、ありとあらゆる仕事に手を染めてきた。「仕事を覚えたかなという頃には異動になってしまうので、あとから来るのは基本1年生。これはまずい」と感じた杉山さんは個人の意思で業務のマニュアル化を実施。業務ごとに「サルでもできるシリーズ」を作ったという。
こうしたマニュアル化によって杉山さんが理解したのは、「引き継ぎするまでが仕事」という事実。「引き継ぎをきちんとやらないと、せっかくやってきた仕事がゼロになってしまう。後任がイチイチ聞きに来ると、新しい仕事もきちんとできない」とのことで、To Doだけではなく、事業の目的や今の流れをきちんと伝えるのが重要だと指摘した。また、個人に依存した引き継ぐではなく、周りを巻き込みながらネットワークでサポート体制を作っていくのがポイントだという。
さらに杉山さんのすごいのは、後任のみではなく、3代先までプランニングしていることだ。「事業のステージの方向性を早めに作っておき、後任が次の仕込みをできるように時間が稼げる」と語る。
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